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維新の躍進は本当か? 実際は2012年衆院選より「13議席減」「比例420万票減」 維新の実力
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/297131
2021/11/09 日刊ゲンダイ
日本維新の会の松井一郎代表(C)日刊ゲンダイ
「政権選択選挙なので我々は負けているわけでしょ」。総選挙投開票日の10月31日夜、日本維新の会・松井一郎代表は謙虚な姿勢を崩すことはなかった。公示前から4倍近い41議席を獲得。だが、「躍進といっているのはメディアの皆さんがキャッチフレーズをつけているだけ」と淡々と受け流し、他党がうらやむ「4倍増」の喜びはほとんど見えない。
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野党を担当する全国紙政治部記者が解説する。
「維新の議席増は予想されていましたので、松井代表としては想定通りということでしょう。それ以上に『これから』を考えて、あのような渋い表情を浮かべていたのだと思います。当然、『これまで』とは違う対応を迫られることになるでしょうから」
維新の源流は、2010年に結成された「大阪維新の会」だ。大阪から地域主権の実現を掲げ、大阪府・市の二重行政の解消を目指す「大阪都構想」を看板政策に据えた地域政党の原動力は、歯に衣着せぬ言動が持ち味の松井氏と橋下徹氏という「2枚看板」だった。
創業者である橋下氏は政界を引退したものの、2015年に実施された1度目の「都構想の住民投票」で反対だった公明党に衆院選で対抗馬をぶつけることを示唆、昨年の2度目には同党を賛成に回らせるなど「ケンカ上手」が際立つ。
松井代表が冷静に受け止めているように、維新はその「実態」以上に主要メディアが指摘するような躍進を本当に果たしたのか。維新は2012年の衆院選で54議席を獲得し、その比例票は1226万票だった。維新の党として臨んだ2014年衆院選の比例票は840万票で計41議席を獲得している。
今回の衆院選は805万票で計41議席。確かに公示前勢力からは4倍近い議席を確保しているが、これは2017年の前回衆院選で小池百合子・東京都知事が率いた「希望の党」と選挙区をすみ分け、候補者を限定したため11議席(比例票は340万票)にとどまっていたことが要因だ。
前回から大幅増となる96人(小選挙区94人、比例単独2人)の候補者を擁立し、比例票は470万票伸ばしたとはいえ、2014年の獲得票よりも少ない。
第三極でいえば、みんなの党が2010年参院選で獲得した水準にとどまる。発祥の地である大阪では小選挙区で「全勝」したものの、「我々は少し増やしていただいたというのが今の状態」と語る松井代表の分析は的を射ているといえる。
選挙後、ケンカ上手の松井代表は憲法改正案について、「来年の参院選までに改正案を固め、参院選と同時に国民投票を実施すべきだ」と早速、揺さぶりをかけた。立憲民主党・共産党から「自民党よりも右」とも警戒される第三極は、自民党が本来の保守層を取り戻すことに成功すれば期待がしぼみかねないとの読みもあるのだろう。
得意とする「ケンカ」も、巨大な相手がいてこそフォーカスされるのも事実だ。議席を増やし、政党支持率も上昇する中、いよいよ国会で実績を残せなければ、期待が失望へと変わる正念場を迎える。
小倉健一 イトモス研究所所長
1979年生まれ。京都大学経済学部卒。国会議員秘書からプレジデント社入社。プレジデント編集長を経て2021年7月に独立。
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