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※2021年10月26日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年10月26日 日刊ゲンダイ2面
【あと1週間、何が起こるかを徹底予測】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) October 26, 2021
首相が入ると負ける自民 打つ手なし
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/3xnhEpg4RV
※文字起こし
「寝た子を起こす。首相には来てほしくない」――。散々な言われようである。岸田首相の就任後、初の国政選挙となった参院静岡・山口両補欠選挙。投開票翌日の25日、朝日新聞が自民党静岡県連の声として伝えたのが、冒頭のセリフだ。
両補選で争われたのは、もともと自民の議席。2連勝で衆院選に弾みをつけたかった自民の狙いが外れ、静岡は野党系候補にまさかの逆転負け。2度も応援に入った岸田は面目丸潰れである。
当初はこんなはずではなかった。静岡は衆院8小選挙区のうち7つを自民党や自民系の前職が独占。野党は共産党も候補を擁立し、共闘体制が整わず、今月上旬の自民党の調査でも公認候補が大量リード。マイナス要素は皆無で、党内は「勝って当然」というムードに包まれていた。
楽観論が崩れるのは早かった。告示日に川勝平太知事が野党系候補の応援に飛び入り参加して以降、全面支援。6月の県知事選で30万票もの大差をつけて自民推薦候補を破った余勢を駆って政権批判を展開すると、アッという間に接戦に持ち込まれた。
よせばいいのに、岸田も党幹部の「逃げずにやりましょう」との進言を受け、選挙終盤に再び静岡入り。この決断に周辺も「首相が2度も入って失敗は許されない」と危ぶんだが、時すでに遅し。岸田は「(公認候補に)まず先陣を切ってもらう」と衆院選の「前哨戦」を強く訴え、“絶対に負けられない”補選にしてしまった。
勝手に飛び越えるハードルを高め、自縄自縛に陥り、初陣での手痛い1敗で見事につまずき、「選挙に勝てない顔」の烙印を押される始末。静岡補選のマヌケな敗北には岸田以下、今ごろ自民党全体が気も狂わんばかりなのではないか。
無理が通れば道理が引っ込むの野党批判
そもそも身内の県連に「首相には来てほしくない」と言われるのも、岸田の自業自得だ。今やリベラルなハト派の面影なし。安倍元首相、麻生副総裁、甘利幹事長の「3A」にひれ伏し、安倍菅路線の「説明しない」政治に染まって、今さら変更もできない。
こんな“操り人形”に具体策ゼロの「新しい資本主義」を街頭で唱えられても、動員がかかった支援者たちもドッチラケ。まばらな拍手も当然だ。むしろ、この9年の安倍菅政治のデタラメを想起させ、政権批判の炎に油を注ぐばかり。最悪の展開である。
勢いづく立憲・国民など野党5党は289の小選挙区の7割強に統一候補を立て、うち事実上の与野党一騎打ちの選挙区は140近い。その半数が大接戦だ。自民がテコ入れしようにも、何しろ岸田に代わる「党の顔」の幹事長は口利きワイロ疑惑の甘利である。応援に入っても、岸田以上に票を減らすだけだ。
かくなるうえは、なりふり構わず。権力維持のためなら、どんな禁じ手でも使う選挙戦こそが、長らく培ってきた自民党の伝統芸だ。
「今回は体制選択選挙だ。共産党が意思決定に直接関与する政権は、今まで日本にはない」
既に甘利らは、立憲・共産の“野合”批判を繰り返している。特に共産の党綱領を狙い撃ち。日米安保条約の「破棄」をあげつらい、立憲との政策不一致を訴えるのだ。
いくら共産の志位委員長が「政策の不一致点は共闘や新政権には持ち込まない」と力説しても、自民は“無理が通れば道理が引っ込む”の態度だ。あと1週間、自民は何を仕掛けるのか。何が起こるのか。徹底予測してみると――。
3A先頭に死に物狂いの“デマ口撃” |
