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※2021年10月5日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年10月5日 日刊ゲンダイ2面
【前代未聞の目くらまし これでは国民は何もわからない】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) October 5, 2021
電光石火 いきなり解散・総選挙の吉凶
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/snKwokhooM
※文字起こし
まさに奇襲、奇策。いきなり岸田首相が「解散・総選挙」の日程を発表し、永田町は慌てふためいている。
もともと政界のコンセンサスは、「11月7日投開票」か「11月14日投開票」だった。自民党議員もこのスケジュールで選挙準備を進めていた。ところが、岸田は不意をつく形で「10月19日公示・10月31日投開票」で総選挙を実施すると表明。一気に1〜2週間、日程を前倒しした格好だ。会期末の10月14日に解散するという。
どんな内閣なのかも分からないのに、政権発足から1カ月足らずで有権者は一票を投じることになる。なぜ、投票日を前倒ししたのか、狙いはハッキリしている。政権発足に対するご祝儀の雰囲気が残り、政権のメッキがはがれる前に選挙をやってしまえ、と考えたのはミエミエだ。
「新政権はスタート直後が一番支持率が高く、その後、低下するのが一般的です。選挙は早いほど得策だと計算したのでしょう。岸田内閣は新入閣組が13人と多く、手腕には不安がある。幹事長は“政治とカネ”を抱えた甘利明さんです。いつボロが出てもおかしくない。バケの皮がはがれる前に、ということでしょう。野党の選挙態勢も整っていない。投票日が11月7日や11月14日だと、新型コロナの感染がリバウンドしている恐れもあったのでしょう。昨年も11月上旬から感染が拡大している。いずれにしろ、党利党略なのは明らかです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
それにしたってこの日程は、いくらなんでも無理筋だ。通常、解散から投票まで最低でも20日間は必要だという。事務方の準備が必要だからだ。戦後最短は1983年の20日間だ。「11月7日投開票」が本命だったのも、20日間の確保が前提だったからだ。ところが、今回は17日間しかない。
どうせ岸田政権は、事務方に対して「10月4日に解散を表明すれば間に合うだろう」と半ばゴリ押ししたのだろう。
「意外かも知れませんが、10・31投票の奇策は、岸田首相が自分で考えたといいます。甘利幹事長も寝耳に水だったそうです。なぜか岸田首相は政局に絶対的な自信を持っている。どの日程なら有利なのか、誰にも相談せず策を練っていたのでしょう。いま頃、これで総選挙は勝てると確信しているはずです」(政界関係者)
10・31総選挙は、政界全体を騙し討ちする、異例の日程で行われる。
“判断材料”なしで選べの横暴 |
しかし、いくら政界が魑魅魍魎の世界だとしても、こんな騙し討ちのような奇襲、奇策が許されるのか。
しかも、岸田は、野党が「1日でもいいから予算委員会を開くべきだ」「予算委員会で争点を明らかにしてから衆院選で審判を仰ぐべきだ」と、予算委員会の開催を強く求めても、一切、質疑に応じないつもりだ。よくも「私の特技は人の話を聞くことだ」などと胸を張れたものだ。
立憲民主党の安住国対委員長が「質疑をしなければ、岸田内閣がどんな考えを持ってるかもわからない。それで選べということは、試食をしないまま、これ買えって言っているお総菜屋さんと一緒だ」と批判していたが、その通りだ。
実際、このまま国会質疑もなく、あと1カ月足らずで総選挙では、有権者は、新政権がどんな政治を目指しているのか、初入閣した13人の新人大臣がどんな人物なのか、“判断材料”もないまま一票を投じなければならなくなる。
有権者が岸田政権を理解するために、予算委員会を開き、可能な限り総選挙を先に延ばすのが当然なのではないか。なのに、最短で選挙をしてしまおうというのだから、信じられない。
政治評論家の本澤二郎氏は言う。
「岸田首相は新自由主義からの脱却、成長と分配の好循環を掲げています。数十兆円規模の経済対策を行うとも話しました。どれも実現できれば理想的ですが、道筋を示さなければ本当に実行できるのか、国民は判断のしようがありません。新型コロナ対策についても具体策を聞きたい。岸田首相は総裁選の最中から“聞く力”“国民との対話”を重視する考えを示してきましたが、本当は対話する気がないのではないか。これでは国民を軽視しつづけた安倍元首相そっくりです」
実際、岸田のやっていることは、国民への説明を拒否した安倍元首相と同じだ。安倍は2017年6月、野党が憲法53条の規定に基づいて臨時国会の召集を要求したのに、98日間も放置した揚げ句、臨時国会を召集すると、いきなり「国難突破だ」などと意味不明のことを口にして解散してしまった。当時、モリカケ疑惑が噴出していたが、一切、説明しなかった。
岸田は政局に絶対的な自信を持っているらしいが、考えることが姑息すぎる。
国民は既に狙いを見透かしている |
電光石火で“解散総選挙”の日程を表明した岸田は、これで勝てると踏んでいるのだろうが、はたしてこの“禁じ手”は吉と出るのか、凶と出るのか。
計算通りにいくと思ったら大間違いだ。策士、策に溺れるのが政界の習いである。
半分冗談で「公示日の10・19も、投票日の10・31も仏滅だ。縁起が悪い。かつて森喜朗首相が仏滅に総選挙をやった時も大敗した」という解説も飛び交っている。
前出の五十嵐仁氏がこう言う。
「岸田さんは策を弄したつもりなのでしょう。でも、岸田さんの良さは、誠実さやマジメさにあったはずです。どうして正攻法で勝負しようとしないのでしょうか。正々堂々と予算委員会での質疑に応じ、政界のコンセンサス通り、11月7日や11月14日を投票日にすればいいじゃないですか。党利党略で1〜2週間、日程を前倒ししたために、岸田さんの良さが薄まり、イメージダウンにつながる可能性もありますよ」
すでに多くの国民も岸田の思惑を見透かし始めている。ツイッターでは〈逃走解散〉〈ご都合主義〉〈慌てて解散〉といった批判が続出。今後、岸田の狙いを知れば知るほど、国民の批判はさらに大きくなっていくに違いない。
総選挙の前倒しは、自民党にとって、予想外のデメリットもあるという。
「総選挙には、いわゆる“小池新党”である“ファーストの会”も候補者を擁立する予定です。政界では40〜50人は擁立するのではないかとも囁かれていました。“小池新党”の登場で割を食うのは野党です。自民批判票が分散されるからです。でも、総選挙の日程が早まったため、準備が間に合わず、40〜50人の擁立は難しくなった。せっかく、自民党を利する新党だったのに自民党は自分で潰した格好です」(都政関係者)
こうなったら、野党は腹をくくって徹底的に戦うしかない。
「直近の衆院選は、ご祝儀相場で切り抜けられるとの見方がありましたが、今回の奇襲が裏目に出る可能性はあると思います。岸田首相は、『対話重視』と言いながら、真逆のことをやっているのだから当然です。野党は、19年参院選広島選挙区で河井元法相夫妻側に渡った1・5億円の詳細や、モリカケ桜問題などについて、厳しく追及すべき。急ピッチで共闘態勢をつくり、本気で政権を取る覚悟で臨めば、この衆院選は面白い結果になるでしょう」(本澤二郎氏=前出)
思惑バレバレの岸田の奇策に、国民は騙されてはいけない。
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