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※2021年11月13日 日刊ゲンダイ2面 紙面クリック拡大
大メディアが報じない 瀬戸内寂聴さん、晩年の痛烈安倍批判
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/297370
2021/11/13 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
作家の瀬戸内寂聴さんが9日に亡くなった。99歳だった。1922年、徳島市生まれ。東京女子大在学中の20歳の時、大学教師と結婚。中国で長女を出産。敗戦を北京で迎えている。1946年に帰国。25歳の時、夫の教え子と恋に落ちて出奔し、1950年に離婚、文筆活動をはじめている。
大新聞テレビはまったく報じていないが、晩年の寂聴さんは“アベ政治”を痛烈に批判していた。市民活動「アベ政治を許さない」の呼びかけ人にも名前を連ねていた。
日本の右傾化を推し進める安倍政権に、よほど強い怒りと危機感を持っていたのだろう。
7年前、本紙(2014年4月4日付)のインタビューでも、安倍批判を展開していた。ちょうど、安倍政権が「集団的自衛権の行使容認」に向けて突き進んでいる時だ。
<戦争を知っている人が安倍政権にはいないんじゃないですか>と語り、<戦争なんてすれば、国はなくなるんですよ。それなのに政治家は日本は永久に続くと思っている>と、日本を“戦争できる国”に変えようとしていることに憤っていた。
寂聴さんは、<あっという間に国って変わるんですよ>とも語っていた。
<当時もね、われわれ庶民にはまさか戦争が始まるという気持ちはなかったんですよ。のんきだったんです><真珠湾攻撃の日は女子大にいたんです。ちょうど翌日から学期試験で勉強していた。そうしたら、みんなが廊下を走ってきて「勝った」「勝った」と騒いでいる。私は明日は試験がなくなると思って「しめた」と思って寝ました。試験はちゃんとありましたけど、こうやって国民が知らない間に政府がどんどん、戦争に持っていく。そういうことがありうるんです>
リアルな戦争体験が原点
インタビューは、およそ30分間だった。淡々と話していたが、言葉には迫力があり、本気度が伝わってくるものだった。
寂聴さんの原点にあったのは、リアルな戦争体験だ。母親は防空壕の中で焼け死んだそうだ。当時、国会前のスピーチでもこう語っていた。
「1922年生まれの私は、いかに戦争がひどくて大変か身に染みている。戦争にいい戦争はない」「最近の日本の状況を見ておりますと、なんだか怖い戦争にどんどん近づいていくような気がいたします」
だからだろう。平和憲法に対する思いも強かった。本紙のインタビューでも、<日本にはせっかく、戦争しないという憲法があるんですよ。それを戦争できる憲法にしようとしているんですよ。米国から与えられた憲法だって言うけど、その憲法で戦後70年間、誰も戦死していないんです>と、日本の戦前回帰を懸念していた。
もうひとつ、寂聴さんが大事にしていたのが「自由」だ。「人間の幸福とは自由であること」と法話でも語っていた。異論を排し、この国を一色に染めようとしている“アベ政治”に対して、強い危惧を抱いていたに違いない。1932年生まれの政治評論家・森田実氏はこう言う。
「私は、瀬戸内さんの10歳下ですが、共感するところが多い。右翼政治家のなかには『民主主義を守るためには、正義の戦争も必要だ』などと訴える者もいますが、リアルな戦争を知らないのでしょう。いい戦争など絶対にない。私の10歳上の長兄は戦死している。瀬戸内さんの周囲でも亡くなった方は大勢いたはずです。もちろん、戦争がはじまったら自由などない。戦争を体験した者は、ほぼ全員、戦争に反対するはずです」
結局、憲法違反だと指摘された「集団的自衛権の行使」を容認する安保法案は、安倍政権の手によって強行成立してしまった。寂聴さんは、開戦前夜に似た雰囲気を感じ取ったに違いない。
「改憲」「軍拡」に一直線 |
この国の劣化を憂えていた寂聴さんは、本紙インタビューで<私はすぐ死ぬからどうでもいいけど、子供たちにこのまま、この国を渡して死ねない>とも語っていた。
あれからこの国は少しはマトモになったのだろうか。安倍晋三は消え去ったが、岸田政権が誕生し、ますます戦前回帰の動きに拍車がかかっているのが実態である。
リベラル集団である「宏池会」出身の岸田首相は、本来“改憲”や“軍拡”とは無縁のはずである。ところが、安倍元首相の支持を得るために、急ピッチで右旋回を進めている。
改憲については「自分の総裁任期のうちにメドをつけたい」と明言。憲法違反の疑いが強い「敵基地攻撃」まで容認するつもりだ。防衛省はきのう(12日)、「防衛力強化加速会議」なる物騒な名称の組織を新設し、敵基地攻撃能力の保有について議論を始めた。
防衛費も2倍にする方針だ。これまで防衛費は「GDP比1%以内」が不文律だったのに、「GDP比2%以上も念頭に増額を目指す」と政権公約に掲げている。
「宏池会」出身の歴代首相は、池田勇人も大平正芳も宮沢喜一も全員、戦争を嫌い、平和憲法を大切にしていた。
いまごろ、3人とも草葉の陰で激怒しているのではないか。
実際、岸田政権が進める「改憲」「防衛費2倍」「敵基地攻撃」の3点セットが実現したら、この国の形は完全に変わってしまう。
ヤバいのは、野党勢力が弱体化し、衆参とも改憲勢力が3分の2を超えていることだ。あっさり通ってしまう危険がある。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「恐らく、岸田首相には確固たる政治信念がないのだと思う。総裁選の時に掲げていた“令和版所得倍増”も、いつの間にか口にしなくなった。芯のない、こういうタイプが一番危ない。状況に流されてしまうからです。安倍元首相がやりたくてもやれなかったことを、代わりに全部やってしまう恐れがあります」
「大きな新聞は書きませんね」と嘆息
それにしても、情けないのは大メディアだ。晩年の寂聴さんは、あれほど日本の右傾化を危惧していたのに、訃報でそれについて詳細に報じたメディアはほとんどなかった。
寂聴さん本人も本紙に、大手メディアの報道姿勢について〈本当に大きな新聞はあまり書きませんね〉と嘆いていた。毎日新聞(15年6月12日付)のインタビューでも、集団的自衛権の行使容認に突き進む安倍政権について「どうしてみんなもっと早く立ち上がらないんですか! 新聞もあまり書かないでしょ」と憤っていた。
岸田政権が戦前回帰の動きを強めていることについても、ハト派の宏池会出身だから甘く見ているのか、ほとんど報じようとしない。
「大メディアの幹部は、安倍・菅政権で、首相と一緒に食事をするほど“親密”になってしまった。逆に圧力をかけられることも多く、権力に飼いならされている状態です。会見などでは、記者が首相に『○○総理』『お疲れさまです』と、恭しく呼びかけているのだから情けない。権力と対峙する姿勢があれば、訃報を伝えるとき、瀬戸内さんの“アベ政治”に対するメッセージにも焦点を当てたはずです」(本澤二郎氏=前出)
「聞く力」を自慢する岸田首相は、寂聴さんのメッセージに耳を傾けるべきだ。
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