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緊張再び 朝鮮半島情勢/出石直・nhk
2023年02月27日 (月)
出石 直 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/480068.html
朝鮮半島情勢が再び緊張しています。北朝鮮は今月に入ってICBM=大陸間弾道ミサイル級のミサイルや短距離弾道ミサイルを相次いで発射、日本の上空を通過する弾道ミサイルの発射の可能性も示唆しています。3月中旬にはアメリカ軍と韓国軍による大規模な合同軍事演習も予定されており、朝鮮半島をめぐる情勢はさらに緊迫化する恐れがあります。
【解説のポイント】
▽ 最近の北朝鮮の動向をみたうえで、
▽ 強硬姿勢を続ける北朝鮮の思惑を探り、
▽ 最後に、ロシアによるウクライナ侵攻が朝鮮半島情勢に与えている影響について考えていきたいと思います。
【最近の北朝鮮の動向】
去年、37回70発あまりとこれまでにない頻度で弾道ミサイルなどの発射を繰り返した北朝鮮。
今年に入ってからは元日の未明に短距離のミサイルを発射して以降、しばらく鳴りを潜めていましたが、今月8日の軍の創設75周年に合わせて大規模な軍事パレードを実施、18日にはICBM大陸間弾道ミサイル級の「火星15型」を発射しました。最高高度はおよそ6000キロに達し、日本の排他的経済水域内に落下しています。
その2日後の20日にも2発の短距離弾道ミサイルを発射、23日にも戦略巡航ミサイル4発を日本海に向け発射したとしています。
キム総書記の妹のキム・ヨジョン(金与正)副部長は「太平洋をわれわれの射撃場として活用する頻度は、アメリカの行動いかんにかかっている」とする談話を発表し、再び日本列島を越える形で太平洋に向け弾道ミサイルを発射する可能性を示唆しています。
【北朝鮮の思惑は】
こうした最近の強硬姿勢から何が読み取れるのでしょうか。詳しく見ていきます。
軍事パレードには、現在、北朝鮮が保有しているもっとも大きなICBM級の弾道ミサイル「火星17型」が、映像で確認できるだけでも10基以上登場しました。これだけの数が軍事パレードに登場したのは初めてのことです。
これらのミサイルは片側に11輪ずつの車輪を備えた巨大な移動式発射台に載せられていました。北朝鮮は新型コロナの影響で長く国境を閉ざしており、これらの発射台もすべて北朝鮮国内で製造されたものと推測されます。
ICBM級のミサイル技術の国産化と量産化が進んでいることがうかがえます。
軍事パレードのクライマックスには、新型とみられる弾道ミサイルが初めて登場しました。北朝鮮は去年12月に大出力の固体燃料エンジンの燃焼実験に成功したと発表しており、専門家は、北朝鮮が開発を進めている固体燃料式のICBMではないかと指摘しています。固体燃料式は、発射の兆候が捉えにくく探知や迎撃が難しいとされています。過去の例から考えて数年以内に試験発射が行われる可能性が高いとみられます。
次に今月18日のミサイル発射です。
この日発射されたのは「火星17型」よりひとまわり小さい「火星15型」と呼ばれているICBM級の弾道ミサイルです。北朝鮮は、この日の朝、キム総書記が事前予告なしに出した発射命令に基づいて奇襲発射訓練を行い、核反撃能力を確認したとしています。
注目されるのは「核反撃能力」としている点です。北朝鮮が去年9月に制定した核兵器についての法令です。「国家指導部や重要施設などへの攻撃が行われたか、攻撃が差し迫ったと判断された場合には、キム総書記の指揮で核兵器を使用できる」としています。
つまりこの発射は、弾道ミサイルの性能確認のための試験発射ではなく、すでに実戦配備されていると思われる「火星15型」による核攻撃を想定した抜き打ちの軍事訓練だった可能性が高いと考えられるのです。
2日後の20日の短距離弾道ミサイルの発射も同様です。北朝鮮は「敵の飛行場を焦土化する超大型ロケット砲による戦術核攻撃の訓練だった」としています。ミサイルが飛んだ距離などから韓国軍や在韓米軍の基地への核攻撃を想定したものとみられます。
23日に発射された戦略巡航ミサイルについても「だ円や8の字の軌道で飛行し、核戦闘武力の臨戦態勢を示した」と強調しています。北朝鮮の核・ミサイルの脅威はいっそう深刻化していると受け止めるべきでしょう。
【ウクライナ侵攻の影響】
最後に、ロシアによるウクライナ侵攻が朝鮮半島情勢に与えた影響についてみていきます。
北朝鮮、韓国ともに強硬姿勢を強めています。
北朝鮮は、国連でのロシア非難決議に反対票を投じ、プーチン大統領の誕生日にはキム総書記が長文の祝電を送るなどロシアへの急接近をはかっています。去年から核・ミサイル開発を加速させ核戦力を強化しています。核兵器さえあれば他国に侵略されることはないと高を括っているのでしょう。ウクライナ情勢をめぐって国連の安全保障理事会が機能不全に陥り、弾道ミサイルの発射をしてもロシアや中国が反対して制裁どころか非難決議すら採択されなくなりました。核・ミサイル開発への歯止めが効かなくなってきているのです。
一方、韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)政権は、北朝鮮を「敵」と位置付けるなど対決姿勢を鮮明にしています。「核の傘」を提供しているアメリカとの同盟関係を強化するとともに、北朝鮮のミサイルが発射される前にその兆候を捉えて攻撃する「先制打撃」で対抗するとしています。ウクライナ情勢を受けて韓国でも国防意識が高まっていて、ユン大統領は条件付きながらも戦術核兵器の再配備や独自の核開発の可能性にまで言及し波紋を呼びました。核保有を支持する世論も高まっています。
「火星15型」が発射された翌日には、アメリカ空軍との共同訓練を実施、アメリカ軍のB1(いち)戦略爆撃機と両軍の戦闘機が編隊を組んで朝鮮半島の上空を飛行し、圧倒的な軍事力をみせつけました。
しかしこうした強硬姿勢は、朝鮮半島情勢をむしろ悪い方向に導いているように思えてなりません。3月中旬にはアメリカ軍と韓国軍による大規模な合同軍事演習が予定されていて、北朝鮮はこれに強く反発するものと予想されますが、北朝鮮の挑発に韓国が報復するだけでは事態の鎮静化にはつながりません。むしろ事態がエスカレートして偶発的な軍事衝突につながることが懸念されます。
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シンガポールで行われた史上初めての米朝首脳会談で、キム総書記が朝鮮半島の完全な非核化に向け努力することを約束してから、この6月で5年になります。対話を拒み続ける北朝鮮の態度は変わる気配はなく、核の脅威が日に日に高まっていることは間違いありません。しかし、ここで諦めてしまっては北朝鮮の思う壺です。核・ミサイル開発は北朝鮮のためにならない。ひとたび核兵器を使用してしまえば体制の崩壊を招くのだということを北朝鮮にわからせることが何より必要でしょう。北朝鮮に対し核の放棄を粘り強く求めていく努力も続けていくべきではないでしょうか。
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