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「ワクチン接種した人はコロナ感染した方がよいとまではいえないが…」最新論文が解き明かす日本も“ノーマスク・ワクチン年1”で十分な「納得の理由」
https://bunshun.jp/articles/-/57767
2022/09/28 清水 典之 文春オンライン
9月19日、国を挙げて行われたエリザベス女王の国葬。天皇皇后両陛下をはじめ、世界中の要人がイギリスに集まり女王の死を悼んだが、そこに集うVIPや沿道のロンドンっ子たちの様子を見て驚いたのは、もしかすると日本人だけだったかもしれない。
エリザベス女王を悼むイギリス国民。ほとんどがノーマスクだった ©共同通信社
欧米諸国は対コロナの厳戒態勢を解除
ここ数年当たり前になった「マスク」が全く見当たらない。似たような光景はアメリカにもある。大谷翔平のスーパープレーに沸くスタジアムを見渡せば、観客の口元には白いマスクなどほとんど見られない。
「欧米では社会を平常化するために、重症化しないのなら感染の広がりは許容しようという考え方になりつつあるのです」
免疫学が専門の慶応大学医学部教授の吉村昭彦氏はこう解説する。事実、イベント開催や人々の移動の自由化、飲食店の営業規制緩和や、マスク着用の義務撤廃、ワクチン接種証明の提示すら不要にするなど、欧米諸国は対コロナの厳戒態勢を解き、コロナ以前の生活を取り戻しつつあるように見える。
「それは科学的な情報に基づいて政策決定を下しているからでしょう。2022年1月に科学誌ネイチャーに掲載された記事で、現行のワクチンはオミクロン株に対して感染予防の効果は下がるものの、重症化を防ぐ効果は十分維持されるということが報告されています。政策立案者はこうした最新の知見をもとに、現実のコロナ対策を決めていると思います」(吉村教授)
オミクロン株による感染者の増加
しかし我が国ではいまだマスクの着用が奨励され、3度、4度と躍起になってワクチン接種を勧められる。よその国がかつての日常に回帰しようとするなか、我々の平常はまだまだ戻ってくる気配がない。
「日本におけるコロナ対策で最も重要視されているのは感染予防効果、つまりPCR陽性者を出さないこと。ここに認識のギャップがあるのでしょう。ワクチンによる抗体(液性免疫)は、接種してから半年も経つとほぼゼロにまで下がります。だからメディアや専門家の一部は『感染予防効果を持続させるために、何度もワクチンの追加接種が必要』と主張しますが、爆発的に感染の増えているオミクロン株は、ワクチンによって作られた抗体を回避するので、感染予防効果は著しく下がっています」(吉村教授)
この人のマスク姿は当たり前 ⒸJMPA
確かに岸田文雄首相は4回目のワクチン接種を行ってから10日も経たないうちにコロナに罹患したのだった。
「若い人がブースター接種を受けるのは、税金の無駄遣い」
「ワクチンの目的は、感染防止だけではありません。感染後の重症化を防ぐという大事な効果もある。メディアでは抗体やPCR陽性者数の話ばかり出てきますが、重症化を防ぐためには、抗体だけでなく細胞性免疫が重要です。ウイルスに感染した細胞を殺してウイルスの増殖を止める働きをする免疫細胞にT細胞というものがあります。このT細胞はワクチン接種によって一度コロナウイルスのタンパク質を認識して記憶すれば、次からはオミクロン株のように変異したウイルスにも反応し、しかもその免疫記憶は長期にわたって続くことがわかってきました」(吉村教授)
感染すれども重症化せず、はワクチン接種の大きな目的のひとつなのだ。ワクチン製造大手のアストラゼネカ社のCEOパスカル・ソリオ氏は、英紙のインタビューにおいて「ワクチンを接種した健康な人の重症化に対する免疫は、確実に1年以上続き、場合によっては3〜4年は持続する可能性がある。(高齢者ではない)若い人がブースター接種を受けるのは、税金の無駄遣いだ」と踏み込んだ発言をした。
©iStock.com
実際、アメリカではワクチンに対する考え方が変わりつつある。ロイター(現地時間2022年9月6日付)の報道によると、ホワイトハウスで新型コロナ対策に従事する専門家は、「大多数の国民にとって、年1回の新型コロナワクチン接種が年間を通じて重症化をかなりの程度防いでくれる段階を迎えつつある。これは重要な節目だ」と語っている。
若い人や子供は過度に感染を恐れる必要はない
「ワクチンは重症化を防ぐためのものと考えるべきです。2022年7月14日にネイチャーに掲載された論文で、ワクチンを接種したのちにオミクロン株に感染すると、オミクロン株に対する抗体だけでなく、デルタ株やベータ株など、幅広い変異株に対する抗体ができることが報告されています。未接種の状態で感染した場合は、ほぼオミクロン株に対する抗体しかできませんが、ワクチンを接種してから感染すると重症化しにくいうえに、“ユニバーサル抗体”と呼ばれるものができて、今後流行る未知の変異株に対しても、防御できる可能性が高まります」(吉村教授)
©iStock.com
吉村教授は重ねて言う。
「だから、ワクチンを接種した人は、オミクロン株にどんどん感染した方がいい――とまでは言いませんが、科学的な知見としてワクチンを接種した上で感染すると優れた免疫がつくことは事実です。死亡リスクの高い高齢者は別ですが、若い人や子供は過度に恐れる必要はないと思います。欧米諸国はそのように判断して、厳戒態勢を緩めているのではないでしょうか」
9月27日の安倍元首相の国葬では、日本政府は世界中のVIPにマスク着用を求めた。献花の列にならぶ参列者たちの口元もしっかりと白く覆われていた。諸外国との認識の差は大きい。
その他の写真はこちらよりご覧ください。
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