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石原兄弟は揃って「討ち死に」も。予測つかぬ衆院選“激戦区”の行方
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2021.10.26 高野孟『高野孟のTHE JOURNAL』 まぐまぐニュース
史上初めて「野党共闘」が現実のものとなり、多くの選挙区で野党候補の一本化が実現した第49回衆議院議員総選挙。31日の投開票を控え全国で激しい戦いが繰り広げられていますが、識者はその行方をどのように読むのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、当選挙の見所を挙げその各々について詳細に解説。さらに「次世代のリーダー」の具体的な名を記しています。
※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2021年10月25日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:高野孟(たかの・はじめ)
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
野党共闘の効果で自公は辛うじて過半数維持程度か?/しかし接戦区が多くまだまだ分からない最終盤
公示直前になって立憲民主党と共産党を軸とする5野党共闘態勢がかなり進展したため、289の小選挙区のうち74%に当たる213区で野党の候補者一本化が実現、そのうち142区が与野党2極対決、71区が自公・5野党・維新などの三つ巴という、これまでにない総選挙の様相となった。
バラ付きが大きすぎる各紙誌の予測
そのため、毎日新聞10月21日付の分析では、2極対決の142区のうち33区、三つ巴の71区のうち24区、その他を含めて合計で289小選挙区の2割に当たる63区で「接戦」が演じられている。結果として同紙の20日段階の「推定当選者数」も、
・自民 224〜284
・公明 26〜30
〔与党計〕 230〜314
・立憲 88〜146
・共産 16〜 18
・国民 5〜 9
・社民 1
・れいわ 1〜 2
〔野党共闘計〕111〜176
・維新 30〜 35
・その他 4〜 14
と幅が大きすぎて、余り参考にならない。読売新聞10月21日付や毎日新聞22日付は全選挙区について情勢を短評しているが、これでも多くは「互角」「接戦」「横一線」「激しく競り合う」「デッドヒート」「しのぎ削る」といった表現が繰り返されていて、大きな流れを判断する材料とはなりにくい。
今週の週刊誌も、野党共闘の進展を計算に入れて先週までの各誌よりも与党に厳しい予測を出しているが、それでもバラ付きが大きい。「週刊現代」10月23・30日合併号では、4人のプロ筋の予測とそれらを総合調整した評価を出しているけれども、その4人の間でも自民党の獲得議席予測は40議席も差があるという有様である。
有馬晴海 松田馨 C氏 D氏 総合
・自民 256 247 213 216 225
・公明 31 30 32 32 31
〔与党計〕 287 277 245 248 256
・立憲 118 128 151 151 144
・共産 17 17 17 18 18
・国民 10 10 9 10 10
・社民 1 1 1 1 1
・れいわ 1 1 0 1 1
〔野党共闘計〕 147 157 178 181 174
・維新 26 27 36 31 30
・その他 5 4 6 5 5
C氏は大手紙政治部デスク、D氏はテレビ局政治部デスクである。
いずれにしても、自民党が最悪の場合、現有に比べて44議席以上を減らして単独過半数233を切る可能性さえあるけれども、その場合も公明党の30議席程度があるので、自公で過半数割れを起こすことはありそうにないというのが大方の見るところである。とすると、野党第1党としての立憲は、
1.今回は150前後、出来れば155=3分の1を超える議席を占めて存在感を示し
2.それが達成できなくとも、せめて共産などと合わせた野党共闘勢力として3分の1以上を占め与野党伯仲に近い状態を作り出して、自民党のやりたい放題に歯止めをかけ
3.攻勢を保って来年参院選に臨み、自公に123の過半数を割らせて衆参のネジレ状態を現出し
4.次の総選挙で本当の政権交代を果たす
――という段取りを目指すのだろう。
以下、選挙戦の見所をいくつか挙げておこう。
野党一本化の効果が端的に出そうな北海道
