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2022年8月8日 12時00分
ttps://www.tokyo-np.co.jp/article/194440
欧州から北米に渡った白人が建国した米国には、めざましい発展の歴史の陰に、差別と暴力に満ちた負の遺産が潜んでいる。
今も「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大切だ)」運動となって噴き出す深刻な差別問題は、むろん黒人奴隷制度の傷痕だ。アフリカから「輸入」され、タバコや綿花農場で酷使された黒人たちの苦しみ抜きには、今日の農業大国の姿はなかっただろう。
◆黒人奴隷、先住民駆逐…白人化の強制
同様に、大西洋から太平洋にまたがる大陸国家の足元には、この地ではるかに長く暮らしていた先住民の悲劇が横たわっている。白人たちは開拓の過程で、先住民を駆逐し、土地を奪い、虐殺した。白人社会に当時広がった「よいインディアン(先住民)は、死んだインディアンだけだ」という言葉には、黒人奴隷と同じく、先住民にも一切の人権を認めない姿勢が表れている。
こうした考えは、生き残った先住民に対しても白人社会への同化を強制するという施策につながった。その一つが、19世紀前半から150年余り、政府やキリスト教会などが運営した各地の先住民寄宿学校だ。
「あなたが日本語をしゃべっているだけで、それは間違いだと言われたらどうしますか」
この問題の取材中、先住民トゥラリップ族のデボラ・パーカーさん(51)にかけられた言葉が印象に残っている。子どもたちが親元から強制的に引き離され、英語やキリスト教を強要された寄宿学校では、部族の言葉を口にしただけで、暴力や食事を抜くといった虐待が横行した。「寄宿学校は、先住民を文化的に抹殺する場だった」
同化目的の寄宿学校は公民権運動が高まった1960年代後半以降、姿を消した。それでも、こうした歴史の暗部を知る意義は、自由や人権への攻撃が強まる現在の米国で、ますます強まっていると感じる。
◆アジア系や性的少数者への偏見にも通じるか
黒人差別に加え、新型コロナウイルス禍では、アジア系への暴力が急増した。南部諸州では性的少数者(LGBTQ)に関する教育を制限する立法の動きが相次いでいる。連邦最高裁は今年6月、憲法上の人工妊娠中絶の権利を否定した。いずれも、根深い偏見や一面的な正義が、本来の自分のまま生きる自由を脅かすという点で、寄宿学校の悲劇と無縁ではないだろう。
国民融和を唱えるバイデン政権は、先住民出身のハーランド内務長官のもとで、遅まきながら寄宿学校の実態調査を進めている。固有の文化を奪い取ろうとした究極の人権侵害を国家としてどう見つめ、和解と償いの道を築いていくのか。その道の先は先住民だけでなく、今も差別や偏見に苦しむ人々の未来にもつながっている。(ニューヨーク支局・杉藤貴浩)
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