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迷走を重ねる10万円給付 神奈川県は「クーポン支給」希望自治体ゼロの衝撃
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/298609
2021/12/11 日刊ゲンダイ
「膨大なムダ」と指摘(C)共同通信社
「県内の自治体の中で、クーポンでの支給を求めているところはない」
10日、神奈川県の黒岩知事が衝撃の調査結果を明かした。迷走続きの18歳以下への10万円相当の給付について、県内33の市町村に意見を聞いたところ、10日までに回答があった16の市と町は、すべて現金での支給を希望。クーポン支給を希望する自治体はゼロだった。
黒岩知事は「クーポンで支給するために膨大な経費と労力をかけるのはムダではないか」と指摘。確かに紙のクーポン券を配るなら、印刷や利用可能な店舗の公募、使える店や商品・サービスの周知徹底……など現金給付に比べて手続きが煩雑だ。政府に具体的な制度設計と事務作業を丸投げされた自治体は「来春までの発行に間に合わない」と悲鳴を上げている。
内閣官房「新学期は7月まで」のフザけた見解
そのためか、9日の立憲民主党の会合で、内閣官房の担当者からフザけた見解が飛び出した。
岸田首相らはクーポン給付の時期を「来年春の卒業、入学、新学期に向けて」と説明してきたが、担当者は「新学期は一般的に4〜7月を指す。1学期だ」と断定。「迅速に現金5万円を給付するものとは考え方が違っている」と強調し、残り5万円分のクーポンは遅ければ7月ごろまでの給付を想定していることを表明したのだ。
これじゃあ、自治体によっては入学や新学期の前までにクーポンが届かず、学用品の購入などに使えない人も出てくる。最も入り用な時期に間に合わなければ、何のために補正予算案に967億円もの事務費用を計上し、使途を教育や子育てに限定するのか意味不明だ。新宿区が都内で初めて全額現金給付の方針を固めたが、その意向を打ち出す自治体が相次ぐのも当然である。
それでも岸田首相は、ご自慢の「聞く力」を発揮しようとしない。10日発行の日刊ゲンダイは、独自判断で全額現金に切り替えた自治体にはクーポン分の財源措置を与えず、カネを負担させる“兵糧攻め”を詳報した。この政権はクーポンを強制しているのも同然だ。
兵糧攻めの次は“牛歩戦術”
自治体イジメはこれだけではない。大阪市に続き、10日は大阪府箕面市が実現を目指した年内の全額一括給付を断念。現金給付への切り替えを認めるのはどんなケースか? 独自判断で現金給付に切り替えた場合、何らかのペナルティーを科すのか? 政府がその運用基準を示すのは補正予算案の成立後となったため、箕面市は年内の全額給付は間に合わないと判断した。
兵糧攻めに続き、今度は“牛歩戦術”。そこまでして岸田首相がクーポンにこだわる理由もサッパリ分からない。
「クーポン配布は『現金だと遊興費に使う親もいる』と、国民を信頼していない証拠です。立憲は自治体の判断で一括現金給付も可能とする法案を提出しましたが、これ以上の混乱を避けるには、自治体に選択の自由を与えるしかない。そうすれば自然と全額現金の流れとなり、“中抜き”も防げる。国から独立した公共団体が住民の意思に基づき行う『地方自治の本旨』にもかないます」(高千穂大教授の五野井郁夫氏=国際政治学)
いい加減、岸田ノートに「誰もクーポンを望まない」と記すべきだ。
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