北海道には12の小選挙区があり、そのうち3区、4区、9区で共産が候補者を下ろし立憲の応援に回ることになったが、5区、7区、12区では調整がつかず共産が独自候補を立てた。
1区と2区は元々立憲が強いのに対して、3区では過去3回にわたり自民の高木宏寿と立憲の荒井聰=元国家戦略相の獲った獲られたが繰り返されてきた。今回荒井が引退し息子の優が後を継いだものの、地盤の弱さが危ぶまれていたが、2〜3万票を持つ共産が応援に回ったことで互角以上の戦いを進めているようで、一本化の効果を計るのに好適な選挙区となる。
同じく共産が引いた9区では、安倍チルドレンの堀井学=元スケート選手と立憲の山岡達丸=元NHK記者が争ってきていて、前回は堀井10万8,747票、山岡8万8,320票、共産2万9,741票だった。単純計算では共産が支持に回った山岡が優位に立つ。
北海道では、前回は12区のうち6区を自民が制した。野党共闘としては今回は一本化効果で自民を2つ減らし8勝4敗にすれば上出来である。
東北では「岸田農政」への期待と不安が交錯
秋田と山形では、いずれも3区あるうちの1区と2区で共産の取下げによる立憲、国民への一本化が実現し、自民との大接戦になっている。秋田1、2区と山形1区では、30〜40歳代の野党が60〜70歳代の自民に挑戦するという形になっていて、世代的な波が押し寄せているのが1つのポイントだが、マスコミ的にはこの要素がほとんど重視されていない。
また安倍政権が数々の嘘の中でも筆頭と言えるTPP加盟をめぐる嘘八百や、竹中平蔵をイデオローグとした規制緩和、既得権益破壊の名の下の農業破壊、農協弾圧政策の傷跡は深く、それだけに岸田文雄首相が総裁選段階で「新自由主義からの転換」「規制改革推進会議改組」などを口にしたことには農業団体から期待が高まった。が、その後は他の目玉政策と同様、ただの口約束として脇に押しやられようとしている。この辺の束の間の期待と早くもそれが裏切られつつある状況を、農民層はどこまで見抜いて投票するかということである。
秋田2区では、前回は自公の金田勝年が7万4,835票に対して「希望」から出た緑川貴士が7万3,163票の僅か1,672票差。その時には1万3,642票を取っていた共産が立憲の緑川を押せばたちまち優勢になるはずだが、その通りになるかどうか。
福島の5選挙区では全てで一本化が達成された。特に海に面した1区と5区では、放射能汚染水の海洋放出を漁民らの反対を蹴散らして強行する政府方針を岸田が踏襲しようとしていることへの反発がどう出るか。
石原伸晃の落選可能性まで囁かれる東京激戦
東京は25の選挙区のうち18で立憲・共産・れいわが一本化し、自公vs野党共闘の図式が際立つかと思いきや、全国化を狙う維新が17人を立てたのでまさに三つ巴の戦いとなった。今のところ、自民の12人が優勢もしくはリードしているのに対し、立憲で優勢なのは7区の長妻昭、9区の山岸一生、18区の菅直人の3人程度にすぎず、残りの10の区では混戦が続き予測がつかない。
注目は8区で、れいわの山本太郎の乱入で立憲と共産の一本化協議が壊れそうになったが、結局山本が引いて、石原伸晃と立憲の吉田晴美の事実上の一騎討ちとなった。前回、吉田は7万6,283票で2万3,600票差で敗れたが、この時はそれ以外の野党系として「希望」が4万1,175票、共産が2万2,399票、無所属の円より子が1万1,997票を得て完全にバラけていたので、一本化の効果を見込めるのではないか。小なりといえども自民党の1派閥を率いる石原が落ちると衝撃は大きい。なお維新も立てているが、撹乱要因となるほどの力を持ちそうにない。
山本太郎はれいわの比例第1位に座ったので、たぶん議席を得ることが出来るだろう。
ちなみに東京3区の石原の実弟=宏高も毎回、立憲の松原仁と激しい競い合いを演じてきたが、今回、野党の一本化が成らず共産も立っているので(それは当然で、いくら共産が物わかりが良くても松原のド右翼路線を担ぐわけにはいかない)その分有利かと思いきや、かなり苦しい戦いになっていて、場合によると石原兄弟揃って討死もあり得る。
静岡では5区が話題で、民主党政権の大臣や党幹事長まで経験しながら今は自民党二階派の客員会員となった変節漢=細野豪志がこのまま優勢に戦い切ることができるのかどうか。対抗するのは自民党公認の岸田派の吉川赳と立憲の新人=小野範和。
維新は大阪ローカル政党を抜け出しせるのか
