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※2021年10月23日 日刊ゲンダイ2面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
【各党の公約を並べ立てる愚】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) October 23, 2021
大メディアがまたやらかしているバカの極み
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/AWZAtK6eZU
※文字起こし
10・31総選挙の投票日まで1週間。自民党が真っ青になっている。
岸田政権の“バケの皮”がはがれる前に解散・総選挙になだれ込んだ自民党は、「これで勝てる」とほくそ笑み、不意を打たれた野党は慌てふためいていた。ところが、いざ選挙戦が始まってみると自民候補と野党候補が各選挙区で接戦をくり広げている。
読売新聞は「自民減 単独過半数の攻防」と伝え、毎日新聞も「自民 議席減の公算大」と報じている。
まさかの状況に焦った自民党は、甘利明幹事長と遠藤利明選対委員長の連名で「急告 情勢緊迫」と題した通達を各陣営に送付。「多くのわが党候補者が当落を争う極めて緊迫した状況にある」と危機感を募らせている。毎日新聞によると、全289選挙区のうち63選挙区で接戦になっているという。
この総選挙の最大のポイントは、選挙結果がまったく見通せないことだ。たとえば、毎日新聞は「自民 議席減の公算大」との見出しは掲げているが、自民の獲得議席を224〜284と60議席も幅を持たせて予測している。自民党の大勝も大敗もあるということだ。公示前の276から50以上も減らす224議席だったら惨敗だが、284だと公示前より増え圧勝ということになる。
自民党関係者がこう言う。
「過去2回の総選挙は、序盤から<与党300議席超><自公で3分の2うかがう>と自民圧勝が伝えられ、分かりやすい選挙でした。ところが、この総選挙はまるで読めない。自民苦戦と伝えられていますが、読売新聞の調査によると自民党の比例区の獲得議席は、2014年衆院選の68、17年衆院選の66を上回る70議席台に達するといいます。もし、自民党に逆風が吹いていたら比例で70議席も取れるはずがない。不気味なのは、自民にも野党にも風が吹いておらず、熱気もなく、有権者がなにを求めているかさえ伝わってこないことです。それだけに、岸田首相や甘利幹事長の失言など、ちょっとしたことで投票日の直前にどちらかに雪崩を打つ恐れがある。非常に心配です」
問われるべきは「未来」ではなく「過去」 |
自民と野党のどちらに軍配が上がるのか。この先、大手メディアの報道で情勢は大きく変わる。
ところが、公平、中立のつもりなのだろうが、大新聞テレビは、さも重大事のように各党の選挙公約を同列で並べているのだから、カマトトにも程があるというものだ。
もちろん、政策を見て一票を投じるのが大原則だが、日本の場合、選挙公約など、ただのお題目に過ぎないことは有権者の多くが分かっていることだ。そもそも、自民党に公約を語る資格があるのか。これまで自民党が掲げた公約で実現できたものがいくつあるというのか。
前回17年の衆院選の時、「GDP600兆円経済の実現」「希望出生率1・8」「介護離職ゼロ」――と夢のような公約をいくつも掲げたが、実現したものはひとつもない。19年度のGDPは550兆円、20年度も530兆円だった。20年の出生率は1・34、19年の特養の入所待ちは29万人に達している。
政権を担っていない野党の選挙公約に耳を傾けるのは必要だが、9年間も政権に就いてきた自民党に問うべきは、選挙公約ではなく過去の実績だろう。
作家の適菜収氏が、本紙のコラムで〈だまされてはいけない。問われているのは未来ではなく過去である。安倍晋三―菅義偉政権の9年間をどう評価するかである〉と指摘していたが、まったくその通りだ。
しかも、岸田首相は「政策」がブレまくっているのだから、国民だって判断のしようがないはずである。総裁選前は「成長だけでは人は幸せになれません」と、分配を重視していたのに、総裁選が終わると「成長を目指すことは極めて重要」と正反対のことを訴えている。主張している「成長と分配の好循環」も、どうやって実現するのか具体的な中身を示そうとしない。看板政策だった「令和版所得倍増」も、いつの間にか消えてしまった。
政治評論家の本澤二郎氏はこう言う。
「昔から自民党にとって選挙公約は、実現できるかどうかは二の次で、初めから“空約束”なのが実態です。なのに大手メディアは、実現できるのかどうか検証もせずに垂れ流しているのだからどうかしています。選挙公約について報じるなら、岸田首相のブレや、過去の実績を検証して国民に伝えなければ、判断材料を提供したことになりませんよ」
自民党の選挙公約をデカデカと報じている大手メディアは、ナンセンスの極みだ。
争点はハッキリしている、“アベ政治”だ |
この選挙の争点はハッキリしている。国民生活をぶっ壊した“アベ政治”を続けるのか、それとも決別するのかだ。
この9年間、日本で何が行われたか。
森友事件では公文書が改ざんされ、加計疑惑では“腹心の友”に便宜が図られ、桜疑惑にいたっては、安倍元首相は国会で118回も虚偽答弁をしていた。しかも、いまだ疑念を解消する説明もしない。この9年間で政界に広がったのは「逮捕さえされなければOK」という空気だ。大臣室で50万円を受け取っていた甘利まで復権している。日本の政治は腐り切ってしまった。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)がこう言う。
「森友も、加計も、桜も真相が解明されないまま、ウヤムヤにされています。自民党の総裁選では、財務省の公文書改ざんについて、候補者4人のうち3人が“再調査はしない”と答えている。この9年間で日本の政治から、当たり前の正義も道徳も自浄作用も消えてしまった。岸田首相は“政治とカネ”の問題を抱える甘利さんを幹事長に起用する始末です。その一方、アベノミクスによって国民の実質賃金は下がり、貧富の格差も拡大してしまった。本当にこのままアベ政治を続けるのか、それこそ総選挙で問われるべきです」
いったい大新聞テレビは、9年間のアベ政治をどう考えているのか。まさか、評価しているわけじゃないだろう。なのに、各党の公約を同列で並べているだけなのだから話にならない。
「日本の大メディアは安倍政権の9年間ですっかり牙を抜かれてしまった。とくに選挙報道は腰が引けている。やはり14年の衆院選の時、自民党から『政治的公平性』を求めるという圧力のような文書を渡され、受け取ってしまったのが大きかった。本来、メディアは、あんな圧力文書は突き返さなければならない。とくに、NHKの権力への忖度は目にあまります。米国のメディアは、トランプ前大統領からどんなに攻撃をされても一歩も引かずファイティングポーズを取り続けた。権力側と対決するのは当然のことです。日本の大メディアは、国民の代表であるという気概を失っているように見えます」(本澤二郎氏=前出)
このまま選挙が終わるまで大手メディアは動かないつもりなのか。
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