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※2021年11月4日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年11月4日 日刊ゲンダイ2面
【悪魔の選挙制度では共闘しかない】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) November 4, 2021
それが潰されれば この国は一党独裁になるだろう
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/6O0MGsA5Vw
※文字起こし
衆院選で議席を減らし敗北した責任を取って、立憲民主党の枝野代表が2日、辞意を表明した。10日召集予定の特別国会の閉会日に辞任し、年内に党員参加のフルスペック代表選挙を実施する。
「ポスト枝野」争いは早くも過熱。小川淳也、泉健太、大串博志ら民主党政権時代に要職に就いていない世代交代感のある議員の他、馬淵澄夫元国交相や玄葉光一郎元外相らベテランの名前も浮上している。
今回の選挙結果について「野党共闘失敗」「野党共闘不調」と書き立てる大メディアは、「代表選の争点は共闘路線の是非」と解説し、この人は共闘派、あの人は見直し派など品定めを始めているが、ちょっと待って欲しい。野党共闘をやめて、果たして巨大与党に対峙できるのか。
確かに立憲は、公示前の110議席を96まで減らした。だがその内訳は、比例が62から39へと大幅減で、小選挙区は48から57へと9議席増えているのだ。これぞ、野党共闘が機能した結果だ。
自民党に衝撃を与えた石原元幹事長の落選や甘利幹事長の小選挙区敗北が象徴的で、一本化によって勝利した野党統一候補は62人に上った。217の一本化選挙区での勝率を「3割弱しか」と大メディアは書くが、共闘がなければ小選挙区でもっと負けていた。実際、野党5党が一本化しなかった72選挙区での勝利は6にとどまった。
一本化しながら野党が負けた選挙区にしても、惜敗率90%以上の大接戦で競り負けたのは実に33選挙区。わずかの差で黒が白になってもおかしくなかった。
それは、幹部が「薄氷の勝利」と評した自民党こそよく分かっていて、投票日直前まで「100以上の選挙区で接戦」と分析し、岸田首相はチャーター機を使ってまで全国の激戦区を応援に回ったのだった。
共闘批判より足腰の強化
ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。
「野党一本化の意味は小選挙区にあり、小選挙区での議席は増えている。なぜそれが評価されないのでしょうか。減らしたのは比例で、比例は政党が乱立していたことや政策的なアピールが足りなかったこともあるでしょう。もっと冷静な分析があっていいのに、メディアが、ただ『敗北』と片付けるのは、野党共闘に対する『ネガティブキャンペーン』の類いです。これに立憲内部の共闘慎重派が乗っかっている。1万票以内の僅差で野党が敗れた選挙区は約30。むしろ、なぜそこでこらえられなかったのかが今後の課題です」
投開票当夜の会見で、自公との大接戦区を制することができなかった理由について問われた枝野はこう言っていた。
「空中戦では一定の支持を広げることはできたが、一票一票積み重ねていくという足腰が弱い。ここを強くしないと政権に近づくことはできないと痛感した」
足腰の違い。それは候補者個人が足しげく地元を歩いて、自らの名前と政策を浸透させたり、後援会をつくって支援者を増やしたりといった地道な努力の差だ。立憲は共闘の是非を議論する暇があれば、今すぐ足腰の強化に取り組むべきなのだ。
小選挙区制度は、得票率が50.1対49.9でも勝者は1人。2大政党に集約され、ドラスチックな勝負で政権交代が起きやすくなるということだったが、裏を返せば、政権交代がなければ49.9%は全て「死に票」という悪魔的な制度でもある。
だからこそ共闘しなければ、政権交代はおろか、与野党伯仲で国会論議に緊張感を与えることすらできないのに、「共闘が失敗」なんてメディアが茶々を入れ、立憲内部が対立したら、それこそ自公の思うつぼだ。
何が何でも政権という執着と本気度の問題 |
