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2023年4月11日 11時30分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/243298
中部電力が8日、再生可能エネルギー事業者らの太陽光や風力発電を抑制する「出力制御」を初めて実施した。製造業が集中する中部地方は国内3大電力需要地。ここで電力が余るほど再エネが普及したとも言える。ただ、資源高で電気代が上がり続ける中、燃料費のかからない再エネをあえて「捨てる」のはもったいない気も。どうにかならないのか。(岸本拓也)
◆夏は大きな柱の太陽光 春と夏は需要減
中部電管内の送配電網を運営する中部電力パワーグリッド(PG)によると、再エネの出力制御は8、9日の昼間に、それぞれ30分間にわたって実施した。8日は0.4万キロワット、9日は59万キロワットを抑制した。広報担当者は「休日で工場などが稼働しないことに加え、冷暖房の利用が少ない時期で電力需要が減った一方で、好天で太陽光の発電量が増えた。供給が需要を上回ると判断し、出力制御した」と説明する。
電気は、使用量(需要)と発電量(供給)が常に一致するよう保たれており、バランスが大きく崩れると大停電が起きる恐れがあるため、供給を減らす出力制御でこれを防ぐ。2018年に九州電力が初めて実施。昨年度は北海道や東北、中国、四国、沖縄の電力各社が行い、今年は中部電と北陸電力も続いた。東電、関電での実施はまだない。
背景にあるのが、再エネの急増だ。10年度に9.4%だった国内の電源構成に占める再エネ(水力を含む)の比率は、21年度に20.3%へ倍増した。特に太陽光は0.3%から8.3%と大幅に増えた。
その結果、太陽光は冷房利用がピークとなる夏場の日中の供給を支える柱になった。しかし、冷暖房の利用が少なく、全体の需要が減る春や秋には、太陽光の電気を使い切れず、出力制御することが増えてきた。大需要地の中部電が出力制御したことは、再エネが拡大してきた証左でもある。
◆電気代負担は増しそうなのに…無駄にしない方法はないのか
一方で、天然ガスや石炭など火力発電用燃料の値上がりで、電気代は高騰している。総務省の家計調査によると、全国の2人以上世帯の電気代(今年2月分)は1万8750円と、前年同月比で約3割増えた。国は電気代の一部補助を始めたものの、東京電力など大手7社が大幅な値上げを表明しており、今後も電気代負担は増しそうだ。
そんな中、燃料費がかからない再エネの電力を「捨てる」のはどうにももったいない。出力制御により、収入が減ることで、再エネ事業者が新たな投資意欲を失う恐れもある。
こうした現状に、国も手をこまねいているわけではない。再エネをできるだけ無駄にしないように、供給が需要を上回りそうなときは、(1)まず火力発電の出力を抑え、蓄電池代わりとなる揚水発電で需要を創出(2)電気を他の地域に送る(3)バイオマス、太陽光、風力の順で再エネを制御(4)それでも余ったら原子力や水力、地熱を抑制する—とのルールを定めた。
国は再エネを主力電源と位置付け、30年度の比率を今の倍近い36〜38%にし、太陽光も14〜16%にする計画だ。その受け皿を広げるため、地域で電力を融通しあう連系線(送電網)の増強も進めている。余った電気をためる大型蓄電池の導入や、電気を水素に変えて燃料にする計画もある。
ただ、いずれもコストがネックで時間もかかる。環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は、即効性のある対策としてルールの見直しを提案する。「現在のルールでは、火力発電の抑制が十分に行われず、地域間連系線も再エネ優先が徹底されていない実態があるなど、細かな運用に改善の余地がある。まずは運用ルールを見直し、再エネ優先を徹底して、出力制御を減らしていくことが必要だ」
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