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※2021年12月6日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年12月6日 日刊ゲンダイ2面
【れにしても反中、反共の嫌な世情】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) December 6, 2021
だ安倍晋三とシンパがしゃしゃり出てくる醜悪
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/zNkOU1wlBD
※文字起こし
キナくさい動きだ。安倍元首相が「台湾有事」についての発言を繰り返して、日中間の緊張を高めていることである。
1日に台湾のシンクタンクが主催する会合にオンライン参加で講演。中国が台湾に侵攻するなどの事態を念頭に「台湾有事は日本有事だ。すなわち日米同盟の有事でもあり、この点を習近平国家主席は見誤るべきではない」と中国を牽制したのである。
同日に行った日経新聞のインタビュー(2日掲載)でも、「台湾有事は日米の有事」と発言。「抑止力が弱いと相手にとって武力行使の誘因になる。抑止力とは打撃力であり反撃能力でもある。相手が脅威に思うことが抑止力となる」と持論を展開した。
台湾をめぐる安倍発言に、中国は「内政干渉」だと猛反発だが、これに対しても安倍は3日に出演したインターネット番組で「はっきり考えを言うことが衝突を防ぐことにつながる。これからも言うべきことは言う」と強気で反論。本当に衝突を防げるのならいいが、反中をあおる安倍では火に油を注ぐことになりかねない。
思い返してみれば、先月上旬、岸田首相が林芳正外相を起用した際、安倍は林が日中友好議員連盟の会長だったことから「対中関係で国際社会に間違ったメッセージを与えかねない」と難色を示した。
これが、対中政策で安倍がしゃしゃり出てくるのろしだったのか。その林が、中国の外相との電話会談で「訪中」の招請を受けたことを明らかにすると、安倍シンパが一斉に反発。自民党の外交部会で佐藤正久部会長が「間違ったメッセージを海外に出すことになる」とクギを刺した。
新疆ウイグル自治区や香港などでの人権問題を理由に欧米が検討しているとされる来年2月の北京冬季五輪の「外交ボイコット」についても安倍シンパは勇ましい。岸田が「日本は日本の立場で物事を考えたい」と発言していることを“弱腰”と捉え、3日には、安倍シンパの保守系議員でつくる「日本の尊厳と国益を護る会」が「外交ボイコット」を政府に求める方針を決めている。代表の青山繁晴参院議員は「北京五輪に日本の外交使節団を派遣すれば人権弾圧を容認することになる」「対中配慮が過ぎれば外交の体をなさない。現在の首相の姿勢は間違いだ」とまで言ってのけた。
議論なきワッショイの危うさ
中国の人権弾圧は論外として、物騒な連中がただ声高に対中強硬論を唱えるのは危うい。
地元・山口県で親の代からの政敵の林が外相となり、「外交のアベ」が忘れ去られていくことが我慢ならないのか、安倍の過剰なまでの対中強硬発言には、自らの存在感を誇示したい焦りも見える。永田町では「安倍さんは昵懇の仲の医療法人理事長が起訴された日大の背任事件の行方を懸念している」なんて声もあるが、とにかくシャカリキなのである。
こうした安倍やシンパの“圧力”に対し、岸田は今のところ抑制が利いているが、バランス重視のご用聞き政治家だから不安だ。
岸田は自衛隊の観閲式で「いわゆる敵基地攻撃能力の保有も含め、あらゆる選択肢を排除せず検討する」と安倍が乗り移ったかのような演説をしていたし、防衛費は、6日召集の臨時国会で審議される補正予算案と今年度の当初予算を合わせ初の6兆円超えである。米国が強める対中包囲網に追随する形で、長期的展望のないまま防衛費が膨張していく。
政治評論家の森田実氏が言う。
