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空港検疫をなぜ「抗原検査」から「PCR検査」に変更しないのか どうする、どうなる「日本の医」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/298657
2021/12/14 日刊ゲンダイ
国際線で成田空港に到着した人たち(30日)/(C)共同通信社
オミクロン株の感染が世界中で急拡大している。本稿では水際対策について論じたい。
11月27日、日本政府は南アフリカと周辺5カ国からの入国者に10日間の待機措置を課し、30日には、全ての外国人の入国を停止するなど対応は迅速かつ厳格だった。ここまで厳格な対応をしているのは日本だけだ。国民は、岸田政権の対応を強く支持している。12月6日に発表された読売新聞の全国世論調査では、水際対策を「評価する」が89%だ。
私は、この状況に危機感を抱く。正確な情報が国民の間で共有されないまま、強硬策が「独り歩き」しているからだ。たしかに、海外との交流を完全に遮断すれば、オミクロン株は入ってこない。原理的には最も有効な水際対策だ。ところが、このような対策を取っている先進国はない。
なぜ、日本以外は渡航禁止措置を取らないのか。それは、国内で既にオミクロン株の拡大が確認されているからだ。12月6日現在、オミクロン株が占める割合は米14%、カナダ10%、独2.3%、仏0.3%、伊0.2%、英0.1%だ。急速に拡散している。この状況で、大きな経済ダメージと引き換えに、海外渡航を禁止することは合理的とは言いがたい。
現在の日本にとって重要なことは、最小限の経済的ダメージで、一人でも多くのオミクロン株の流入を止めることだ。日本がまずやるべきは、空港での検査を抗原検査からPCR検査に変更することだ。厚労省は「PCRと同程度の感度と特異度があることと、現場の負担を考慮した」と説明しているが、これは科学的に正しくない。
国立感染症研究所が発行する「病原微生物検出情報」の6月号には、神戸市健康科学研究所の論文が掲載され、「抗原定量法ではおおむね500copyが検出限界」「ウイルス保有量が少ない患者を見逃す可能性に留意」と論じている。
さらに、米サーモフィッシャーサイエンティフィック社(サ社)が販売するPCR検査キットを用いれば、1回の検査でオミクロン株の検出が可能だ。検査に要する時間は1.5時間まで短縮でき、空港での利用も可能だ。
このことは厚労省も認識している。11月28日に国立感染症研究所が発表した「SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統について(第2報)」の中で、「オミクロン株は国内で現在使用されるSARS-CoV-2PCR診断キット(筆者注=サ社キットのこと)では検出可能と考えられる」と明記している。ところが、厚労省は、このキットを用いない。
このことは由々しき問題だ。サ社のキットを用いれば、水際対策だけでなく、国内でのオミクロン株の流行状況がわかる。コロナ対策の基本は検査だ。PCR検査体制の強化が喫緊の課題である。
上昌広 医療ガバナンス研究所 理事長
1968年兵庫県生まれ。内科医。東京大学医学部卒。虎の門病院や国立がん研究センター中央病院で臨床研究に従事。2005年から16年まで東京大学医科学研究所で、先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究。16年から現職。
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