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岸田政府よ、何が成長につながる経済対策だ 速やかに庶民に配ることだ 井筒和幸の「怒怒哀楽」劇場
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/297952
2021/11/27 日刊ゲンダイ
毎週書いているが、岸田政府はまだ給付金を配れないでいる。与党同士で世帯の年収が夫婦共働きで合算なら18歳以下の子供にどうだこうだとバカな問答ばかりしている。条件などどうでもいいのだ。子供がいようがいまいが、ひとり親でも共働きでも足して1000万以下なら全世帯に配ったらどうだ。
庶民は半殺しにされたまま、怒りの声も上げることなく、テレワークに慣らされて飲みに行くのも忘れている。働き口を失った者は貯金を下ろすか、風俗に走るか、借金をするか、どこかに居候するか、日々、ため息をついている。
政府よ、何が成長につながる経済対策だ。コロナ予算が22兆円も使われず残っているならすぐにそこから回せるだろうが。生活に困窮する者に一日も早くカネを配るのは急務だろ。株価上昇はどうでもいい。議員の通信交通費もどうでもいい。速やかに庶民に配ることだ。若者にデモが起きないのも不思議だ。恐ろしくおとなしい。未来に向かって叫ぶ余裕もない。知性の反乱も起きない。内向意識しかない貧しい国だとつくづく思う。
一方、金持ちの企業家が100億円払ってロケットで宇宙に飛んで「地球を眺めてみたい」とはしゃいでいた。100億円あれば世界の人たち、特に日本の子供らに見せられる歴史映画が20本は作れるのにもったいないなと思った。日本皇軍が満州とモンゴル国境でソ連軍と無残な戦争をしてしまった「ノモンハン事件」の実相を描くのもいいし、戦後の新憲法を作っている最中だった昭和21年の焼け跡だらけの上野を舞台にした戦争孤児たちのたくましさを描く話もいいし、特攻命令に従わず、反抗して生還した元兵士と進駐米軍兵と売春婦が三つ巴で恋の火花を散らすコメディーも面白いし、題材を思い浮かべるだけでも楽しいものだ。
先日、新幹線の中でも映画をあれこれ夢想しながら、名古屋に憲法9条の講演に行った。岸田政府も安倍から引き継がされた改変をもくろんでいるが、自衛隊を「国防軍」に変え、今より強い軍隊にして、台湾にでも向かわせるつもりか。非正規職もないおとなしい若者はジョーカーモドキも含めて、お国のためと勘違いして給料も良いからと入隊しそうだ。韓国軍の若い兵士がアフガンに行かされたように。
帰路はつまらんことを考えるより、久しぶりに駅弁でもと「ウナギ弁当」を買い込んだ。日本産ウナギは2000円もするので諦めて中国産にした。が、味も舌触りも10年前に比べたら断然良く、ゴムみたいに硬かった東京駅売りのウナギの悪口を何かの記事に書いたことを思い出し、一人笑いした。ウナギ弁当も進歩したものだ。
「あんなクソまずいのはない」と書いたのをJRの誰かが読んだからかも。いや待て、今度のは名古屋駅売りだから違うか。次回は東京駅売りを試してみたくなった。不要不急の目的がまた一つ増えたのがうれしいよ。
井筒和幸 映画監督
1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。
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