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※2021年12月20日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年12月20日 日刊ゲンダイ2面
【安倍元首相に断罪を】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) December 20, 2021
粉飾アベノミクスの末 いよいよ「日銀出口なし」
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/WZQyxturCP
※文字起こし
もはや存在自体が「国難」だ。自民党最大派閥の“ボス”に収まってから1カ月余り。安倍元首相が妄言を連発だ。
15日の講演では、赤字国債は国の借金ではなく「背負っているのは日本銀行」なる“珍説”を披露。〈借金まみれの日本の財政は破綻してタイタニック号のように氷山にぶつかって沈没する〉と非難した財務省の矢野次官の月刊「文芸春秋」への寄稿文に反論する形で、以下の子どもじみた屁理屈を繰り出した。
「日本がタイタニック号だったら、タイタニック号が出す国債を買う人はいない。ちゃんと売れている」
「赤字国債のほとんどは市場を通じて日本銀行に買ってもらった。決して孫の代に(借金を)背負わせているわけではなく、借金を全部背負っているのは日本銀行だ」
「日本銀行は国の子会社。5割は政府が株を持っているから、連結決算上は債務ではないという考え方も成立する」
いやいや、そんな考え方は通用しない。“子会社”に借金をツケ回すなんて発想は、バブル崩壊期に横行した「飛ばし」の手口と同じ。それで山一証券は倒産した。
曲がりなりにも歴代最も長く首相を務めた安倍が「中央銀行の独立性」をこうもアケスケに否定すれば、円の信認にも関わる。打ち出の小づちのごとく日銀を私物化したアベノミクスの本質がよ〜く表れている。
「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事」との発言も、軍事力で他国を威嚇するあおり行為だ。1日の台湾シンクタンクのオンライン講演でこの妄言が飛び出すや、中国政府は猛反発。すると、安倍は3日に「はっきり考えを言うことが衝突を防ぐことにつながる。これからも言うべきことは言う」と開き直っただけでは済まない。
13日にはBS番組で「米艦に攻撃があった時には、集団的自衛権の行使もできる『存立危機事態』になる可能性がある」「ここで何か有事があれば『重要影響事態』になるのは間違いない」と安保法制に絡めて、さらに踏み込んでみせた。
中国の海洋進出や人権問題などを背景に米中間でキナくささが増す今こそ、衝突が起きないよう外交努力を尽くすのが政治家の務めだ。解釈改憲で戦争準備の法律を作り、補正予算案でも防衛費は青天井。「敵国」を定めて威嚇や挑発をエスカレートさせた先に何があるのか。歴史の教訓を学ばない、学ぼうとしない安倍の無責任な言動は危険極まりない。
国民に恭順の意を示し、蟄居暮らしがスジ |
なぜ、この男がいまだ派閥の会長に収まり、妄言を発信し続けるのか。8年以上もの首相在任中には「モリカケ桜」は言うに及ばず、拉致問題も「最重要課題」「わたしの内閣の一丁目一番地」と声高に叫ぶだけで、1ミリも進展しなかった。無為に月日を浪費した間に、拉致被害者である横田めぐみさんの父・滋さんに続き、18日には拉致被害者家族会前代表の飯塚繁雄さんも無念のうちに亡くなられた。
飯塚さんの死去を受け、安倍は自身のツイッターに〈期待に応えられず、申し訳ない気持ちでいっぱいだ〉とつづったが、被害者家族の高齢化が進む中、拉致解決は一刻の猶予も許されない。それこそ、北朝鮮と「血の同盟」を結ぶ中国に協力を仰いででも好機を掴むべきだろう。いたずらに中国を刺激し、その道を閉ざすとは、どうしようもない視野狭窄だ。
