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2023年5月17日 07時51分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/250450?rct=national
東京電力は16日、本紙など茨城県政記者会と千葉県政記者会の加盟社に東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)の構内を公開した。東電は、高濃度汚染水を浄化処理した後の放射性物質トリチウムが残る水の海洋放出に向けた工事を6月に終えると説明。実際に放出を始める時期については、本県を含む漁業者の理解を前提としていることを踏まえ、「国などと決めること」として明言しなかった。(竹島勇)
構内に入ると、直径十メートルほどの千六十八基のタンクが目に飛び込んでくる。約百三十三万トンの処理済み汚染水などをためているタンク群だ。汚染水は、放射性物質を含む水に地下水や雨水が混ざることで日々発生。タンクの容量は百三十七万トンで、最新の試算では二〇二四年二月から六月にかけて満杯になるという。
東電は、原子炉から溶け落ちた核燃料の取り出しを目指しており、その作業を進めるには取り出した核燃料の保管場所が必要になる。このまま処理済み汚染水を増やしてタンクを増設し続ければ、その場所が確保できない−というのが国や東電の考え方だ。
処理済み汚染水は、トリチウムを国の規制値の四十分の一未満となる一リットル当たり一五〇〇ベクレル未満にした上で、時間をかけて海に流すことになる。
この日、報道陣の取材に対応した東電の高原憲一リスクコミュニケーターは、タンクのある敷地を空けなければ「廃炉が進まない。(海洋放出は)早いにこしたことはない」と強調。風評被害の懸念を訴え続ける漁業者の理解については、「理解といっても数で測れるものではない」と難航していることを認め、「声に耳を傾ける努力を続ける。風評被害が起きないようにする」と話した。
海洋放出は二〇二二年七月に原子力規制委員会が認可。東電はそれ以前から、沖合約一キロまでの放水トンネルの建設や放水口設置の工事に向けた準備作業を進めてきた。
放水トンネルの入り口は、六基の原子炉のうち北側にある5、6号機の海側に設置する。この日は、処理済み汚染水を通すパイプをクレーンで移動させるなどの工事が行われていた。
処理済み汚染水を海水で薄めた水でヒラメやアワビを育てる試験を行う「海洋生物飼育試験施設」も見学。漁業者の「実際に飼ってみてもらわないと分からない」という求めに応じてつくられた施設だ。普通の海水と二種類の水槽で飼育して比較しているが、成育やトリチウムの蓄積に差は出ていないという。飼育担当者は「漁業者に見てもらい安全を確認してほしい」と話した。
高原氏は、海洋放出のスケジュールに関し「六月に工事が終われば、規制委のチェックを受けて合格証を得ることになる。チェックには一〜二カ月はかかるのでは」とした上で、実際の放出開始時期については「国や東電など関係機関が話し合って決めることになる」と述べるにとどめた。
◆近隣国も根強い反発 韓国は今月視察団派遣
処理済み汚染水の海洋放出には、福島県や本県などの漁業者や近隣国からの反発が依然根強い。
福島県に隣接する北茨城市の大津漁業協同組合の担当者は「海洋放出には反対」と明言。同漁協など県内の十漁協が加盟する茨城沿海地区漁協などと共同歩調をとっていくという。
海洋放出は国際問題化している。ミクロネシア連邦など太平洋の島しょ国が反対を表明しているほか、アジア諸国にも懸念がくすぶる。特に韓国では批判的な世論が強く、七日に開かれた岸田文雄首相と尹錫悦(ユンソンニョル)大統領による首脳会談では、韓国の専門家が福島第一原発を視察することで合意。二十三日から四日間の日程で視察団が派遣される。
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