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※2021年10月21日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年10月21日 日刊ゲンダイ2面
思惑外れて自民党は大慌て 存在感の薄い首相に風吹かず
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/296368
2021/10/21 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
真っ先に緊急会見するはずの岸田首相や官房長官は、そろって選挙運動で不在(C)日刊ゲンダイ
「ドン」という大きな爆発音とともに黒煙が一気に広がった。気象庁によると、20日午前11時43分ごろ、熊本県の阿蘇山の中岳第1火口が噴火。噴煙は高さ約3500メートルまで立ち上り、火口から1キロ以上まで火砕流が到達した。
同庁は警戒レベルを火口周辺規制の「2」から入山規制の「3」に引き上げ、火口から約2キロの範囲では大きな噴石や火砕流に警戒するよう呼び掛けた。噴火を受け、政府は20日、首相官邸の危機管理センターに情報連絡室を設置。状況を伝えるNHKニュースでは、磯崎官房副長官が会見で、「詳細について情報収集を進めている」「危機管理には万全を期しており、しっかり対応したい」と強調する様子が流れていたが、この報道を見ていた人は首をかしげていたに違いない。
なぜなら、19日に北朝鮮が日本海に向けて計2発の弾道ミサイルを発射した直後の会見でも、官邸で緊急会見していたのは磯崎だったからだ。真っ先に会見対応するはずの岸田首相や松野官房長官は一体どうしたのかと思ったら、そろって衆院選で東京を離れ、選挙運動に励んでいたというからシャレにならない。
噴火を受け、岸田はツイッターで、<周辺地域の皆さん、最新情報に注意し、警戒をお願いします>と呼び掛けただけ。北のミサイル発射時も、発射の一報を知りつつ、次の演説場所に予定通り向かったというから驚くばかりだ。
岸田演説に聴衆の熱気はてんで感じられず
自民党の政治家は普段、危機管理の必要性を強調して防衛費を膨張させてきたクセに、肝心な時に司令塔がこんな体たらくでは危機管理もヘッタクレもないだろう。
どうやら岸田も松野も、北のミサイルや阿蘇山噴火よりも最大の危機感を抱いているのは今度の総選挙の結果らしいが、それもそのはず。これまでの選挙であれば、良し悪しは別として、与野党それぞれに、いろいろな「風」が吹いていたのに、今回の選挙は何もない。異例ともいえる「無風」の状態だからだ。
公示日、岸田は福島県土湯温泉で、「信頼と共感のある政治を進めていきたい」と第一声を上げたが、拍手はパラパラ。
20日は兵庫県尼崎市で街頭演説し、「一日も早く平時に近い社会経済活動を取り戻す」と訴えていたが、聴衆の熱気はてんで感じられなかった。
総選挙の意味は、将来の国民生活を託すだけではない。有権者が各政党を代表、象徴する「顔」「言葉」を求めて熱狂する最大の「政治イベント」でもある。
政権与党の、それも交代したばかりの新顔の新首相ともなれば、普通は街頭演説には黙っていても人がワンサカ集まるはずだ。ところが、岸田の場合は「顔」になるどころか、全くと言っていいほど存在感が薄いのだ。ヒラ議員であればともかく、これだけ国民から無関心の男も珍しいのではないか。
福田赳夫元首相の秘書を務めた中原義正氏がこう言う。
「総裁選で『民主主義の危機』などと訴え、岸田首相は安倍・菅政治の方針転換を力強く掲げたのかと思いきや、首相に就いた途端、すべてを引っ込めたのだから情けない。要するに政治家としての信念は何もなく、首相というポスト、名前が欲しかっただけ。そんな薄っぺらな性根が有権者に透けて見えてしまった。岸田首相の『顔』が見えない、というのではなく、皆が呆れてソッポを向いている状況なのだ」
下手な芝居で間延びした演技を見せる岸田劇団 |
「金融所得課税を強化」「子育て世帯への住居・教育費支援」……。岸田が総裁選で声をからして訴えていた、これまでの新自由主義からの転換、格差是正を柱とする「岸田カラー」は今や雲散霧消。新聞テレビが大きく取り上げた「令和版所得倍増」の言葉も党公約から消え去り、代わりに打ち出されたのが、安倍政権が進めた経済政策「アベノミクス」の3本柱の政策を「総動員」ときたからクラクラする。
これじゃあ岸田政権がこの先、何を目指すのか、何をやりたいのかがさっぱり分からない。
早速、北のミサイル発射を受け、岸田は「すでに国家安全保障戦略等の改定を指示し、いわゆる敵基地攻撃能力の保有も含め、あらゆる選択肢を検討するよう確認した」とか言っていたが、オイオイ、岸田派(宏池会)は「ハト派」ではなかったのか。「敵基地攻撃能力を保有する」なんて、「ウルトラタカ派」の安倍元首相の主張そのものだろう。掲げる政策がコロコロ変わり、言っていることとやっていることがまるで違うのだから、有権者が鼻白むのも当たり前。これでよくもまあ「信頼と共感を得られる政治」などと言えたものだ。
「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」。岸田を一言で言い表せば、器の小さな「つまらない男」だということ。
何もしなくても経済成長が右肩上がりしたバブル時代はともかく、今の時代のかじ取りは無理だろう。
モリカケから逃げる岸田の子供じみた言い訳
共同通信が16、17の両日に実施した全国電話世論調査によると、岸田政権が安倍、菅両政権の路線を継承するべきか、について「転換するべきだ」が68.9%に達し、「継承するべきだ」(26.7%)を大きく上回っていたが、これまでの言動を確認する限り、「転換」する気はサラサラない。
岸田が「早く行きたければ一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」などと小学校の学級委員のような発言をするのであれば、少なくとも、森友・加計疑惑、桜を見る会の問題、自民党から1億5000万円もの巨費が投じられた参院広島選挙区をめぐる買収事件――などをきちんと調査し、学術会議会員の任命拒否を撤回することが「最も早く、遠く進む」方法だ。
ところが「二度と起こさない」などと繰り返すばかりで何もしない。公文書の隠蔽、改竄、廃棄なんて、二度と起こさないのは当たり前だろう。この約8年間、安倍・菅政権のデタラメ政治を間近で見てきて、政治家として、人として何も感じなかったのか。おかしいとは思わなかったのか。「もうしないから許してやってよ」とでも言いたいような発言は、子供の言い訳そのものではないか。
結局、いつまで経っても、安倍・菅をはじめ、麻生副総裁や甘利幹事長から「親離れ」できないのが岸田なのだ。「岸田カラー」とは、どんな色にも染まることができる「無色透明」で、裏に透けて見えるのは「ワル」と「タカ派」の顔ばかりということだ。
政治評論家の小林吉弥氏がこう言う。
「岸田劇団という名の芝居に例えるのであれば、新たな幕は開いたものの、出演者の顔ぶれは変わらず、間延びした演技を見せられているような感じです。岸田首相からは新鮮さも迫力も感じられない。これでは何のために表紙(総裁)を替えたのかと、自民党議員は思っているはずです。ヘタな芝居を見せられたら、お客はつまらないから帰るのと同じ。このままだと自民党に対する有権者離れが進み、総選挙で辛うじて過半数の議席を確保したとしても、来夏は参院選があるため、通常国会が始まる早々に岸田首相の交代論が出てくる可能性もあると思います」
老婆心ながら選挙最終日の岸田演説にどれだけの聴衆が集まるのか、けだし見ものだ。
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