>>3 生産者補助金(直接支払い)は消費者補助金【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】|食料・農業問題 本質と裏側|コラム|JAcom 農業協同組合新聞 https://www.jacom.or.jp/column/2021/10/211014-54525.php まず、農産物の輸出大国でもあるカナダは農業保護大国でもあることは認識してもらいたい(詳しくは拙著『農業消滅』、138ページ)。 筆者が30年近く前にカナダ政府を訪問したとき、農業省のプライス課長が話してくれた説明にはなるほどと思うことがいくつもあった。そのひとつは、米国もカナダもWTO(世界貿易機関)に農業保護額を「過少申告」しているという話だ。これは今回は割愛する。 もうひとつが今回の主題である。それは、農家への直接支払いというのは生産者のための補助金ではなく、消費者補助金なのだという話だ。なぜか。農産物が製造業のようにコスト見合いで価格を決めると、人の命にかかわる必需財が高くて買えない人が出るのは避けなくてはならないから、それなりに安く提供してもらうために補助金が必要になる。これは消費者を助けるための補助金を生産者に払っているわけだから、消費者はちゃんと理解して払わなければいけないのだという論理である(拙著『農業消滅』、188ページ)。 フランスの具体例 こうした補助金は欧米では顕著である。米国については、日本のコメの現状で言うと、生産費(目標価格)15,000円と市場価格9,000と円の差額の100%を政府が補填(ほてん)する「不足払い」がある。フランスについては、石井圭一教授が作成した資料が如実に物語る。訪米の主食といえる麦作と酪農の実態である。まず、130haとかなり大規模な麦作経営の収支を総括すると、 販売収入 124,756 ユーロ 費用 141,279 差し引き ▲16,523 補助金 28,725 所得 12,202 所得に対する補助金率28,725/12,202=235% つまり、市場の販売収入では費用がまかなえない状態になっているが、それを補助金で埋めて、その残りが所得になっている。 -------- 【記事一覧(隔週木曜連載)】 【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】|JAcom 農業協同組合新聞 https://www.jacom.or.jp/column/cat647/ 昨日配信の記事 【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「食料危機」の今、どうして「農業潰し」なのか|JAcom 農業協同組合新聞 https://www.jacom.or.jp/column/2022/03/220317-57595.php 「農業消滅」鈴木宣弘教授のツイッターもものすごい盛り上がり https://twitter.com/tetsuginsuzuki
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