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ドーハで何が?巨象・中国の台頭 LNG 奪い合いの実態/nhk
2022年11月9日 17時51分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221109/k10013885401000.html
政府がこの冬、家庭向けの節電メニューとして紹介した一部です。冬の電力需給が厳しい状況にあるとして、政府はことし12月1日から国民に対して7年ぶりとなる無理のない範囲での節電要請を行います。その電力をつくるうえで、欠かせない存在となっているのがLNG=液化天然ガスです。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻などさまざまな要因が重なり、今、世界各地でしれつな争奪戦になっています。その現場を記者たちが追いました。(ドバイ支局記者 山尾和宏/中国総局記者 伊賀亮人/アジア総局記者 影圭太/経済部記者 五十嵐圭祐)
ドーハの悲劇?長年の安定調達先が…
日本のLNG調達の異変は中東のカタールでまず起きていました。
カタールの首都ドーハ。
空港から整備されたばかりの幹線道路を進むと、高層のオフィスビル群が姿を現します。ユニークな形の高級ホテルやマンション群などの建設も進められ、エネルギーに沸き立つ都市であることを肌で感じます。
この近代都市から砂漠の1本道を車で1時間ほど走ると、果てしなく続く厳重なフェンスに囲われた工業地帯が出現します。
遠くに見える天然ガスの施設
警備が厳重で、近づくことは許されません。沖合にある、世界最大級の天然ガスの埋蔵量を誇るノースフィールドガス田から産出された天然ガスをここでLNGに加工し、世界中に輸出しています。
カタールは長年、日本にとって主要なLNGの調達先で、多い年にはLNG輸入量の2割近くを占めていました。
しかし今、カタールから日本へのLNGの輸入量が大幅に落ち込んでいるのです。
大量のLNGを長年購入してきた東京電力と中部電力が出資する火力発電会社「JERA」。2021年12月、大型の売買契約を更新しませんでした。
25年間という長期の契約しか認められず、脱炭素の流れで将来的な需要を見通せなかったことや、LNGを自由に転売できない「仕向地条項」という厳しい条件がつけられていたことが要因とみられています。
“カタール詣で”で争奪戦に
ところが、その2か月後、ロシアによるウクライナ侵攻で世界のエネルギー情勢は一変しました。
ロシアは世界第2位の天然ガスの生産国ですが、ウクライナ侵攻後、ロシアがパイプラインによるヨーロッパへの天然ガスの供給を絞り込み、ヨーロッパもロシア依存からの脱却を図る中で、天然ガスの需給がひっ迫しているのです。
LNGの安定調達の必要性が高まったことで、日本の資源エネルギー庁はことし6月、担当者をカタールに派遣し、改めて長期契約を結べないか話し合いを始めています。
ただ、カタールがこれから輸出できる量には限界があるほか、ドイツが閣僚を派遣するなど各国のいわば“カタール詣で”が始まっていて争奪戦となりつつあるのです。
日本が調達していたLNGの行く先は
これまで日本が調達していたカタールのLNGは、どこに行っているのでしょうか。
カタールは輸出の詳細な情報を一切明らかにしていません。
そこで、シンガポールに拠点を置く専門の調査会社「ボルテクサ」を訪ねました。
この会社はタンカーに搭載されたAIS・船舶自動識別装置の信号を集めてそれに独自の情報を加えてLNGの流通動向を分析しています。
その結果、カタールからの最大の輸出先は中国であることが分かったのです。
中国向けは、ことし1月から9月までの期間で去年の同じ時期に比べて1.6倍に増加していました。
これに対して、日本への輸出は7割減少し、中国にシェアを奪われた形です。
VORTEXA フェリックス・ブース LNG部門責任者
フェリックス・ブース LNG部門責任者
