> 国営企業の民営化拡大や外資導入など新自由主義政策の継続を唱える右派の現職ボルソナロ大統領 と、いうように、ボルソナロは「ブラジルの安倍晋三」で、 > 米オバマ政権下の司法省と「カー・ウォッシュ捜査」を担当した検察官グループとモロ最高裁判事の間で、ルラの大統領選出馬を阻止する政治的取引がおこなわれていたことが明らかになっている。 というように、アメリカにとって、外資を排除して国営化を推進するルラは邪魔な存在というだけである。 ブラジルや中南米について何の予備知識も無く、トランプ福音派界隈の情報を鵜呑みにして騙され、米英の手先となり「ポスト米英」を名乗っているほど間抜けなことは無い。 以下の記事を理解する能力があれば、いかに「ポスト米英」や日本のトランプ支持者が無知蒙昧の白痴であうことがわかるだろう。 これまで、中南米で極右のアメリカ傀儡政権が跋扈してきたことは、「常識」の類であるが、それを「反米左派」が次々と倒してきたのが現在の「南米左派ドミノ」である。 中南米の左派は、先進国の勝ち組労働貴族の「なんちゃって左派」とは違うのである。 もちろん、中露が支援している。 〜〜〜〜 ブラジルでも左派が政権奪還 ルラ氏が大統領選制す 暴力や謀略乗り越え、中南米で新自由主義が終焉 | 長周新聞 https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/24976 ブラジルで10月30日、大統領選の決選投票がおこなわれ、左派・労働者党のルラ(ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ)元大統領が、右派現職のボルソナロに勝利し、政権の座に返り咲いた。ブラジルでは2015年に弾劾されたルセフ大統領(ルラの後継者)以来、7年ぶりの左派の政権奪還となった。中南米では、メキシコ、ニカラグア、コロンビア、ベネズエラ、ボリビア、アルゼンチン、ホンジュラス、ペルー、チリと主要国で軒並み左派政権が誕生しており、なかでも世界5位、中南米最大の人口(2億1400万人)を誇るブラジルでの左派奪権は、新自由主義からのバックラッシュの総仕上げとなる。80年代以降、世界に先駆けて新自由主義の実験場とされた「米国の裏庭」から新たな歴史が幕を開けたといえる。 ドル支配の足元で進む地殻変動 ブラジル大統領選は、国営企業の民営化拡大や外資導入など新自由主義政策の継続を唱える右派の現職ボルソナロ大統領(軍出身)と、民主主義的な体制を復権させ、貧困層救済や飢餓撲滅、人種差別の撤廃などを掲げる左派・労働者党のルラ元大統領(鉄鋼労働者出身)による事実上の一騎討ちとなった。第一回投票ではルラが48・4%、ボルソナロが43・2%で、ともに過半数を獲得できなかったため、決選投票がおこなわれ、ルラが僅差で勝利した。 なお、ボルソナロは任期が終わる来年1月までの政権移行には応じる姿勢を示す一方、敗北を認めておらず、国内では一部支持者が道路封鎖や軍へのクーデターを呼びかけるなどの騒乱が起きている。ボルソナロ政権は銃規制を大幅に緩和しており、市中に広がった銃による騒乱の過激化も懸念されている。 支持者の歓声に応えるルラ(10月30日、サンパウロ) 10月30日、勝利宣言したルラ大統領は、「これは私や労働者党の勝利ではなく、政党や個人の利益、イデオロギーをこえて形成された民主主義運動の勝利だ」と、集まった数十万人もの人々に呼びかけた。 また「今回の選挙は非常に難しい運動だった。ルラがボルソナロに対抗するだけではなく、民主主義と野蛮とのたたかいだった。教育を愛する人々、科学技術を愛する人々、文化を愛する人々、より多くの文化を求める人々、まともに働いて給料を得たい人々、同じ仕事をして男性と同等の給料を求める女性たちの運動であった」とのべ、「(右派への政権移行後)あのような形で貧乏が戻ってくるとは想像もしていなかった。まさかこの国で、子供を抱えた母親や父親が、食べるものがないために食べ物をねだる姿を見ることになろうとは。この国は世界第3位の食料生産国だ。本当に欠けているのは、この国を統治する者の恥だ!」と訴えた。 そして選挙中、かつてない規模のフェイクニュースや嘘が垂れ流され、人々を翻弄したことにふれ、今後は教育分野への国家投資を拡大し、文化省を復興させ、文化に関する州委員会を設立し、教育や文化に誰もがアクセスでき、雇用と収入を生み出す産業にまで成長させることを強調。