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日本で新設される感染症の「司令塔」はバイオテロに対応できるのか どうする、どうなる「日本の医」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/307372
2022/06/28 日刊ゲンダイ
サル痘ウイルスの顕微鏡写真(CDC提供・共同)
政府が首相直轄の「内閣府危機管理庁」を新設する。パンデミック時の司令塔の役割を期待するらしい。好意的に報じているマスコミもあるが、私は問題ありと考えている。それはバイオテロへの配慮が皆無だからだ。
現在、世界ではサル痘に関する議論が盛り上がっている。サル痘ウイルスは、感染しても自然治癒するし、感染者・感染動物との血液や体液などとの接触、あるいは飛沫で感染するため、感染拡大のスピードは遅い。ヒトでは大きな問題を起こすとは考えにくい。
それでも、世界が注目するのは、天然痘ウイルスによるバイオテロを念頭においているからだ。2017年12月、米疾病対策センター(CDC)の研究チームが「ウイルス」誌に発表した論文の中で、「この研究は天然痘ウイルスによるバイオテロに対処するために行ったもので、(実験に利用できない)天然痘ウイルスの代わりにサル痘ウイルスを利用した」と記している。
天然痘ウイルスが危険なのは、天然痘が根絶され、世界中で予防接種が中止されたからだ。我が国でも、45歳以下は接種しておらず、免疫がない。
今回のサル痘の流行は、世界のバイオテロ体制が脆弱であることを示した。もし、天然痘テロが起これば、どの程度の被害となるかわからない。
これは杞憂ではない。米国のCDCとロシアの国立ウイルス学・生物工学研究センターは、天然痘ウイルスを保管しているし、一部のテロ国家が隠し持っている可能性も指摘されているからだ。
ロシアのウクライナ侵攻以降、バイオテロの懸念が高まった。世界の医学界では、バイオテロに関する議論が盛んだ。例えば、2月6日、米ハーバード大学の研究チームは、「米救急医学雑誌」オンライン版に「バイオテロ:テロに用いられた生物製剤の分析」という論文を発表し、1970〜2019年に起こった33件のバイオテロを総括している。この中には、1993年にオウム真理教が起こした亀戸異臭事件も含まれる。彼らが強調するのは、バイオテロの被害が大きいことだ。1件あたりの死者・負傷者数は24.8件で、爆弾テロの平均(4.0件)の6倍以上である。準備しておかねばならない。
では、誰がその任に当たるのか。米国で主導するのは、CDC、米国立衛生研究所(NIH)、米陸軍感染症医学研究所(USAMRIID)だ。米国立医学図書館データベースで、「バイオテロ」「サル痘」という単語をタイトルに含む論文を検索すると18報がヒットするが、内訳はCDCとNIHが4報ずつ、USAMRIIDが3報だ。さらに退役軍人病院からの報告もある。政府の医学研究機関と軍事研究機関が協力していることがわかる。
せっかく、政府主導で感染症の司令塔をつくるなら、バイオテロ対策を念頭に組織を構築すべきである。
上昌広 医療ガバナンス研究所 理事長
1968年兵庫県生まれ。内科医。東京大学医学部卒。虎の門病院や国立がん研究センター中央病院で臨床研究に従事。2005年から16年まで東京大学医科学研究所で、先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究。16年から現職。
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