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※2021年11月22日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年11月22日 日刊ゲンダイ2面
【この国の大メディアは一党独裁を望んでいる】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) November 22, 2021
まあ騒々しいこと 「立憲潰し」外野の雑音
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/ckWXiq0iRC
※文字起こし
〈共産と共闘 4氏曖昧〉〈対共産 踏み込まず〉〈4氏とも共産連携否定せず〉ーー。外野の雑音がかなり騒々しすぎやしないか。
30日の投開票日に向け、号砲が鳴った立憲民主党の代表選。名乗りを上げた逢坂誠二(62)、小川淳也(50)、泉健太(47)、西村智奈美(54)の衆院議員4人は19日、共同会見に臨んだが、その様子を伝える翌日の大新聞の見出しには冒頭の言葉が躍った。
記事の中身も来夏の参院選に向け、4人がそろって共産党を含めた「野党共闘」を維持する考えを示したことに、難クセをつけるような論調が目立つ。おいおい、待って欲しい。共産党との共闘がいつから代表選の争点になったのか。
無理やり争点をデッチ上げ、「歯切れが悪い」「共闘姿勢に差異が見えない」などと好き勝手にイチャモンを唱える大メディアの姿勢には、今さらながら唖然だ。
参院選の勝敗を大きく左右するのは全国に32ある1人区だ。バラバラで戦った2013年の1人区は野党が2勝29敗とボロ負けだった。少なくとも1人区で野党候補を一本化しなければ、自公与党を利するのは自明だ。
そんなことは大メディアだって百も承知なのに、さも4候補に「なぜ君は立共連携を白紙に戻さないのか」と迫るような記事ばかり。
読売新聞にいたっては、泉を支持する保守系議員の中に〈共闘路線見直しを明確に打ち出すべきだと主張する向きもある〉と紹介。党内にくすぶる共闘路線への不満をことさら強調し、あたかも「党内分裂」をあおっているようにもみえるのだ。
共産抜きなら政権交代は夢のまた夢
これでは、まるで「立憲潰し」。大メディアに乗せられて、アホな候補が「共産との共闘を見直す」と言い出さないか、心配になってくる。
「先の衆院選後に自民党幹部は『薄氷の勝利』と言ったそうですが、野党共闘が自公与党を追い込んだのは間違いない。だからこそ幹部たちがこぞって選挙中に『立憲共産党』などと口走ったのです。この国の支配層にとって『野党共闘』は最大の脅威。ケチをつける大メディアは、もはや庶民を代弁する気はないのでしょう。議会制民主主義を正常に機能させるには、まっとうな野党第1党が不可欠です。その存在を潰すかのような大メディアの論調は、一党独裁を望んでいるのではないかと疑いたくなります」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
前回の衆院選で共産党が候補を擁立し、今回は降ろした小選挙区のうち、野党(維新を除く)の勝利数は前回の18から今回は36と倍増した。また、野党(同)と与党の得票率差が5ポイント以内の接戦区も前回に比べて22も増加。共産党が候補を撤退させなければ、立憲は目もあてられないような大惨敗を喫したはずだ。
立憲は大メディアのネガティブキャンペーンに惑わされてはいけない。今回の代表選で問われるのは決して野党共闘の是非ではない。真の争点は、まず衆院選でガタガタになった党内をいかに立て直し、ドン底まで落ち込んだ党勢をいかに再生させるかだ。
いくら共闘が有効でも、野党第1党の政党支持率が1桁に低迷し、維新の後塵を拝しているようでは「政権交代」など夢のまた夢だ。この惨状を打破するには政権与党との政策の違いを明確に示し、「打倒自民」の理念を貫徹すべきだ。
現実直視の政治で自民との違いを打ち出せ |