「文化を恐れる者は、民衆を嫌う者、自由を嫌う者、民主主義を嫌う者であり、文化の自由がなければ、世界のどの国も真の国とはいえない」とのべた。 労働者出身のルラ 「貧困撲滅」で経済再建 ルラの勝利は「驚異的な復活」と評されている。2003年から2期8年大統領を務めた彼は、2018年に贈賄疑惑によって逮捕・収監され、政治の表舞台から追放されていたからだ。 長くポルトガルの植民地で、砂糖、金、ダイヤモンド、コーヒーなどの先進国向け供給地とされてきたブラジルでは、1888年まで奴隷制が続き、1964年から21年間の米国との関係を重んじる軍事独裁政権が続いた。1989年にようやく民政移管されたものの、憲法にもとづく民政の歴史は30年余りだ。 ルラは北東ペルナンブコ州の貧農家庭出身で、幼い頃から靴磨きなどの仕事をしながら家族9人の生計を支え、14歳で製鉄所の工員となり、プレス工場の事故で左手小指を失った経験を持つ。 30歳で鉄鋼労組の委員長となり、治安維持法をかざして血生臭い弾圧をする軍事独裁と対峙し、民主化を求め大規模なストライキを連続的にたたかってリーダーとして頭角をあらわした。 このころ中南米各国では、1982年の債務危機に始まる経済低迷を契機にして、IMF(世界通貨基金)・世界銀行の主導による新自由主義政策が導入され、それまでの国家主導型の経済から、市場経済を重視する貿易自由化、資本市場自由化、民営化、規制緩和などの構造改革がおし進められた。それにより欧米から外国資本が大量に流入したが、それが過剰債務となってのしかかり、深刻な通貨危機を引き起こした。 ルラは、外国資本に依存した開発優先の政治と、「国会議員440人のうち労働者出身は2人」というほどに既得権益層の代理機関と化した国政の変革を目指し、1980年に左派・労働者党を結党。長年の民衆運動によって、1989年に初めて直接選挙による大統領選が実現し、反市場原理主義や反グローバリズムを掲げたルラは、2002年大統領選で圧勝を収めた。 鉄鋼労組のストライキで演説すルラ(1979年、ブラジル) 2002年当時、ブラジル国内では貧富の格差が拡大し、都市部には先進国並みの豊かな生活を享受する富裕層がいる一方、国民の6割が平均所得の半分以下の貧困に陥り、そのうち月70j(約9000円)以下で暮らす極度の貧困層は国民の3割(約5400万人)にものぼった。 また衣食や教育機会が与えられない極度の貧困状態にある15歳以下の子どもは2250万人にものぼり、生活のための犯罪が多発する悪循環を社会に生み出していた。 「貧困撲滅」を掲げたルラは、貧困層のための社会保障プログラム「ボルサ・ファミリア」を立ち上げ、光熱費や食料手当、就学援助などの社会保障を統合して現金給付をおこない、1400万人にのぼる貧困家庭に毎月平均157レアル(約4500円)を支給した。 ルラは当時、「これは2、3人の子どもを抱える貧しい母親にとっては、半月間、家族に食料を与えられるだけの額だ。これによって路上で生活する子どもがいなくなり、学校に通えるようになり、飢えて犯罪に走ることも少なくなる。恩恵を受けるのは受給者本人ではなく、ブラジル社会だ。金持ちは豊かになり、貧乏人はより貧乏になるという古い論理を終わらせる」とのべている。 これらの施策により、3200万人が貧困から脱出したといわれ、アフリカ系国民の進学率は3倍に、失業率は歴代政権で最小となり、世界的に不況が覆うなかで、内需の拡大によってブラジルの経済力ランキング(GDP)は世界7位にまで成長した。最低賃金も2倍以上に引き上げ、生活や教育の水準が画期的に向上し、経済の好循環を生み出したためだ。そのため任期終盤には支持率は87%に達し、米オバマ大統領(当時)をして「世界で最も人気の高い大統領」といわしめた。 不当な裁判で収監 謀略の背後に米国の影 だが一方、労働者党は、議会内での多数派をとり込むため右派勢力との妥協を深め、ルラの後継として2011年に初の女性大統領となったジルマ・ルセフ(左翼ゲリラ出身)へ政権移行後は、最大勢力の中道右派・民主運動党(PMDB)の党首テメルを副大統領に迎えるなど、右派勢力との無原則な野合が、後に「母屋」を奪われることにつながる。 国内景気後退の煽りも受けて労働者党が徐々に支持を失っていくなかで、右派勢力は2015年、国営石油企業ペトロブラスと政権与党との間で、定期的に国家予算の粉飾や贈収賄がおこなわれていたと摘発。ペトロブラスはNSA(米国家安全保障局)が長年、監視対象にしていた企業だった。