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2023年1月13日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/224939/1
https://www.tokyo-np.co.jp/article/224939/2
東京電力福島第一原発事故後の除染作業で集めた汚染土、いわゆる「除染土」を首都圏で再利用する実証事業が公表されてから1カ月。予定地の一つ、新宿御苑(東京都新宿区)近くで生活を営む人らが腰を上げ、再利用に異を唱える団体を設けた。東電と意外な縁がある新宿。地元の人びとは何を思うか。ほかの地域は人ごとで済ませていいのか。改めて探ってみた。(中山岳、中沢佳子)
◆区民の合意形成図っていない
「地元住民の多くが知らないうちに、話が進められようとしている」
こう憤るのは、文筆家の平井玄さん(70)。実証事業に関する説明が足りないとして12日、新宿区に申し入れをした「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会」の世話人だ。
環境省は先月9日、新宿御苑を候補地にした実証事業を発表。一般入園者が通常入らない事務所棟裏側の花壇を使い、除染土に覆土して植物を植えるという。
21日には御苑に面した新宿1、2丁目の住民を対象に説明会を実施。だが参加者はわずか28人。1丁目に住む平井さんも開催に気づかず、報道で知った。
「区民の合意形成を図っているとはとても言えない」。平井さんは危機感を募らせ、28日に除染土問題を考える勉強会を開催。今月7日には区民有志らと反対する会を設立した。
◆大学教授や弁護士、演劇人、ゴールデン街の飲食店主も
12日に区役所を訪れた際には、区民に実証事業を周知し、安全が保証されない限り除染土の持ち込みを中止するよう、区幹部に申し入れ書を提出した。
同行した約20人の顔触れは多彩で、地元住民のみならず、大学教授や弁護士、演劇人、御苑近くにあるゴールデン街の飲食店主も。「除染土の再利用は法律できちんと決まっていない」「福島の負担軽減どころか、汚染の拡散につながるのでは」と疑問を呈し、「区は主体性を持ち、環境省に安全性について問いただしてほしい」と訴えた。
新宿は歌舞伎町など歓楽街の印象が強いが、新宿御苑周辺にはマンションも多く、3世代にわたって暮らしてきた人もいるという。平井さんも小学生の頃には新宿御苑でよく遊び、今も3日に1度は散歩する。「幼稚園児も多く訪れ、多くの人が行き交う遊歩道もある。そんな園内でなぜ実証事業をやろうとするのか」
◆歴代の東電幹部輩出した都立新宿高校
東電と浅からぬ縁があるのも新宿の特徴だ。
御苑そばの都立新宿高校の卒業生からは、歴代の東電幹部も輩出。卒業生でつくる「朝陽同窓会」によると、福島原発事故当時は会長だった勝俣恒久氏、事故後に社長を務めた広瀬直己氏らも名を連ねる。さらに御苑近くの信濃町には2014年2月まで東京電力病院もあった。「母校の近くに(除染土を)持ってこようとしていることについて勝俣氏らはどう思っているのか、問いたい」
何より際立つのが、環境省の前のめりぶりだ。新宿の説明会で紹介された動画「福島、その先の環境へ。」からもうかがえる。
除染土を「復興を続ける福島の地に、今も残された課題」と説明。除染土を詰めたフレコンバックが並ぶ福島県内の仮置き場の映像を流しつつ、「果たしてこれは、福島だけの問題でしょうか?」と問いかける。
除染土を福島県外で受け入れるため実証事業が必要と言いたいようだが、住民の疑問に真剣に応えようとしているかは心もとない。説明会の資料に記されたコールセンターの受け付けは平日のみで「いただいた『ご意見』については、今後の検討の参考とさせていただきます」と素っ気ない。
◆「国の言い分を新宿区もうのみに」
平井さんは、国の姿勢が住民を置き去りにしているように見えると言う。