「中国を少しでも擁護しようものなら袋叩きに遭うのが昨今です。『中国と喧嘩をしてはダメだ』という人は自民党はおろか、野党やマスコミからもいなくなってしまいました。親中派の最後のひとりだった二階元幹事長も徹底的に攻撃されましたからね。安倍元首相の突出した発言は米国の後押しがあってのものでしょう。米軍司令官が『台湾への脅威は今後、6年以内に明白になるだろう』と発言しているように、米国は米中戦争を視野に入れている。しかし、その時、米国は実際の軍事行動を日本や台湾、豪州にやらせるのではないか。日本は米国の“代理戦争”をさせられることになるのに、そうした議論のないまま、ワッショイワッショイで進んでいくことに、戦争前夜の危うさを覚えます」
「共産党は恐ろしい」という印象操作に大メディアも加担 |
立憲民主党が共産党と連携した「野党共闘」に対する猛烈な批判も嫌な風潮だ。
衆院選では、立憲は共産など野党で候補者を一本化したことで、小選挙区の議席数を増やしているものの、比例を合わせた全体では議席減だった。大メディアは、立憲が共産党と「限定的な閣外協力」に踏み込んだ「共闘」に原因があったとの論調で一色である。
選挙期間中に自民党の甘利幹事長(当時)は、「自由民主主義の思想で運営される政権と、共産主義が初めて入ってくる政権とどちらを選ぶのかという政権選択だ」と国民を脅すかのような主張を展開した。一党独裁の中国政府を連想させるいわゆる共産主義と、日本の共産党はイコールではないのに、中国共産党と日本共産党を一緒くたにして「共産党は恐ろしい」という印象操作だった。そうした空気を選挙後は大メディアが引き継いでいるかのようなのである。
芥川賞作家の中村文則氏が毎日新聞(2日)のコラムで立憲と共産の共闘についてこう書いていた。
<日本共産党とは、天皇制や自衛隊の考え方が違う、という意見もある。だが彼らはこれらの判断を実は国民の総意に委ねており、彼らの意思より国民の判断を上位に置いている。なぜなら、マルクス・エンゲルスの「共産党宣言」を読んだりするとわかる通り、外国の共産党が間違っているだけで、本来の共産主義は民主主義で、国民主体である>
<野党共闘を嫌う理由の「共産党アレルギー」は言い訳で、本当はひそかに与党を利したいのではないか。共産党へのバッシングが何だか急にひどくなったが、昔の日本もヒトラーも、共産党を弾圧するところから全体主義を始めている。歴史は繰り返すのだろう>
国民感情を利用し、戦争へ駆り立て
かの時代とソックリなのは、反中に反共が加わり、異様な国民感情が形成される恐れがあることだ。
「暴支膺懲」は、日中戦争(支那事変)における大日本帝国陸軍のスローガンだった。
「横暴な中国(支那)を懲らしめよ」という意味で、大本営はこのスローガンを「鬼畜米英」とともに太平洋戦争終結まで使用し、国民の戦闘精神を鼓舞するために利用したのである。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「当時の中国は国民党政府であり、共産党政府ではありませんが、最近の反中・反共の世情は、当時を彷彿とさせるものがあります。米国はクワッド(日米豪印)の枠組みで対中戦争の軍事的体制づくりを始めていますが、国民をその気にさせるには、戦前の中国敵視やアジア人差別の感情が醸成されていくことは都合がいいのです。そして、戦争前夜に行われたのが赤狩りであり、反共攻撃でした。衆院選での野党共闘批判は、そうした下地づくりにも見えます。80年前の太平洋戦争開戦時、当時の敵であった米国に対する『真珠湾攻撃』を国民は『よくぞやってくれた』と拍手喝采で歓迎した。今の敵は中国ですが、今回も国民感情を利用して、戦争に駆り立てていくシステムづくりが行われているように思います」
米国に要求されるがままに防衛費が青天井になっていくことが、本当に抑止力になるのか。日米同盟やクワッドの包囲網で圧力をかけ続ければ、中国の態度が変わるのか。日本中が「反中」「反共」の空気に包まれてしまう前に、平和を望むマトモな国民は冷静さを取り戻す必要がある。本当に歴史が繰り返されてしまう前に。
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