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やりたい放題の竹中パソナ 枚方・吹田・西宮の3市で10億8000万円の過大請求 ワクチン接種コールセンターの委託業務めぐり
https://www.chosyu-journal.jp/shakai/25879
2023年2月23日 長周新聞
大阪府枚方市、同吹田市、兵庫県西宮市の3市から新型コロナウイルスのワクチン接種コールセンター業務を受託していた人材派遣大手「パソナ」(東京都、中尾慎太郎社長)が業務を下請業者に再委託し、その業者が契約内容より大幅に少ない人数のオペレーターしか配置していないにもかかわらず虚偽報告をしていたことが明らかになった。パソナの自主調査による過大請求額は3市合計で約10億8000万円にのぼる。人命にかかわる公的業務を、ピンハネ再委託を生業とする民間業者に委ねる危うさを浮き彫りにしており、丸投げした行政側の責任も問われている。
これはまさに「税金泥棒」 契約人数を配置せず
竹中平蔵・元パソナ会長
「ワクチン接種予約のコールセンターに何度電話しても繋がらない」――これは昨年、全国の都道府県で起きた現象だが、今回の問題はその要因の一つを映し出した。
大阪府枚方市は一昨年3月、このコールセンター業務を3カ年で約10億円の契約額でパソナに委託。パソナは13・5%の管理費をピンハネして、業務をテレマーケティングなどをおこなう「エテル」(本社・大阪市)に再委託していた。
枚方市の説明によると、昨年11月1日、入電応答率(市民が電話を掛けて繋がった率)が午後になっても100%にならないこと、パソナからは電話対応完了数「3500件」と報告されているのに予約システムの受付完了数が750件であったことから、市がパソナに確認。後日、パソナが現場を点検すると、100人配置されるはずのオペレーターが33人しかいなかったという。日々のオペレーターの人数は、「迅速かつ正確に対応できる体制を確保」するとした契約の仕様書にもとづいて市とパソナが協議して決めており、契約額も「出来高払い」ではなく、それを包括した金額が設定されている。市民からの苦情や市の確認がなければ不正は発覚しなかったわけで、元請であるパソナの責任は免れ得ない。
市にとっても、膨大な個人情報を扱う業務を、履行する意志もなく、その監督・管理もできない企業に随意契約で委託した責任が問われる。
これを皮切りにして同様の不正事案が、同じくコールセンター業務をパソナが受託し、エテル社に再委託していた吹田市や兵庫県西宮市でも発覚した。
枚方市での不正発覚についてパソナから報告を受けた兵庫県西宮市では、同市がエテル社のタイムカードなどを調査したところ、契約当初から市と合意した人数よりも少ない席数で運用しており、結果として契約数の約58%しか運用していなかったことが判明。予定数と実態の差額は約4億5000万円にのぼった。また、コールセンターには医療的な相談も受けられるよう、常に医療資格を持つ看護師などのオペレーターが最低1人必要だったが、その契約も守られていなかったという。
検証の結果、パソナが過大請求を認めて市への返納を予定している額は、
▼枚方市…約3億6000万円(対象期間2021年3月1日〜2022年12月4日分)
▼吹田市…約2億7000万円(2021年3月1日〜2022年12月31日分)
▼西宮市…約4億5000万円(2021年3月1日〜2022年12月11日分)
となっている。2年間近く虚偽報告を続け、不正がまかり通っていたことがわかる。尚、市に過大請求分が返納されても、毎日何度も電話をかけ続けた市民の損失が賠償されるわけではない。
この公共事業の「ピンハネ丸投げ」方式は、パソナなどの人材派遣業など大手業者のビジネスにとって今や常套手段となっている。人材派遣業に携わる人からは「コロナ対応のコールセンターは、請負ではあるが、時給換算で約8000円程度。それを下請に丸投げして時給1500円で働かせる仕組み。5000円抜いて160時間×5000人に働かせれば、毎月40億円の利益。1年したら480億円の利益になる」と指摘する声もある。
コロナ禍においては、経産省の持続化給付金事業でも、広告最大手電通やパソナなどが設立した一般社団法人(実体のないダミー法人)に委託し、それを電通に丸ごと再委託。そこから電通子会社、パソナ、大日本印刷などに再々委託するピンハネの図式ができあがっており、税金つかみ取り合戦の様相となる一方、肝心の審査や給付業務は経理経験もない派遣社員に担わせたために大混乱をきたした。
本来、公共調達の適正化に関する国の通知では、随意契約における事業の一括再委託を禁止しており、一般競争入札で用いられる総合評価方式でも、業務の97%を再委託する団体は履行能力がないとみなされる。管理・監督の目が行き届かない再委託を前提にした入札は、税金の浪費につながるからだ。
だが電通やパソナの場合、むしろ行政との政治的な癒着によって業務委託の斡旋を受けており、東京五輪における受注調整と同じく出来レースとなっている特徴がある。
とくに「大阪維新」が行政トップを握る大阪府内では、役所の職員を削減する一方、窓口業務の大半をパソナに外部委託しており、コロナ禍での時短協力金支給業務や関西万博などの国際イベントでもパソナに多くの業務を委託している。
だが、たとえば「全国一支給が遅い」と評判になった大阪府の時短協力金業務(随意契約)についても、大阪府は1件を審査するのに要する稼働量を見積もっていないうえに、納期を決める請負契約ではなく、稼働に対しての委託役務業務としているため、パソナからすればより業務に時間を掛けた方がもうかるという歪な仕組みになっている。そのため申請から2カ月たっても申請数の4分の1しか支給されないという業務停滞が生まれた。
パソナは、竹中平蔵(元経済財政政策担当相)が長らく会長(2009年8月〜22年8月)を務め、政府の規制改革諮問会議メンバーとして労働法制の緩和を提案・決定し、みずからその業務を受託する方式で一大企業に成り上がった。コロナ禍にあった昨年は、これらの公共業務の委託や東京五輪の公金ピンハネ事業で純利益を前年比11倍に増やした。今回の問題は、その「インサイド・ジョブ」の一端を披瀝するとともに、これらが氷山の一角であることを物語っている。
同時に、「行政のスリム化」「効率化」と称して進められているアウトソーシング(外部委託)が、誰のための改革なのかを浮き彫りにしており、根本的に見直す必要性を突きつけている。
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