実は、日本維新の会が現有10に対し20以上、最大で30前後まで議席を伸ばすのではないかというのが、余り話題になってはいないが、今回の見所の1つ。維新は前回は大阪の選挙区で3議席を得、7人が比例復活した。今回は大阪で15人、兵庫で9人、東京で17人をはじめ28都道府県に計94人を立てており、一気に全国政党に脱皮しようとする意欲満々である。
しかし、各種調査では、大阪ではますます強く、19の選挙区のうち12で有利な戦いを進めていて、従って比例でも自民を上回る9議席程度を得るものと見込まれるものの、他ではほとんどトップ争いに絡んでおらず、そうでなければ自公vs野党共闘の2大勢力による政権獲得戦の形に近づいていくというのに、徒らに三つ巴にさせて選挙の争点をボヤケさせる役目を果たしている。
いや、三つ巴でもいいのだが、維新自体が、「大阪都構想」というまるっきり大阪エゴの(であるからして全国的には誰も興味のない)単一争点を突出させるためだけの勢力として政治舞台に登場し、それが霧散した後は、しからば何をするための政党なのか、自公政権と抱き合おうとするのかそれを倒そうとするのかも定かならぬ曖昧な存在でしかない。そのため、2極構図に割り込んで3極化させても、保守層の中の自民党にあきたらない票を削り取って保守分裂的な作用を起こすのか、反自民ではあるが立憲や共産は好きになれないという漠然たる野党的な気分の受け皿となって結果的に自民を助けるのか、その役割が不明で、それが多くの選挙区が無闇やたらに混戦化する要因の1つとなっている。
かつては橋下徹、今は吉村洋文府知事の人気に頼った「何となく改革っぽいことをやってくれそうなイメージ」というだけではない、何をする党なのかを示さないと、せっかく30前後の議席を得ても国民的には何の意味もないのではないか。
次の次あたりの「総理大臣」になれるのは?
山口3区は、参議院から河村建夫元官房長官を押し除けて鞍替えした林芳正が大勝するだろう。前に総裁選に挑んだこともあったが、政界の不思議な村の掟の下では参院議員(や衆議院であっても比例復活)では一人前に扱って貰えない。これで晴れて総裁・総理を目指すことが出来るわけだが、彼によって、宏池会の流れを組みながら安倍=清和会の軍事的タカ派路線と抱合してしまった麻生太郎、「宏池会」の看板を預かりながら安倍=麻生路線に媚を売って今の座に辿り着いた岸田、鳴かず飛ばずの谷垣禎一までをリシャッフルした真正宏池会が蘇るのかどうか。岸田は偽物の宏池会だが、林は本物で、これが力を持つと野党は戦いにくいことこの上ない。
香川1区は、『なぜ君は総理大臣になれないのか』ですっかり有名になった小川淳也が、前デジタル大臣で地元のメディア王一族のプリンスである平井卓也を一歩リードするという展開となっている。私のまったく勝手な予想では、来年の立憲の代表選では辻元清美代表、小川幹事長の体制にチェンジして政権を獲りに行き、それがうまくいくかいかないかはともかく、その次くらいが小川代表の時代になる。そのためには彼はここで選挙区で勝ち上がらなければならない。
林芳正60歳、小川淳也50歳。林は衆議院への鞍替えに約10年間も党内の壁と闘わなければならなかったので、もう還暦になってしまったけれども、岸田の64歳より若い。彼らの時代がすぐに来るだろう。
オール沖縄は4区全勝を達成できるのか
沖縄は、オール沖縄が4区の全部で勝ちたいところである。前回は4区で自民の西銘恒三郎が唯一、小選挙区で勝利したが、その座を死守するために岸田内閣は彼を沖縄・北方・復興担当大臣に据えた。これをひっくり返すのはなかなか大変だが、ここでオール沖縄が頑張らないと来年参院選から秋の玉城デニー知事再選への展望が切り開けない。
考えてみれば、今回衆院選の最大の特徴である共産を含めた「オール野党」(除く維新!)の選挙協力の原型を作ったのは、2014年に故翁長雄志知事を実現した「オール沖縄」だった。それが安倍・菅両政権の官邸ポリスの陰湿な工作もあって足元から掘り崩されようとしている中で、まずは沖縄が全4区で完勝して全国のオール野党を励ますという使命が沖縄にはあるのである。その意味で、沖縄4区は最大の注目ポイントである。
(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2021年10月25日号より一部抜粋・文中敬称略)
(全文はメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』を購読するとお読みいただけます)
image by: 石原伸晃公式FaceBook
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