「中国とカタールの間では、ことしはじめに2つの大きな長期契約が始まり輸出量が大幅に増加した。カタールは、現時点では、これ以上LNGの生産量を増やすことは難しいが、すでにヨーロッパの一部の国も、カタールからの輸入量を増やしていて、日本は短期的には厳しい状況におかれる」
中国がLNG“爆買い”か
中国はここ数年、カタール以外にもさまざまな国との間で長期契約を積極的に進めています。
2021年、中国企業が結んだLNGの長期契約は20件余りに及び、その相手国は友好関係にあるロシアのほか、覇権争いを続けるアメリカも含まれています。
中国はなぜ、LNGの輸入を増やしているのか。その答えは“脱炭素”です。
習近平国家主席は2030年までに二酸化炭素の排出量を減少に転じさせて、2060年までにカーボンニュートラル(排出量実質ゼロ)を目指すことを掲げています。
トップの号令の下、いまだにエネルギーの消費量全体の6割近くを占める石炭依存からの脱却。
中国にはロシアなどからのパイプラインからの供給という手段もありますが、調達先を多角化するため、LNGの積極的な活用が進められているのです。
発電所では石炭から天然ガスへの転換が進められています。
まだ天然ガス火力発電の割合はおよそ5%ですが、発電用などでの天然ガスの消費量は5年間で1.6倍に増加しLNG輸入の大幅な増加につなっています。
本格的な冬を控えた北京郊外の農村部を取材すると、住宅の屋根に真新しい室外機を設置する工事が急ピッチで行われていました。
この家はこれまで冬の暖房に石炭を使っていたということですが、電気の暖房機に切り替えるというのです。
家の住民に話を聞くと…
「政府の政策で石炭を買えるところがないから電気に変えるしかない。設置には自費で一部負担も必要だから不合理だと思うけど、政府に何を言ってもしかたがないから」
こうした脱石炭の動きがLNGの使用増加にもつながり、2021年、LNGの輸入量で中国は日本を抜いて世界1位に躍り出ました。
ことしの輸入量は「ゼロコロナ」政策と景気の低迷などで去年と比べて減少が続いていますが、経済が再び回復軌道にのればLNGの輸入量は大きく増加することも予想されています。
争奪戦はアメリカ大陸でも
LNGをめぐる異変はアメリカ大陸でも起きていました。
アメリカは、シェールガスの技術開発にともなって天然ガスの生産量を伸ばし、現在はロシアを抜いて世界最大の天然ガスの産出国になりました。
ルイジアナ州にあるLNG基地
LNGの基地も各地に設置され、日本も9.5%(2021年 出典:財務省貿易統計)を輸入しています。全体の割合でみればまだ少ないものの、ここ数年輸入量を伸ばしています。
しかし、ことしは大きな変化が見られています。アメリカからヨーロッパに多くのLNGが輸出されているのです。
ノルウェーの調査会社ライスタッド・エナジーの分析によると、1月から9月までのアメリカのLNGの輸出先は、ヨーロッパで2.5倍に急増。
これまでロシアからのパイプラインによる天然ガスの輸入に頼ってきたヨーロッパの国が、寒さの厳しい冬を前にアメリカからLNGによる調達に切り替えているのです。
アメリカからのLNG船が今、大挙してヨーロッパに向かっています。
そこで疑問がわきます。ロシアからの天然ガスパイプラインに大きく依存してきたヨーロッパ各国。LNGをどうやって受けているのでしょうか。
通常、LNGの受け入れ基地の建設には計画段階を含めると5年から7年かかり、大型の設備だと1000億円程度の巨額の投資が必要だと言われています。
その解決策の1つがオランダ北部の港にありました。
赤い特殊な船舶はFSRU=浮体式LNG貯蔵再ガス化設備というもので、タンカーで運ばれてきたLNGを気体に戻す設備です。
陸上基地を建設するのに比べて短期間で設置でき、コストが低いのが特徴です。少しでも早くLNGの受け入れを始めようと導入が始まっています。
ヨーロッパで進む「脱ロシア化」が、世界のLNGの流通に大きな影響を及ぼし始めているのです。
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