与党だって自民と公明が“共闘”している。メディアは立憲と共産の連携には野合批判を展開し、「共産の力を借りて立憲が政権を取れば日米同盟は終わりを迎える」などの悪質なデマに乗っかった。だが、自公にも政策の違いはある。「改憲勢力3分の2」とひとくくりにするが、公明は改憲に慎重。自公共闘が野合だと、なぜメディアは書かないのか。
選挙についても自民は公明の支持母体である創価学会票で底上げしてもらっている。対する野党は労働組合の連合が学会票ほど頼りにならないから、各選挙区に1万〜2万の組織票があるとされる共産と連携するわけだ。
それなのに、大して力もない連合がヒステリックに共闘に口を挟む。「現場が混乱し、連合が戦いづらかった」と批判し、来夏の参院選での立憲と共産の協力は「認められない」と言ってのける芳野会長は勘違いも甚だしい。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう話す。
「連合と共産のどちらが票を持っているのか。候補者が共産と連携したくなるのは当然ですよ。自公に勝つためには、保守票も左派票もどちらも取り込みたい。野党共闘は決して間違った戦略ではありません。連合は、共闘が組織の方針と違うのならば、立憲の支援を止めればいいだけです。『支援してやるから、共闘を止めろ』という越権的な政治介入には、どうしてそこまでエラソーなのかと呆れます。もっとも立憲側も、共産について『限定的な閣外からの協力』とし、一緒にやるのかやらないのか曖昧な説明で、本気度がよく見えなかった。こうした対応が有権者に嫌われた一面もあった」
立憲が比例で議席を大きく減らしたのは、小政党が多いと比例票は分散するという制度的な背景もある。前回2017年衆院選は、民進党が直前に希望の党と立憲に割れ、それぞれが比例票を獲得している。今回は立憲に統合しているから、比例票が減る要因はあった。
とはいえ、政党支持率1ケタでは、立憲の比例票が増えないのは当然で、それは、枝野の「個人商店」のような体質や発信力の弱さなど、政党としての魅力が足りないからだ。連合に気を使って右往左往するのも、有権者には頼りなく映る。
プロセスの積み上げと国民へ伝える努力
今度の選挙で、立憲は政権批判票の受け皿になり切れず、“ゆ党”の日本維新の会に票が流れた。「何が何でも政権という執着がないから『万年野党でいい』という雰囲気を醸し出してしまう。それでは国民はバカバカしくて野党に投票しない」と、日刊ゲンダイの取材に以前、小沢一郎衆院議員が語っていたが、最初から「150議席程度を目標」では、過半数にはるか遠く、お話にならないのだ。
「そもそも立憲は衆院定数の過半数程度しか候補者を擁立していない。全員当選しないと政権交代できず、これでは本気度は見えません。今後も継続すべき共闘についても課題はある。プロセスの積み上げ方、信頼関係の醸成、それを国民にどう見せ、どう説明するか。来夏の参院選までに野党合同で勉強会をやるなど、あらゆることに取り組むべきです。共産党も、『自由民主主義を選ぶのか、共産主義を選ぶのか』と与党が言っても有権者が惑わされないよう、いかに『変わった』ことを伝えていくのか」(角谷浩一氏=前出)
立憲に求められているのは、何が何でも自民党政治を止める覚悟と戦略だ。参院選を考えたら、32ある1人区で自民に勝つには、野党共闘で候補者を一本化するしかないのは自明の理。いま議論すべきは、共闘の是非などではなく、共闘して国民に何をどう訴えるかということである。
「政権批判票を維新に奪われたのは、政策面での野党間の調整とアピール不足もあった。今後は、国会での活動を通じて、できる限り政策をすり合わせ、協力を続け、国民に伝えていく努力が必要でしょう」(鈴木哲夫氏=前出)
自公の思うつぼの共闘潰しは、野党潰し。政権交代できる政党が育たなければ一党独裁が永遠に続く。行政の私物化、公文書破棄・改竄、嘘がまかり通る国会。政治の腐敗がさらに進むだけだ。国民はそれを望んでいるのか。独裁国家が先進国と言えるのか。立憲敗北の結果を、短絡的に野党共闘批判に向ければ、将来に禍根を残すことになるのは間違いない。
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