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二つの演説、二つの世界観
2022年12月21日
クリストファー・ブラック
New Eastern Outlook
1946年3月5日ウィンストン・チャーチルはミズーリ州フルトンで有名な平和の源泉の演説を行い「ヨーロッパ中に鉄のカーテンが降りた」と主張したことで有名だ。明確に事前承認され、おそらく部分的にハリー・トルーマン米大統領のスタッフが書いた演説で、演説の本質的狙いは世界に対する英米覇権を宣言することだった。
2022年10月27日プーチン大統領はバルダイで世界史的演説を行い、アメリカ覇権、それとともに英語圏諸国とヨーロッパ同盟諸国の終焉を語った。プーチン大統領が国家間に引かれた鉄のカーテンという概念を文明の調和という概念に置き換える世界観を表現するのに使用した言葉なのでこれは「文明の調和」演説と呼ぶべきかもしれない。
二つの演説は世界史のある時代の始まりと終わり、最初の時代を克服する別の時代の始まりの表現で、異なる二つの世界の二つの世界観表現だ。
だがチャーチルとトルーマンが1946年に確立すると宣言したもの、つまり英米の世界秩序を検討して見よう。
招待してくれたことをトルーマンに感謝する前置き発言の後、チャーチルが演説で最初に述べたのはこうだ。
「アメリカ合州国は現時点で世界権力の頂点にいます。それはアメリカの民主主義にとって厳粛な瞬間です。権力の優位性には将来に対する荘厳な責任も伴うためです。...今機会はここにあり、我々両国にとって明確で輝いています。」
彼は演説を続け、ドイツでのナチス打倒でロシアへの恩義を認め、長年の戦争後の平和と安全の探求について語り、それを達成する手段としての国連設立について語った。だがその直後彼は国連外に創設し、世界の警察官として機能し、その主力がアメリカとイギリスに提供され管理される軍隊の必要性を述べた。
この考えは間もなく三年後の1949年4月4日に創設された北大西洋条約機構で実現し、その後すぐ国連作戦を装って1950年に北朝鮮と中国を攻撃した時その攻撃的性格と目的が明らかになった。
世界が主に社会主義と西側の首都に対する脅威、特にソビエト社会主義の脅威を意味する「専制政治」の脅威に直面していると宣言することでチャーチルはそのような武力の必要性を正当化した。彼は次のように主張した。
「大英帝国全体で個々の国民が享受している自由は、そのうちいくつかは非常に強力な相当な数の国には存在しない。」
彼が語った自由はイギリス植民地の人々には知られておらず、実際は大多数が戦争により貧困に陥り、彼らが常にそうだったように銀行家や実業家の旧来派閥に支配されたイギリス政府政策についてほとんど発言権を持たないイギリス自身の国民にもほとんど知られておらず、一方ソビエト連邦では資本主義搾取の厳しい現実や、それから生じる食うか食われるかからの自由を人々に与える進歩が見られた。
彼は、彼らのほとんどが帝国から逃れるための闘争を早めていた帝国の人々の団結の幻想について語った。彼はイギリス国民は戦争の苦難を克服すると主張したが、戦争によるイギリスの破産が、1947年のインドの解放から始まり、その後すぐイギリスのくびきを捨てられた国々や人々の急速な連続となっていることを見落としていた。
彼は今も米英が叫んでいる「特別な関係」という言葉、歴史的、文化的、経済的つながりによる関係、そして両者が共に世界をどのように取り締まれるかについて語り、彼ら版の資本主義民主主義を意味する「民主主義」を広めることを大胆に自慢し、国連外に付属物として軍隊を創設するのは国連憲章に違反しないと偽って主張した。
国連は私たちの時代の平和を保証する「平和の神殿」になるはずだと彼は述べたが、指摘された通り、数ヶ月後アメリカとイギリスは国連と安全保障理事会での彼らの立場を悪用し、韓国と中国に対する彼らの戦争は国連の懲戒処分で、完全な侵略に対する平和のための作戦だと主張し、それから彼はアメリカとイギリスとカナダだけが核兵器製造法の知識を持っているべきだと警告した。
しかし彼はそれから、ロンドンとワシントン両方が現在は否定している重要なこと、ロシアには安全保障が必要だと述べたのだ。彼は次のように述べた。
「ドイツによる侵略のあらゆる可能性を排除することでロシアは西部国境の安全が保障される必要があると我々は理解している。」
