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山口 上関町に中間貯蔵施設計画 行き詰まる核燃料サイクル/水野倫之・nhk
2023年08月11日 (金)
水野 倫之 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/486656.html
原発から出る使用済み核燃料を保管する中間貯蔵施設について、中国電力は今月、山口県上関町で建設に向けた調査を行う方針を明らかに。そしてこの調査、関西電力と共同で行うとしている。背景には各原発で使用済み核燃料がたまり続け、貯蔵場所の確保が切実となっている事情が。
きょうは
▽まず中間貯蔵施設についてみたあと
▽中国電力と関西電力、それに地元、3者の思惑について
▽そして背景にある核燃料サイクル政策の行き詰まり
以上3点から水野倫之解説委員の解説。
今回中国電力が調査方針を示したのは使用済み核燃料を一時的に保管する施設。
上関町の中国電力の敷地内で、ボーリング調査などを半年かけて行いたいと。
中間貯蔵施設、どんな施設なのか。
使用済み核燃料は強い放射線と大量の熱を出すため、水を張ったプールで保管するのが一般的だが、今回は専用の容器に入れる乾式貯蔵施設と呼ばれるもので、一部の原発敷地内で運用されている。
以前茨城県の東海第二原発の乾式貯蔵施設を取材したときの様子。
高さ6mの金属容器の中に、使用済み核燃料が61体ずつ保管されている。
放射線は鉛などで遮蔽され表面ではかなり低く抑えられている。
また熱は容器内の放熱板で空気中、そして窓の外へと逃がして自然対流で冷却する仕組みで、表面は手でさわれるまで温度が下がっている。
福島の事故では電源が失われてプールの冷却ができなくなり使用済み核燃料のメルトダウンも懸念され、プールで大量保管することのリスクが明らかになったが、乾式貯蔵は水や電源を必要としないことから、比較的安全だとされている。
申し入れを受けた上関町では、おととい町議会の全員協議会で西町長が申し入れ内容を説明。今後臨時議会で議員の意向を確認するなどして、調査を受け入れるか判断するとしている。
そしてこの調査計画、中国電力と関西電力、それに上関町の3者の思惑が一致したものだった。
まず中国電力。島根原発は運転を停止しているが、プールの67%が使用済み核燃料で埋まる。そして来年2号機の再稼働を、また建設中の3号機も将来の稼働を目指しており、使用済み核燃料は確実に増えることからいずれ貯蔵施設が必要。
ただ施設の建設運用には多額のコストが。しかし燃料価格高騰やカルテルの課徴金などで昨年度過去最大の1553億円の赤字となったこともあり、単独での建設は困難と判断。
声をかけたのが、同じく使用済み核燃料の対応に苦慮していた関西電力だった。
関西電力は来月高浜原発2号機が再稼働すれば、保有する7基すべてが稼働する見込み。しかしプールの82%が埋まり、あと5年から7年でいっぱいになる見通しで、運転を止めざるを得なくなる可能性も。
こうした状況に地元福井県は電力の消費地にも応分の負担を求めたいと、関電に対し、県外に貯蔵施設をつくるよう求めてきた。関電は今年まつまでにメドがつけられなければ原発3基の運転を止める方針まで伝えていた。
ただ結局単独でメドはつけられず、今年6月には使用済み核燃料の一部をフランスに運ぶとして約束は果たされたとの認識を示した。しかし「 県民の思いを理解していない」など反発もあがり、対応を迫られていたところ、中国電力と共同調査に合意できたわけ。
カルテル問題では関電が公取に自己申告して課徴金支払いが免除となり、中国電力と関係はよくなかったとされるが、使用済み核燃料問題では利害が一致、手を握ることとなった。
さらに今回、上関町にとってもメリットがあると西町長は言う。
町は1982年に原発誘致を表明。国の交付金で様々な施設が建てられた。
しかし反対運動などで工事は進まず、福島の事故を受け中国電力が工事計画の中断を発表。この間、人口は3分の1に減り、原発であてにした交付金も激減し財政はひっ迫。
その点、中間貯蔵施設を立地する自治体には、調査段階で年間最大1億4000万円、県が建設に同意すれば年間最大9億8000万円の交付金が配布。
こうして3者の思惑が一致しての調査計画の発表だったわけ。
しかし思惑通り進むかは不透明な部分も。
上関町では原発計画に対する反対運動が激しく工事が進まなかった経緯があり、今回も反対する住民は、「施設で上関の豊かな自然の魅力が失われる。」などと反発しており、激しい反対も予想。
ここからは、大手電力が中間貯蔵施設の建設を迫られる背景を考える。
それは核燃料サイクル政策の行き詰まり。
政府は資源の有効利用や核廃棄物を減らせるとして全ての使用済み核燃料を再処理しプルトニウムを使う核燃料サイクルを掲げる。
しかし中核となる青森県の再処理工場は1993年に着工したものの技術的なトラブルが相次いだほか、規制委員会への説明が十分できずに審査が滞り、完成は26回延期され、四半世紀以上遅れ。
危機感を抱いた大手電力は社員70人を事業者の日本原燃に送り込んでいる。
去年取材したときには体育館に400人が集まり、審査の書類づくりをしていた。原燃によると審査に対応するには社員同士の意思疎通が重要と考え一堂に会する体制を取ったとのこと。
ただその効果は不明。その後も審査書類の不備が3000ページ見つかり、社長が規制委から呼び出されて事情を聞かれている。長期間稼働できないことによる社員の士気の低下を指摘する声も。
このように再処理工場が完成しない為、全国17の原発のプールはすでに77%が埋まっているわけ。
さらに今後仮に工場が完成したとしても、稼働は当面限定的に。
というのもプルトニウムは核兵器の原料ともなることから、国の原子力委員会が日本が内外にすでに持つ45tのプルトニウムの削減方針を示しているからで、今後再処理して総量を増やすことはできず、消費できる分しか再処理できない。
しかし原発再稼働が進まず、プルトニウムを消費できる原発は現状4基しかなく消費量は限られることから、使用済み核燃料の処理が一気に進む状況ではなく、今後も全国のプールには熱や放射線を出し続ける使用済み核燃料がたまり続けることになるかもしれないわけ。
政府はウクライナ侵攻や電力危機を受けて原発の最大限活用を掲げ、最長60年に制限された原発の運転期間について実質的に60年を超えて運転を可能にする法律も成立させるなど、政策を転換。
原発を使い続けるというのであればその、後始末も明確にすることが不可欠。しかし核燃料サイクルについての抜本見直しの議論は行われず、あくまで再処理がうまくいくことが前提となっている。ただ現実には遅れは拡大しているわけで、まずは使用済み核燃料をすべて再処理するのではなく廃棄物として直接処分できるようにするなど、サイクル政策の見直しを検討していかなければならないと思う。
原発の後始末は、福島の事故以降残されたままの課題。これを先送りするのではなく、今回の中間貯蔵施設の動きをきっかけに、課題解決への道筋を示していくことが求められる。
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