「個人の候補は良いが、立憲はダメとの思いが国民の中にある」(逢坂)、「野党の仕事は、政権を厳しく検証することと、政権の受け皿として認知されることだが、後者が十分でなかった」(小川)、「新自由主義と戦う姿勢の政策の打ち出しも遅れた」(泉)、「どういう社会を目指しているか、有権者に届いていなかった」(西村)
4候補は衆院選で議席を減らした敗因をそう分析した。自民に代わる「政権の受け皿」を目指すなら、やるべきことは単純だ。巨大与党に立ち向かう覚悟を持ち、自公政権の手では不可能な「新たな社会のあり方」を具体的に示し、国民に「もう一つの日本は可能だ」という大きな物語を堂々と訴えればいい。
その意味では、岸田政権が過去最大の財政支出55.7兆円もの経済対策を決めたのは、絶好のチャンスだ。「規模ありき」で編成が進み、緊急性の低い国土強靱化や防衛力の強化にも計5兆円弱を投じるなど、ツッコミどころは満載だ。この好機を逃す手はない。
岸田肝いりの「新しい資本主義の起動」にも、全体の4割にあたる約20兆円もつぎ込む。その中身は脱炭素への投資やデジタル化、大学ファンドの拡充など、安倍・菅両政権が進めたアベノミクスの“成長戦略”の焼き直しだらけだ。
いったい「新しい資本主義」とは何なのか。そもそも経済対策はコロナ禍に苦しむ個人や事業者への支援を掲げたはずではなかったのか。どうやら岸田の「分配」は一時的な施し。“弱者に寄り添う”のはポーズに過ぎないようだ。
首をひねるほかない支出を反面教師にし、立憲は本来あるべき「賢い支出」を練り上げるしかない。とりわけ「不公平だ」と世論が反発しているのが、18歳以下の子どもに10万円相当を配る支援策の所得制限のラインだ。
線引きは「主たる生計者の年収が960万円未満」の世帯。世帯の合算ではなく、夫婦どちらかの年収の高い方となる。例えば一方が年収959万円、一方が103万円の共働き世帯は給付の対象だが、夫婦どちらかが年収1000万円、片方が無収入の世帯は対象から外れてしまう。
代表選を「原点回帰」の好機に
このバカげた線引きは、児童手当の仕組みを参考にしたものだ。
自民党内からも「世帯合算」を求める声が上がったが、岸田政権は変える気なし。世帯合算にすると児童手当のシステムを使えず、支給が遅れると言い訳するが、その児童手当制度の創設は1972年。今からほぼ半世紀前で、モーレツお父さんが家計を支えるのが当然とされた時代だ。
当時は専業主婦世帯が多かったため、世帯の中で最も多い者の所得で手当が判定されることになったという。時代は変わり、とうに90年代の半ばに専業主婦世帯と共働き世帯の数が逆転。今や共働き率は6割を超え、専業主婦世帯の2倍以上になっている。
それなのに、児童手当の「モデル家庭」が昭和の高度経済成長期から変わっていないとは、時代錯誤も甚だしい。「世帯合算」を求める今のニーズに応えられるわけがない。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言った。
「こうした時代に即さない『古い政治』の残滓を掘り起こすのが、立憲の務めです。家父長制の日本を『美しい国』と考える重鎮が中枢にいる限り、自民党では改められっこない。バブル崩壊以降、共働きでなければ子育てができず、不安定な非正規雇用では結婚すら諦めざるを得ない人もいる。格差社会の現実を恐らく自民党は理解できていない。困窮世帯でも子どもがいなかったり、19歳以上だと10万円相当の支給の枠から外れるのに、手を差し伸べようとしない“棄民政策”がその証拠です。岸田首相が検討を指示した敵基地攻撃能力の保有など、安全保障面でも自民は時代遅れが目立ちます。立憲が自民との違いをアピールするには、今の時代の国民生活や現実に即した政策をバンバン打ち出せばいい。09年に政権交代を果たした当時の『国民の生活が第一』の理念に、今こそ立ち返るべきです」
自公の欺瞞政治はもうたくさんだ。立憲が代表選を「原点回帰」の機会とすれば、政権交代がいつでも起き得るという緊張感は、おのずと戻ってくるに違いない。
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