しかしもちろんNATO侵略と冷戦の脅威をそのままに、その段落の直後、有名な行でソ連は西側の人々への脅威だと主張すべく彼の演説を調整した、
「バルト海のシュテッティンからアドリア海のトリエステまで大陸を横断して鉄のカーテンが降りた。」
東欧の人々がファシズムから解放され西欧や北米の人々の大部分に対して拒否されていた社会主義の利益を享受するのを許されたため、もちろんこの「鉄のカーテン」はチャーチルの想像力にだけ存在していた。「鉄のカーテン」という句で表現される人為的分裂は実際は冷戦として知られるようになった東ヨーロッパの新しい社会主義共和国諸国やソ連に課す経済的、軍事的包囲の舞台を設定するプロパガンダ文句だった。
彼は「世界の安全にはヨーロッパでの新たな団結が必要だ」とも述べた。
しかし彼は英米支配下での統一ヨーロッパを意味する統一ヨーロッパ構想にソ連やロシアを含めず、次のように偽って主張した。
「私はソビエトロシアが戦争を望んでいるとは思わないが...彼らは戦争の成果と彼らの権力と教義の無限の拡大を望んでいる。」
それにより戦争と戦争の脅威を通してのみ支配を維持できる英米同盟の野心をロシアのせいにした。
彼は次のように述べて演説を終えた。
「戦争中にロシアの友人や同盟国について見たことからして強さほど彼らが賞賛するものはなく、弱さ特に軍事的弱さほど尊敬されないものは何もないと確信している。
そして「それゆえ勢力均衡という古い教義は不健全だ」「世界で権力の優位を持たなければならないのは英米枢軸だ」。
「英語圏イギリス連邦の人口が、空、海、世界中、科学、産業、道徳的な力でそのような協力が意味する全てを備えたアメリカの人口に追加されれば、野心や冒険を誘惑するような震える不安定な勢力均衡はない。それどころか圧倒的な安全保障がある。」
もちろん、彼は英米同盟の圧倒的な権力を意味していた。
76年後の2022年10月27日、プーチン大統領はヴァルダイで、チャーチルとトルーマンが創造しようと意図した英米同盟の世界権力の終焉を語る演説をし根本的に異なる世界観の到来を告げた。
プーチン大統領は全分読むべき長い演説の中で多くのことを述べたが本質は次の声明に含まれている。
「ソビエト連邦の崩壊は地政学的勢力の均衡を混乱させた。欧米は勝者と感じ、その意志、文化、権益だけが存在する権利を持つ単極世界構造を宣言した。
今や世界情勢における無限の欧米支配というこの歴史的時代は終わりに近づいている。単極世界は過去に追いやられている。私たちは歴史的岐路に立っている。私たちは第二次世界大戦終結以来おそらく最も危険で予測不可能であると同時に最も重要な10年を迎えている。欧米は単独では人類を支配できず、大多数の国はもはやこれを我慢したくない。これが新時代の主な矛盾だ。古典を引用すると、これはある程度革命的状況だ。エリートはそうできず、人々はもはやそのように生きたくないのだ。」
そして
「未来の世界構造が私たちの目の前で形成されつつある。この世界構造では、我々は誰にも単一の真実を押し付けることなく、全員の意見を聞き、全ての意見、全ての国、社会、文化、体制、考え方、宗教的概の全てを考慮しなければならない。この基盤上でのみ国家と地球の運命に対する我々の責任を理解し、我々は人類文明の調和を創造するだろう。」
彼は続けて本質的に英米秩序である有名な「ルールに基づく秩序」を攻撃した。
「私たちは権力者(連中は権力について話しているが私は今グローバルパワーについて話している)がルールに全く従わずに生き、何をしても罪に問われないという一つのルールを押しつける試みを目にしている。これらは人々が言う通り、私たちが絶えず耳にするルールで、連中は繰り返し話し続けている。」
そして欧米の意図を説明する。
「グローバルパワーには、まさにいわゆる欧米の利害が掛かっている。しかし、このゲームは確実に危険で、血まみれで、汚いと言えるだろう。それは国や人々の主権、彼らのアイデンティティや独自性を否定し、他の国々の利益を踏みにじる。いずれにせよ、否定的な言葉が使われていなくとも彼らは実生活でそうしている。これらルールを作成する連中を除いて、誰も彼らのアイデンティティを維持する権利はない。他の全員これらルールを遵守しなければならない。」
