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2022年8月5日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/193936
東京電力は4日、福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)の汚染水を浄化処理した後の水の海洋放出に向け、海底トンネルなどの工事を始めた。来年春に設備を完成させて放出開始を目指すが、着工が遅れており、来年夏ごろに完成がずれ込む可能性がある。
東電によると、4日正午前に掘削機「シールドマシン」で海底トンネルの掘削を開始。作業は24時間態勢で、5日朝までに30センチを掘る予定。工事序盤はゆっくりとした速度で掘り、3カ月間で全体の15%に当たる約150メートルを掘り進める見通しという。
東電の計画では、主に放射性物質トリチウムが残る処理水を大量の海水で薄め、国の排出基準の40分の1未満にして、トンネルを通じて沖合約1キロに放出する。ただ、放出の前提の漁業関係者の理解を得られる見通しもなく、設備が完成しても放出できない可能性がある。(増井のぞみ)
◆漁業者らの理解得る見通しないまま
東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出に向け、4日に始まった本格工事。東電が完了時期が遅れる可能性を示す背景には、岩盤掘削や海上での作業など予測が難しい工程が待ち構えていることがある。完成しても放出前には、漁業関係者らの理解を得る必要があり、課題は山積みだ。
約1キロに及ぶ海底トンネルの掘削には、どのくらいの時間がかかるのか。掘削工事に詳しい芝浦工業大の稲積真哉教授(地盤工学)は「地盤の固さによって掘削の速度は変わる。実際に掘ってみなければ分からない部分が多い」と話す。
東電は海底トンネルが通るルート上の3カ所で、地盤を取り出すボーリング調査を実施。安全に掘削工事ができる地盤の固さの目安を満たしていることは確認したが、実際にどれほどの固さなのかまでは分かっていない。
稲積教授は「特に固い地盤がなければ、東電が想定する来年春までに掘削は終わるだろう」と推測する。
一連の工事では、ほかにも工程通りに進むのを阻む要素がある。海底に放出口を設置する工事など海上での作業は、波が高ければできず、気象にも大きく左右される。
工事が終わっても、放出できるかは分からない。政府と東電が2015年に福島県漁連に対し「関係者の理解なしにいかなる処分(海洋放出)もしない」と約束した文書について、東電は3日の記者会見で「順守する」と明言。ただ、どうやって理解を得るのかは「説明を尽くす」と繰り返すだけで見通しはない。
放出できなければ、毎日増える汚染水を処理してタンクに保管し続ける必要がある。東電の予測では、来年夏から秋ごろにタンクが満杯になる。この最悪のケースになった場合にどう対処するかは、何も決まっていない。(増井のぞみ、小野沢健太)
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