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お尻からクスリを入れるのにはちゃんとした理由がある 高齢者の正しいクスリとの付き合い方
https://hc.nikkan-gendai.com/articles/278797
2023年03月04日 日刊ゲンダイ
座薬は高齢者に使うケースも多い
「座薬」というとみなさんはどのようなイメージをお持ちでしょうか? 「まだうまく飲むことができない小さな子供に使うクスリ」といった感じの方もいらっしゃるかと思います。しかし、特に高齢者に対して使うケースも多いクスリ、それが座薬なのです。
そうはいっても、やはりお尻からクスリを入れるのには抵抗がある……そんな方は、ぜひご一読ください。座薬に対するイメージがほんの少し変わるかもしれません。
座薬として用いられるクスリには、主に解熱鎮痛、抗けいれん、吐き気止め、そして意外に思われるかもしれませんが下剤もあります。ただ、「座薬といえば熱冷まし(解熱鎮痛)」とイメージする方が多いでしょう。肺炎などの比較的重い感染症による発熱時には、内服薬で対処することもありますが、特に入院中は仮に内服できるとしても座薬を使う場合があります。そして、それにはちゃんと理由があります。
座薬は内服薬に比べて効果が出るのが早く、効果が安定して得られるという特徴があります。座薬の成分は、大腸の中で最も肛門側の直腸という部分から吸収されます。前回の注射薬の回で紹介しましたが、一般的な内服薬は消化管(主に小腸)から吸収されるとまず門脈を通って肝臓に到達し、その後、全身の血液に分布します。このとき、クスリは肝臓である程度代謝(分解)されてしまい、この現象を「初回通過効果」といいます。
ただし、クスリが直腸から吸収された場合、肝臓を通らずに全身の血液に分布させることができます。つまり、座薬は初回通過効果を受けないということになるのです。クスリの成分が直接全身の血液に吸収されるので、座薬の効果発現時間は内服薬に比べて早くなります。そのため、症状を速やかに改善したい場合には、同じ成分で比べると内服薬よりも座薬が優れています。
また、クスリが肝臓で代謝(分解)される程度には個人差がありますが、少なくとも座薬は初回通過を受けないため、得られる効果にも個人差が少ない、つまり効果が安定して得られるのです。
一部を除き、座薬の多くは保管するときに冷蔵庫に入れる必要があります。座薬の成分は「基剤」というものに含まれていて、その基剤が体温や腸液の影響で溶けることで成分も溶け出し、吸収され、効果を発揮します。そのため、保管している場所が高温になると、基剤が溶けかけて軟らかくなってしまい、いざ使いたい時に使えないという状況に陥ってしまう可能性があります。冬でも暖房で室温が高くなることもあるので、注意しましょう。ちなみに、室温保存の座薬を冷蔵庫で保管しても問題ないのでご安心ください。
そうはいっても、お尻からクスリを入れるのにはやはり抵抗ありますよね。
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