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※2021年10月22日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年10月22日 日刊ゲンダイ2面
【勢いは間違いなく共闘野党】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) October 22, 2021
ジリ貧 岸田自民 地滑り的敗北の可能性
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/ZVuU07Pvg5
※文字起こし
衆院選(31日投開票)の序盤情勢を報じた21日の朝刊の見出しを見て、岸田首相は呆然自失だったのではないか。
読売新聞は「自民減 単独過半数の攻防」「野党一本化 自民苦戦」、毎日新聞は「自民 議席減の公算大」「接戦区 野党共闘の効果」である。
自民党内では「前回2017年が勝ちすぎだった」として、「20議席程度を減らすことは想定内」という観測が早くからあったが、どうやら自民党の苦戦はそんな程度に収まらない情勢だ。読売は、<公示前勢力が276議席だった自民は、小選挙区で優位な戦いを進める候補が120人前後にとどまっている>、毎日は、<63選挙区で接戦となっており、立憲民主党は接戦区の状況が好転すれば、大きく議席を積み増す可能性がある>などと解説していた。
野党の善戦は、候補者の一本化が進み、各地で「統一候補」が続々誕生した効果なのは間違いない。立憲民主、共産、国民民主、社民、れいわ新選組の5党が、全289選挙区の7割超にあたる213選挙区で候補者を一本化した。事実上の野党統一候補である無所属候補の4選挙区を含めれば、一本化は217選挙区になる。
このうち132選挙区は事実上の与野党一騎打ちの構図で、その6割が大接戦。比例代表についても、毎日は自民について「前回66議席から減らす可能性」と書く。自民は「単独過半数(233議席)」に届くかどうかの苦しい戦いを強いられているのが序盤の情勢なのである。
「この人はやっぱりダメだ」
投票日まではまだ1週間以上あるが、少なくとも自民党が当初もくろんだ「新政権のご祝儀で短期決戦逃げ切り」のシナリオは崩壊した。自民党関係者は「接戦区について2週連続で行った党の情勢調査を見ると、千葉や神奈川など都市部で支持が下がっている。野党一本化の影響は確かにある」とこぼした。
ただ、自民が想定以上の苦戦を強いられているのは、野党共闘の効果だけじゃない。岸田の不人気が確実に影を落としている。
朝日新聞が19、20日に実施した世論調査で、岸田内閣の支持率は41%。発足直後の10月初めの調査(45%)から4ポイント下落し、逆に不支持率は20%→26%と6ポイント増だった。こうした支持率下落は、すでに他メディアの世論調査でも同様の傾向が出ている。
新型コロナの感染者が減少すると、支持率が上昇するという安倍・菅政権時の“ジンクス”は、岸田内閣には当てはまっていない。
朝日の調査では、岸田の経済政策についても「期待できる」が42%→37%に減り、「期待できない」が28%→39%へと大きく上昇した。「金融所得課税の強化」や「令和版所得倍増計画」など、自民党総裁選であれほど力説していた格差是正の「岸田カラー」がすっかり消えてしまえば当然。ピンボケ首相では、もはや上がり目ナシである。
政治評論家の野上忠興氏が言う。
「『岸田さんは変わった』などと総裁選で言われていたので、期待した世論もあったでしょう。しかし、新政権がスタートしてみれば発言がどんどんしぼんでいくうえ、3A(安倍元首相、麻生副総裁、甘利幹事長)の影も見える。『なんだ。この人はやっぱりダメだ』という失望感がジワジワと出てきました。言葉に力がないから、岸田首相が選挙で地方遊説をすればするほど、落胆はさらに広がっていく。『モリカケ桜』について発言しないことも、ボディーブローのように効いてきていると思います」
単独過半数の攻防どころか、過半数を割り込む可能性は大いにある。勢いは確実に共闘野党にあり、野党への追い風となる静かな“微風”も起こりつつある。毎日の調査では、無党派層の比例投票先は立憲(21%)が自民(15%)を上回っていた。「無党派の多くは自民に批判票を投じるために投票に行く」(前出の自民党関係者)というから、投票率が上がれば何が起こるか分からない。
卑怯な手段で国民を舐めた自業自得 |
衆院選は政権がやってきたことに対し、有権者が審判を下す場である。前回選挙からの4年間だけを見ても、アベスガ政治は数の力を盾に、私物化や忖度を横行させ、憲法無視や公文書改ざんなど犯罪まがいの行為すら是としてきた。驕り高ぶった自民党には、鉄槌が下されなきゃおかしい。
そうしたアベスガ政治を、岸田は反省しないどころか、継承しようとしているのだ。森友問題の再調査をしようともせず、地元・広島で起きた参院選に絡む「1億5000万円問題」でも県連からの再調査要求を突っぱねている。
今ならば分かるが、総裁選時から岸田の頭の中にあったのは、電波ジャックで自民党への注目が高まったまま、新内閣のボロが出ないうちに超短期決戦に突入する――だったのだろう。野党があれほど要求しても予算委員会を開かず、地方自治体など事務方の準備を考慮して「11月7日投開票」が本命だった選挙日程を無理やり1週間前倒しした。解散から投票まで20日間は必要とされるのに、岸田は「10月4日の記者会見で解散日と選挙日程を明言するから間に合うだろう」と、難色を示す総務省を半ばゴリ押ししたのである。
自ら繰り出した奇策・奇襲に岸田はニンマリなのだが、衆院事務局に30年余り勤めた元参院議員の平野貞夫氏は、「憲法を冒涜する行為だ」と怒り心頭でこう話す。
「実は私のところに投票所入場整理券が解散前日の13日に届いたのです。衆議院の解散は閣議決定に基づき行われるというのが憲法の規定であり、閣議決定は14日に行われた。閣議決定前に整理券が届くのはおかしいじゃないかと思って、自治体に問い合わせると、『4日の会見で総理が解散日と選挙日程を表明したので、選挙事務を進めても問題ないという特別な通達が総務省から届いている』と言うのです。こんなことが認められていいのでしょうか。岸田首相は憲法順守義務違反ですよ。恣意的に憲法を解釈した安倍元首相以上に乱暴な憲法の運用です。国会を構成する議員を選ぶ行為は、国民主権を発動させる議会制民主主義の根幹。投票整理券無効訴訟や解散無効訴訟が起こされたら、岸田首相はどうするのか」
「何があるか分からない」
アチコチで自民党の予想を超える激戦に追い込まれているのは、岸田が卑怯な手段で国民を舐めた結果の自業自得だ。安倍元首相や菅前首相とは違う岸田の柔和な表情に、国民は一瞬、騙されそうになった。だが、発足から半月。今は、これまでの政権と変わらぬズルさや傲慢さを感じ取り始めている。
「岸田さんに『選挙の顔』が務まるのか、と自民党内では以前から心配されていましたが、案の定でしたね。岸田離れの現象は、これからもジワジワ進むでしょう。一方、野党は予想以上に議席を増やせそうになり、さらに勢いづく。自民党が60〜70減まで落ち込むことはさすがにないと思っていましたが、まさか、が起きるかもしれない。普通なら落選するはずのない人まで当落線上に落ちてくる。絶対的に強いと言われているベテラン議員ですら、『何があるか分からないから』と言い出しました」(野上忠興氏=前出)
岸田自民はジリ貧。地滑り的敗北となる可能性が出てきた。たとえ与党で過半数を維持しても、自民の単独過半数割れなら、岸田の責任論が噴出しかねない。議会構成が与野党伯仲となれば、自民党は今までのような、臭いモノにフタをする横暴もできなくなる。国民を愚弄する政治は、終わらせなければいけない。
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