自殺した近畿財務局の元職員・赤木俊夫さんの妻が真相解明を求めた訴訟で国が一転、事前通知のない「認諾」という奇策を取って賠償に応じたのも、本をただせば安倍発言にたどり着く。
野党議員の森友追及にカッとなり、「私や妻が関わっていれば、首相も国会議員も辞める」と答弁したせいで、財務省は公文書改ざんを迫られ、赤木さんを死に追い込んだのではなかったか。その延長線上に「最後は金目」で真相究明を阻み、訴訟を強制終了する卑怯な手口がある。
それを思えば安倍は発言を控え、東京・富ケ谷の豪邸に蟄居すべきだ。数々の妄言には「恥を知れ」というほかない。
富裕層は潤っても庶民は「昇給ゼロ」状態
安倍が自慢してきた「アベノミクスの成果」の怪しさも、いよいよ決定的だ。2018年末に不正が発覚した厚労省の「毎月勤労統計調査」に続き、先週は国交省の「建設工事受注動態統計」の書き換え・二重計上の実態が判明。いずれもGDP算出に反映される国の基幹統計だ。
「政府はGDPに影響が及ぶ可能性は『軽微』と言いますが、基幹統計が2つもカサ上げされたインパクトは大。影響が『軽微』であるはずもなく、他の統計だって怪しいと海外から不信の目で見られるのは当然です。どの程度、GDPに影響を与えたのか、政府は説明を尽くすべき。2つの基幹統計を書き換えた時期は、安倍元首相が『GDP600兆円』の目標を口にした頃とも重なり、元首相の意図を忖度した改ざんとみられても仕方ありません」(経済評論家・斎藤満氏)
結局、粉飾アベノミクスと禁断の異次元緩和がもたらしたのは株高のみ。それも、実体経済を反映せず官製相場ではね上げたに過ぎない。市場にあふれたマネーが設備投資や人件費に回る好循環は、安倍の首相在任中から今の今まで一度も生じていない。
輸出産業が巨額の利益を上げ、企業の内部留保が12年度の304兆円から20年度には484兆円まで膨らんでも、下請けや低所得者に恩恵は及ばない。実質賃金は低下を続け、とうとう15年には名目の平均賃金まで韓国に抜かれてしまった。
何せ、日本の平均賃金はOECD加盟35カ国のうち22位まで順位を下げた。過去20年間の上昇率はたった0.4%。富裕層が株高で潤っても、大半の労働者は「昇給ゼロ」の状態だ。「ちっとも給与が上がらない」と嘆き、格差を実感する人々が増えるわけである。
世界的インフレ下に物価目標2%を続ける愚
「安倍元首相が掲げた『トリクルダウン』はマヤカシでした。国民の多くが成長の果実を得られず、生活実感が悪化しているのが何よりの証拠です。かつての日本経済は旺盛な内需が支えていましたが、完全に衰退。長年『全体の6割前後』とされたGDPに占める個人消費の割合も、今や5割を切りそう。その問題意識から岸田首相も一度は『分配なくして成長なし』『新自由主義からの転換』を掲げたのに、軌道修正。明らかに失敗したアベノミクスをなぜ継承するのか、理解に苦しみます」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
前出の斎藤満氏はこう指摘する。
「コロナ禍に各国で相次いだ金融緩和策や資源価格の高騰などで、世界規模のインフレが吹き荒れる中、米FRBは緩和策終了を3カ月前倒し。同時に来年は利上げを3回行う想定を示し、インフレ退治の姿勢を鮮明にしました。利上げすれば、日米の金利差拡大でドル買い円売りが進み、円安となって輸入コストはますます膨らむ。収益を圧迫される企業が増えたり、賃上げもないまま、生活困窮者に値上げラッシュが襲い掛かってくるのです。ところが、岸田内閣と日銀は世界的インフレ下でも『消費者物価指数2%』のインフレ目標を下ろさず、国債の利払い負担軽減を求める財務省の言いなり。巨額補正の赤字国債乱発なら、なおさらで日銀は出口なし。アベノミクスの自縄自縛に陥り、不況下の物価高騰『スタグフレーション』へと一直線です」
19日はなぜか「安倍逮捕で新年迎えたい」とのハッシュタグがトレンド入りした。「安倍元首相に断罪を」は多くの国民の切なる願いのようだ。
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