国家予算の操作は、歴代政権でおこなわれてきた「慣例」が含まれていたが、財界が握るメディアを利用して「労働者党の腐敗」キャンペーンを煽り、議会内投票だけでルセフ大統領を「犯罪者」として弾劾・追放した。いわゆる「カー・ウォッシュ(洗車)捜査」だ。 このスキャンダルは南米各国の政権をも揺るがす一大疑獄事件となり、ブラジルでは国会議員の半数以上が捜査対象となった。ところが大統領代行となった右派・テメル副大統領にも有力な贈賄の証言や証拠があったものの不問に付され、標的は労働者党に絞られた。関係者の証言によると、テメルの起訴を阻止するため15億jもの資金が使われたという。 ルラとルセフ大統領の弾劾を求めるデモ(2016年4月、サンパウロ) ついに訴追の手は、ルラ夫妻にも及び、妻マリサが心臓発作で急逝するという悲劇にも見舞われた。2013年に中東で起きた「アラブの春」に触発されるように反政府派はSNSを駆使して軍によるクーデターを呼びかけるなど常軌を逸した扇動活動を展開し、反政府派と支持派で国内世論は真っ二つに割れる事態となった。 2018年の大統領選で右派勢力はテメル後継として元軍人のボルソナロを指名した。だが、ルラ人気は根強く、支持率調査ではボルソナロの15%に対して、ルラは31%と圧倒的な強さを見せていた。ところが選挙の6カ月前、最高裁はルラの控訴を根拠なく棄却し、法令によって彼を大統領選レースから引きずり降ろした。 その後、最高裁はルラに対し、汚職とマネーロンダリングの罪などで禁固12年1カ月の有罪判決を下したが、確たる物的証拠はなく、しかも捜査を担当したセルジオ・モロ検事が最高裁判事(裁判長)も兼務するという極めて不公正な裁判となった。 ちなみに最高裁判事も兼務したモロ検事は、その後のボルソナロ政権で法務大臣に任命され、その後に就職した米国の法律事務所「アルヴァレス&マーサル」社から1年間で360万レアル(約7800万円)の報酬を受けとっていたことが物議を醸した。 また、米独立系メディア「インターセプト」(グレン・グリーンウォルド主宰)が入手・公開した会話記録では、米オバマ政権下の司法省と「カー・ウォッシュ捜査」を担当した検察官グループとモロ最高裁判事の間で、ルラの大統領選出馬を阻止する政治的取引がおこなわれていたことが明らかになっている。 裁判所出頭に応じたルラは、「不当判決」を主張して集まった何万人もの支持者を前に、「私は正義を信じる。誰も私を止めることはできない。この国には何百万人ものルラ、ブオロ、ジルマ(ルセフ)がいるのだから。たとえ私が心臓発作を起こしても失望には値しない。私の心臓は皆のなかで鼓動を打ち続けるだろう。いかなる権力も春の訪れを止めることはできない」と演説し、惜しまれながら囚われの身となった。 ボルソナロの失政 シカゴ学派招き自由化加速 2019年1月に発足したボルソナロ政権は、ルラが目指した国家主導の「大きな政府」から、経済を自由化市場に委ねる「小さな政府」への政策転換を表明した。 財務大臣のパウロ・ゲデスは、投資ファンド経営の経歴を持ち、1970年代に米シカゴ大に留学し、新自由主義やショック・ドクトリン(惨事便乗型資本主義)を唱えたミルトン・フリードマンに師事。同じく「シカゴ・ボーイズ」とよばれるシカゴ学派の学者を経済顧問団として招いたピノチェト軍事独裁政権のチリに渡って教鞭をとり、大臣就任後は「過剰な産業保護がブラジルの成長を阻害した」として、外資や財界の要求に従い急進的な市場自由化を推進した。 ボルソナロ政権は、国営企業の民営化に着手し、鉄道や空港などの公共インフラの運営権を民間コンセッションによって大手企業に売却。さらに、国営石油企業ペトロブラスや、油田開発や生産分与をおこなう国営企業PPSA、エレクトロブラス(電力公社)、コヘイオ(郵便電信公社)など主要な国営企業の民営化を計画した。 またトランプを模倣して「銃を持つ自由」を主張し、銃規制を緩和(個人が所有できる銃や弾薬の数を拡大)。コロナ禍では「ただの風邪」として感染対策をとらず、国内の累計死者数は67万人(米国に次ぐ世界2位)に達した。犠牲になった多くが病院にもかかれない貧困層だった。 このような失政や「国家私物化」の疑惑もとり沙汰されるなかで、国内ではルラの釈放を望む声が高まり、2019年11月、最高裁が「控訴を保留したままの投獄は違法」との判決を下し、ルラは釈放される。