まず、考えられるのは共産批判のエスカレートだ。「立憲共産党」とおちょくる麻生は「どこの国でも共産党と組んだら共産党がリーダーシップを取っている」と裏付けなしの印象操作で「脅威」を強調。安倍も「共産の力を借りて立憲が政権を握れば日米同盟の信頼関係は失われてしまう」「日米同盟は、その瞬間に終わりを迎えてしまう」と踏み込んだが、こちらもマユツバだ。
日米同盟の根底には米国の軍事戦略上、優れた日本の地理的条件がある。在日米軍をそう簡単に手放すのか。ちょっと「地政学」をカジれば飛躍し過ぎと分かる論法で、対米隷従主義者の妄想みたいなものである。
憲政史上最長政権を築いた威厳などみじんも感じさせず、野党をシャカリキ“デマ口撃”。こんな人物が今なお、政権を裏で支配していることの方が、よっぽど「脅威」だ。
政治評論家の本澤二郎氏はこう言った。
「野党共闘への危機感の裏返しとはいえ、岸田政権を操る重鎮『3A』が率先して誹謗中傷とは度が過ぎる。思い出すのは25年ほど前。当時の新進党に公明党が合流した時の自民党による激しい創価学会バッシングです。『新進党は宗教団体に支配されており、憲法の宗教分離の原則に反している』『宗教団体で政党をつくったのはオウム真理教と創価学会の2つだけ』などと猛攻撃。自民党と新進党が政権の座を争った1996年の衆院選では、投票日に都内の家々に出所不明のビラが大量に配られ、オウム事件にかこつけた学会批判が記されていたこともありました。今の共産党への“デマ口撃”に酷似した構図ですが、ここまで罵倒した公明党と20年も連立を継続していることこそ、権力欲にまみれた『野合』そのものです」
権力を失いたくない一心で何でもアリ
自民が大事な選挙で苦境に立つたび、野党攻撃の怪文書がバラまかれるのは偶然なのか。この9年の安倍菅政治のドーカツで、すっかり手なずけた大メディアを駆使した情報操作だって過熱しかねない。
25日も昼の民放番組に「政権寄り」と評される政治コメンテーターが出演。静岡補選の自民敗北について「(投開票前の予測に)比べると、ずいぶん追い上げたっていうのが自民党側の認識。もともと勝っていたんだけど、負けて、でも追い上げた」と謎の分析で、自民劣勢ムードを払拭しようと躍起だった。
「野党攻撃のフェイク投稿を繰り返すツイッターアカウント『Dapii』の正体が、自民党と取引のある『法人』と判明。話題を呼んでいますが、この1週間でSNS上での世論工作も激しさを増すのでしょう。とにかく自民党の権力を失う恐怖感たるや、すさまじい。予算編成権や税制優遇をチラつかせ、業界団体を締め上げ、『組織票を出せ』と脅す姿も目に浮かびます。見えも外聞も体面も捨て去り、何でもアリ。自民党に“横綱相撲”の余裕など望むべくもないのです」(本澤二郎氏=前出)
権力を手放したくない一心で、死に物狂いの卑劣な選挙を許していいのか。どの世論調査でも国民の7割は安倍菅政治の継続を望んでいない。共同通信の最新調査だと、望ましい衆院選の結果は「与党と野党の勢力伯仲」は49・4%で、前回より4・2ポイント増加。「与党と野党が逆転」の11・4%を合わせれば6割を超える。
多くの有権者が今の政治のあり方に疑問を感じているのなら、貴重な1票に明確な意思を託すべきだ。
政治評論家の森田実氏はこう指摘する。
「参院静岡補選の野党系候補は無党派層の7割から票を得ました。さらに共産候補の票を足すと、自民候補に16万票もの大差をつけ、野党の圧倒です。無党派層の大半は傲慢な『安倍菅政治』にノーを突きつけ、岸田政権がそれを隠す『3A』の傀儡だと見抜いていることを示唆しています。衆院選投票の1週間前に有権者の地殻変動を見せつけた意義は大きい。自民党にすれば深刻な事態で、単独過半数の維持は困難。この1週間で票をどれだけ減らすかの選挙戦となりそうです」
どうあがいても、首相が応援に入ると負ける自民に打つ手なし。静岡以上の「まさか」の事態だって起こり得る。
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