更に世界の政治、経済問題は、人類に対する気候変動や生態学的危機の根本的脅威からの目をそらすものだと彼は指摘する。
「現在開発は環境問題に影を落としている。奇妙に思われるかもしれないが、これが私が今日最初に話したいことだ。気候変動はもはや第一の議題ではない。しかし根本的課題は消えたわけではなく、今も私たちと共にあり増大している。生物多様性の喪失は、環境バランスを乱すことによる最も危険な結果の一つだ。」
彼はこの話題を続け、世界にその文化、支配、搾取を採用し従うよう強制し、世界危機や今日のウクライナでの出来事につながる欧米の試みを攻撃する。彼はこう述べた。
「文明化された」欧米はどのような立場を採用しているだろうか? 民主主義者なら、何十億もの人々が表明する自由への自然な欲求を歓迎することになっているが、そうではない。欧米はそれをリベラルなルールに基づく秩序を弱体化させると言う。経済戦争や貿易戦争、経済制裁、ボイコットやカラー革命に訴え、あらゆる類のクーデターを準備し実行している。
「そのうちの一つは2014年にウクライナで悲劇的結果をもたらした。彼らはそれを支持し、このクーデターに費やした金額さえ特定した。彼らは好きなように振る舞う厚かましさがあり、彼らが何をするにも何のためらいも感じない。彼らはイラン人将軍ソレイマニを殺害した。ソレイマニについて好きなように考えられるが彼は外国の役人だった。彼らは第三国で彼を殺し実行したこと認めた。何ということだろう? 私たちは一体どのような世界に暮らしているのだろう?
慣例通り、ワシントンは現在の国際秩序をリベラルなアメリカ式と呼び続けているが、実際この悪名高い"秩序"は日々混沌を増大させており、欧米諸国や、独立して行動しようとする欧米諸国に対してさえ益々不寛容になっている。全てがつぼみのうちに摘み取られ、彼らは完全に服従して頭を下げる同盟国に制裁を課すのも躊躇しない。」
その後こう述べた。
「誇張なしに、これは体系的なものでさえないが、ネオリベラリズムのアメリカ風国際秩序モデル教義の危機だ。彼らは進歩や前向きな発展のための考えを持っていない。彼らは彼らの支配を永続させる以外、世界に提供するものは何もない。」
更にこう述べた。
「開発は文明や精神的・道徳的価値観との対話に依拠すべき」で欧米の自由民主主義の衰退とその攻撃的で搾取的政策がアメリカの威信と権威の崩壊につながっており、ロシアに対する侵略がこの崩壊を加速させ、ロシアは自らを防衛しており、アメリカ経済力の破壊はアメリカ自身の攻撃的で破壊的な性格と政策によるもので、国際通貨として米ドルを拒否する世界中の国々が増大傾向にあることは、大英帝国に起きたのと同じ運命をアメリカにもたらし、世界大国としての崩壊、今後何年にもわたり反響をもたらす出来事だが、このアメリカの覇権喪失は、他の国々にとっては彼ら自身の条件で、彼ら自身の方法で選んだ通りに生きる能力を意味する。
これに関連して世界の多様性をよりよく反映するため国連安全保障理事会改革が考慮されなければならないと彼は述べた。「結局、明日の世界では今一般的に信じられているより遙かに多くのことがアジアやアフリカや中南米に依存しており、これらの影響力の増加は間違いなく前向きな進展だ。
だから私たちはそれがある、二つの演説、二つの世界観、一つの時代の終わり、新しい時代の始まり。
プーチン大統領のこの言葉で締めくろう。
「人類の団結は『わたしがするようにしなさい』や『私たちのようになりなさい』など命令を出すことでは生まれない。団結は全ての人の意見を考慮し、全ての社会や全ての国のアイデンティティへの慎重な対応で作られる。これは多極世界における長期的協力の根底にある原則だ。」
そうかもしれない。
クリストファー・ブラックはトロントを本拠とする国際刑事専門弁護士。彼は多くの注目を集める戦争犯罪訴訟で知られており、最近小説「Beneath the Clouds」を出版した。彼は、国際法、政治や世界の出来事について評論を書いている。オンライン誌「New Eastern Outlook」独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/12/21/two-speeches-two-worldviews/
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