http://www.asyura2.com/22/iryo10/msg/661.html
Tweet |
2023年2月12日 12時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/230732
精神医療の長期入院で国の責任を問う「精神国賠訴訟」で、原告側は当事者や家族、支援者らから長期入院に関する体験談を募り、証言集を作っている。集まった証言は140を超える。声を上げた人たちの思いとは—。(木原育子)
精神国賠訴訟 福島県の精神科病院に約40年間入院させられ、原発事故の避難を機に退院した伊藤時男さん(71)=群馬県=が2020年9月、入院中の職業選択や結婚など多くの自由を奪われたのは国の責任だとして、約3300万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴。精神医療分野での国の不作為を問う国賠訴訟は初めて。
◆「特定の病院の話ではない」
「誰か一人の問題、どこか特定の病院の話ではない。そろそろ全体で考えていかないといけない」。元精神科病院の精神保健福祉士で、帝京平成大講師の國重智宏さんが語る。証言集に名を連ねた一人だ。
國重さんは20年ほど前、世界でも例を見ないほど精神科病院が集中する東京都八王子市内で勤務。薄暗い保護室のトイレが穴だけだったり、日常的な身体拘束があったりした。「車いすに乗る時も拘束され、その車いすを柱にくくりつける行為もあった」と振り返る。空床を埋めるために患者を他の病院や福祉事務所からもらい受けるようなことも。「当時は感覚がまひしてしまっていた」。病院を3年で退職し、その後は、地域で退院支援にたずさわった。
今も忘れられないことがある。30年ほど入院していた64歳の患者から「退院をしたい」と相談されたが、返した言葉は「65歳になれば介護保険制度が使える。1年待とう」。その後、國重さんは職を移ったが、のちにその人が退院することなく亡くなったと聞いた。証言に加わった理由には「長期入院という人権侵害を目にしながらも、状況を変えられてこなかった反省もある」と語る。
◆2万人が退院できないまま亡くなる
國重さんのような精神保健福祉士は患者の権利擁護を担う立場だが、雇用契約は病院側と結ぶ。原告側の「精神医療国家賠償請求訴訟研究会」によると、病院との関係悪化を恐れ、証言を断念した人も多かったという。
昨年度の厚生労働省調査で、精神疾患による入院患者は26万3000人。20年以上の入院は2万人を超え、年間2万人前後が退院できないまま病院で亡くなる。受け入れ先があれば退院できる「社会的入院」は7万人とも、もっと多くいるとも言われている。
研究会代表の東谷幸政さん(68)は「精神医療の犠牲になってきた生の声が寄せられた。本人も家族も精神的、経済的、社会的に深い傷を負っている。日本の精神医療を変える社会運動を行う必要がある」と語る。
◆実態は一人一人違う
原告側が参考にしたのが、ハンセン病国賠訴訟での証言集めだ。元患者らが、国の隔離政策は違憲だとして集団提訴し、2001年に熊本地裁で違憲性を認定。その後、家族も被害当事者だとして16年に560人余が提訴。その際、力になったのが、東北学院大の黒坂愛衣教授(社会学)がまとめた証言集「ハンセン病家族たちの物語」(世織書房)だった。
黒坂教授は「始めは家族の人となかなか会えず、話を聞くことさえ難しかった。その難しさがハンセン病が抱える問題の根深さを表していた」と語る。
「被害というと、外部の人は非常に単純化したイメージで捉える傾向にあるが、実態はとても複雑で一人一人違う」とし、「被害にはさまざまな形があることをつかまないと、本当の被害回復にならない。語ることを通し、それぞれの歩みをもう一度当事者たちの中で整理できる」と証言作りの大切さを話す。そして「これらは全て社会で起きている。社会が受け止めなければならない」と続ける。
精神国賠の証言集は今後出版される予定という。
【関連記事】強制入院拡大? 障害者支援「束ね法案」、このまま可決していいの? 国連勧告ないがしろ「当事者本位で議論を」
最新投稿・コメント全文リスト コメント投稿はメルマガで即時配信 スレ建て依頼スレ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。