最高裁はモロ判事がルラに対して起こした裁判の判決を「適切な管轄権を持たない裁判所によって裁かれたもの」と結論付け、すべて無効とした。 ルラは再び国内で深刻化した貧困撲滅のため、「歳出上限」を撤廃し、ボルサ・ファミリアの復活、富裕層への課税強化や配当税などの累進性強化を掲げて大統領選に出馬した【表参照】。 分断仕掛けるも 結束強める非西側諸国 同時に、中南米各地で新自由主義からの脱却を目指す「左派ドミノ」といわれる現象が始まったことも無関係ではない。これによって新自由主義が包囲されていった。 南米でもっとも早く新自由主義の刃に切り刻まれ、外資企業の草刈り場となったチリでは2021年11月の大統領選で35歳のガブリエル・ボリッチが勝利し、ピノチェトによる軍事クーデターから半世紀ぶりに左派政権が復活した。 ペルーでは同年4月の大統領選で、反新自由主義を唱えたペドロ・カスティジョ(ペルー・リブレ党)が勝利。ボリビアでは2020年の大統領選で、富裕層への課税や低所得層への富の再配分を訴えたルイス・アルセ(社会主義運動党)が勝利した。同国では社会主義政策を進めたモラレス大統領が軍事クーデターによって国外に追われた後、国営企業が次々に民営化され、とくに水道事業を独占した米ベクトル社が貧困層からも高額の料金を絞り上げたため、外資による略奪への国民の怒りが極限に達していた。 同じくアルゼンチン(2019年)、メキシコ(2018年)、ホンジュラス(2021年)、そして「中南米の優等生」といわれ最も親米国であったコロンビア(2022年)でも左派が政権を奪取し、米国直結の新自由主義政策による不平等な「自由競争」によって社会を食い荒らされてきた中南米全域でドミノ倒しのように転換が進んだ。これらの趨勢が、ブラジル国内の力関係に与えた影響も大きい。 世界的に見ても、米国の覇権が弱体化するなかで中国を中心にした新興国の経済圏BRICS(中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカ)が、ドル支配の外側で新たな経済連携を進めた。 これら5カ国だけで世界人口の4割強を占めるが、今年6月に開かれた拡大会議に参加した13カ国(アルジェリア、アルゼンチン、エジプト、インドネシア、イラン、カザフスタン、セネガル、ウズベキスタン、カンボジア、エチオピア、フィジー、マレーシア、タイ)を含めると世界人口の過半数に達する【グラフ参照】。 さらにウクライナ戦争を契機にして、米国主導のG7が呼びかけた対ロシア制裁に参加しなかった「非西側諸国」を含めると、BRICS陣営は人類の85%を占めることになる。 BRICSは、G7のように軍事同盟を基本にして「戦争ビジネス」に明け暮れる連携ではなく、あくまで平和友好を基調とした経済連携であることを特徴としており、西側諸国の同調圧力に対しても独自のスタンスをとり、ウクライナ戦争を機にした対ロ制裁包囲網の外側で、米国の世界支配にとって最大の武器であるドルを介さない新たな決済システムの構築を進めている。それは逆にドルが世界市場から締め出されることを意味する。双子の赤字を抱えながらも、基軸通貨であることを強みに世界中に大量のドルを過剰供給し、常にインフレを創出してきた米国にとって極めて「不都合な連携」といえる。 ブラジルでは、南米諸国と歩調を合わせて、ボルソナロ政権でも対ロ制裁には反対の立場をとってきた。新大統領となったルラも、ロシアとウクライナ双方の対話を促進させて早期停戦を促すことを主張。他の南米諸国と同様にG7による武器供給や対ロ制裁を批判しており、「特別作戦を開始したプーチン大統領は間違っていたが、欧米側も多くの過ちを犯している」とのべている。 米国にとって最後の牙城だったブラジルでの左派奪権は「反米バックラッシュ」の総仕上げとなり、中南米は結束を強め、米国による政治介入や欧米資本による略奪を拒み、地域に根ざした独自の経済的繁栄の道を、新たな経済連携とともに進めていくことになる。それは米国が中南米を実験場にして半世紀にわたって世界に拡大してきた新自由主義が終焉したことを意味し、「新自由主義は南米で始まり、南米で終わる」の言葉通り、中南米で新自由主義は墓場に叩き込まれた。 焦燥を深める米国がアジアを主戦場に新たな冷戦を煽るなか、周回遅れで新自由主義政策が進行する日本の進路を考えるうえでも、示唆に富む重要な歴史的局面を迎えているといえる。
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