「(除染土は)科学的に安全とは言い切れないのに、安全とする国の言い分を、新宿区もうのみにしている」と指摘する。反対する会は24日に発足集会を開くなどし、今後も広く問題を訴えていく。
実証事業は現在、新宿区と埼玉県所沢市での実施が公表され、茨城県つくば市でも取り沙汰されるが、除染土の後始末はこれらの地域に限った話ではない。
環境省によると、福島県内の除染土は、第一原発近くの中間貯蔵施設に集めた後、2045年までに県外へ運んで最終処分する。集めた除染土は昨年末時点で約1338万立方メートル。最終処分する量を減らし、県外に搬出しやすくするために再利用を唱える。
◆知らぬ間に除染土が身近に…
問題は、再利用する除染土の放射性濃度だ。
農林水産省によると、原発事故前の約50年間、全国の農地の放射性濃度は平均で1キログラム当たり約20ベクレル。一方、環境省が除染土の再利用基準として示すのは同8000ベクレル以下で、およそ400倍だ。廃炉にした原発から出る資材の再利用基準の同100ベクレル以下と比べても80倍と緩い。
東京経済大の礒野弥生名誉教授(環境法)は「この基準だと相当な量が再利用される。それに、放射性物質濃度の低い土を混ぜれば、基準値まで薄められる」と危ぶむ。再利用に回る量が増えれば、再利用の対象地域も多くなりうる。「知らぬ間に除染土が身近に」ともなりかねない。
厄介な問題は他にもある。福島第一原発からは放射性物質が広範に放出された結果、東北や首都圏で広く除染が実施された。除染土は福島県以外でも岩手や茨城、群馬、千葉など7県の計約2万9000カ所で保管されている。環境省は、袋や容器に入れて密閉し、防水シートをかぶせて遮水したり、盛り土で覆ったりなどの対策を促している。
しかし保管後の対応は福島県とそれ以外で異なる。政府が11年11月に閣議決定した基本方針では、汚染土などが「相当量発生している都道府県」では国の責任で中間貯蔵施設を確保すると定めた。該当するのは福島県で、それ以外は現地処理となる。
◆再利用ありきで実証事業に乗り出す環境省
しかし除染土を抱える福島県外の自治体は複雑だ。学校など44カ所で保管している宮城県丸森町は「国と東電の責任で町外に運び出して処理を」と環境省にかけ合ってきた。
町総務課の担当者は「町内には『ごみを捨てた人が片付けず、捨てられた場所の人が処分するのはおかしい』という声もある。国は町外搬出に応じていないが、法改正してでも町外でと国に求めている」と語る。
人ごとで済ませられない除染土の後始末。ただ、後始末の方法は根拠が心もとなかったり、不透明なところがあったりする。
福島県内の除染土の再利用、福島県外の除染土の現地処理は、時の内閣が閣議決定した方針にすぎない。合意形成が十分なのかという問題をはらんでいる。福島県内の除染土の最終処分に関しては、「現在、有識者会議で協議中」(同省担当者)という。
こんな状況なのに、再利用ありきで実証事業に乗りだしているのが環境省だ。
ジャーナリストの政野淳子氏は「再利用は法的根拠が薄く、ごり押しはおかしい」と批判した上、「実証事業は既成事実を積み上げるための試みだ。実際に道路工事などで再利用するなら、防護策の検証も必要になる」と指摘する。
前出の礒野氏も「福島の事故対応は、今後の土台になる。そもそも再利用をしていいのか、するならどう進めるか、丁寧な議論を重ねるべきだ」と訴える。
◆デスクメモ
東電の原発による放射能汚染。後始末を担うべきは東電のはずだが、各地に汚染土の受け入れを迫る構図になっている。自然災害のように「誰かのせいで起きたわけじゃない」「復興に向けてみんなで協力を」と言わんばかりに。違和感を抱かせる前提部分。ここから問い直すべきだ。(榊)
【関連記事】原発事故の除染土「後始末が家の目の前で…」 新宿御苑、所沢、つくばで福島県外再利用の計画浮上
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