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2023年3月15日 12時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/238035?rct=national
東京電力福島第一原発事故後の除染で集めた汚染土、いわゆる「除染土」の再利用を巡り、今月に入って新たな動きが出た。青森県風間浦かざまうら村が福島県外の自治体では初めて、誘致を検討すると表明したのだ。この村、本州の北端にあり、あまり耳なじみがない。どんなところなのか。再利用が計画される候補地では猛反発が湧き出てきた。前向き姿勢の裏に潜む事情とは。(中沢佳子、岸本拓也)
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◆東京から5時間半、恐山近くの村
「本州最北端の村」と称する風間浦村。眼前に津軽海峡が広がり、向こうに北海道を見晴らせる。
下北半島にある村は霊場恐山に近く、面積は69.6平方キロ。およそ9割が山林や原野で、長い海岸線に沿う国道周辺に村役場や商店、学校などが点在する。
「東京からだと5時間半はかかる」。村産業建設課の担当者は「こちら特報部」の電話取材にそう話す。
村へは、東北新幹線や在来線で八戸や下北を経由してバスやタクシーを使うか、飛行機で青森空港に向かい、バスなどで青森駅に出て在来線で下北に赴き、バスやタクシーを乗り継いでいく。
電車の接続が悪く、八戸から下北への直通は1日3便。「村へのバスも少なく、ゼロの時間帯もある。大抵、レンタカーか団体ツアーの観光バスを使うね」
◆あんきもん、いかさまレース、井上靖
村のキャラクターは、温泉好きのアンコウを模した「あんきもん」。2〜3月に村で水揚げされるアンコウは有名で、祭りも開かれる。主な産業は観光と漁業。特産はコンブやワカメといった海藻類、ウニ、そして6月から揚がるスルメイカも。かつては捕れたてのイカの泳ぐ速さを競わせる「烏賊様いかさまレース」を催し、話題をさらった。
村内には下風呂温泉郷があり、年6万人前後やってくる。ホテルや旅館、民宿は計9軒。1958年には作家井上靖が訪れて小説「海峡」をつづったとされる。公園内に立つ文学碑は観光スポットの一つで、村によると、隣の大間町などを周遊するコースの一環になっているという。
海の幸に温泉、そして文学のにおい—。そんな風間浦村は重大な問題に直面している。過疎化だ。
◆店も予算も…隣の大間町との格差が
人口は2月末で1673人。この5年間で300人ほど減った。村の担当者は「県内でも減少率は高い方。後継者難に悩む漁業者や経営者も多い。子どもも少なく、今年4月の新1年生も3人だけだ」と嘆く。
村商工会には観光業や商店など90事業所が加盟しているものの、職員は「スーパー? 一つもないです。普段の買い物は、お年寄りだと近くの商店。車がある人はお隣の大間町へ行きますね」と語る。
村の人々の口に上る大間町はマグロ漁で名高いだけでなく、電源開発大間原発の建設地でもある。日々の生活や観光で関係の深い両町村だが、格差も目立つ。
大間町企画経営課によると、国が原子力施設のある自治体などに渡す電源立地地域対策交付金は、同町だと1983〜2022年度で計約145億2500万円の見込み。近年は年1億6000万円強を受けて、学校や幼稚園、病院の運営費や種苗育成事業に充てており、恩恵は著しい。
この交付金自体は原発の運転開始で打ち切られる見通しだが、担当者は「別枠の交付金を受ける見込みがある。原発が稼働すれば固定資産税も入る」という。
かたや風間浦村はどうか。県によれば1994〜2021年度で計約37億890万円で、大間町を引き合いに「桁一つ少ない」という声も上がる。
◆「まだ何も決まっていない」と言うけど…
そんな風間浦村が、除染土再利用の受け入れに前向きな姿勢を示した。
岩間尊貴志たかし総務課長によると、冨岡宏村長は今月6日の村議会で環境省が進める実証事業に触れ、誘致に向けて検討を始めることを正式に表明した。冨岡村長は「まずは、実証事業がどんなもので、村へのメリットがあるのか検討したい」と述べたという。
岩間氏は「これから福島県飯舘村の実証事業の現場を視察したり、本格的に情報を収集したりする段階。まだ誘致を決定したわけではないし、受け入れ時期や規模も含めて何も決まっていない」と話す。
とはいえ、村ではかねて原発に絡んだ振興策を考えていたようだ。2021年12月に、原子力関連施設を含む企業誘致で得られる交付金や税収を、老朽化した村庁舎の移転などに充てる構想を打ち出した。今回の動きはその一環という。
◆財政メリットは、風評被害は
村によると、除染土再利用の誘致が具体的に持ち上がったのは昨年8月に村が開いた勉強会でのことだ。
むつ市の前副市長で、元経済産業省職員の鎌田光治氏を講師に招くと、誘致策として除染土の実証事業や医療廃材の処分施設を例示された。「その後調べると、医療廃材はメリットがないと判断し、実証事業の方の情報収集を始めた」と岩間氏。昨年11月に冨岡村長が環境省を訪れるなど、水面下で動き始めた。
村内や周囲の受け止めはどうか。能登勝彦村議(立憲民主党)は「心情的には福島の人のために引き受けたい気持ちがある」としつつ、「まだ財政面のメリットがはっきりしていない。それがないとやる意味はない。今後、村長が誘致の方向性を打ち出したら、風評被害を生まないかなど、住民への説明もしっかりやらないといけない」と話す。
共産党下北地区委員会の櫛部くしべ孝行委員長は「新たに核関連のごみを持ってくるのは反対だ。村が本気でやろうとしているなら、抗議したい」と拒否反応を示す。青森県も「県としては何も聞いていない」(三村申吾知事)と寝耳に水だったようだ。
昨秋には、村から相談を受けていた環境省だが、村が期待する経済的なメリットに関しては態度を明確にしていない。
◆「原発マネーで過疎地振興」が再び?
環境省の担当者は「現在やっている実証事業に対して交付金・補助金は出ない」と明言する一方、「風間浦村については、具体的なことが決まっていないので未定としか言えない。まずは村の考えを伺ってやりとりしたい」と話し、今後、協力の見返りを与えることに含みを残す。
すでに環境省は実証事業後の本格的な再利用に向け、受け入れた自治体などに対する経済的なインセンティブを検討している。「こちら特報部」の取材にそう答えている。実証に手を挙げた自治体にも経済支援することになれば、かねて繰り返された「原発マネーで過疎地振興」を思い起こさせる。手を挙げたからといって安易に委ねて良いのか。
環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は「そもそも環境省が示した除染土再利用の基準は、廃炉原発で出た資材の再利用する際のクリアランス基準と比べても、放射能濃度で2桁高い。被ばくリスクを考えれば、本来同じ基準を取らなければいけない」とクギを刺す。
その上で「科学的な考えをゆがめ、お金の力で自治体に押し込めようとしている」と批判し、こう続ける。「お金をばらまいて全国各地に持ち出すことは現実的に困難だ。量が多すぎ、どれだけ費用がかかるのか。受け入れる地域もあるのか。除染土の後始末はゼロから見直す時期に来ている」
◆デスクメモ
再利用が取り沙汰される新宿や所沢の人々も風間浦を気にかけていた。本当に引き受けを望むか、「財政難でやむなく」ではないか、と。過疎地は何か我慢しないと支援を得られないとしたら不健全。その状況こそ国が改めるべきで、かたや除染土の後始末は東電に命じたらいいのでは。(榊)
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