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進次郎・石破・河野を待つ「過酷な飼い殺し」の末路 詩人・軍人・変人のそれぞれの道は…
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2021年10月04日 FRIDAYデジタル
この時はまだ勝ちを確信していたのかもしれない…(写真:共同通信)
自民党の岸田文雄新総裁による人事が波紋を広げている。総裁選で3位の高市早苗元総務相を党4役の政調会長に起用する一方、2位の河野太郎元外相を党役員の「末席」に追いやったからだ。
「冷や飯を食え」とばかりに冷遇した岸田氏の一手に、河野氏を応援した自民党若手議員からは「『小石河連合の石破化』が進むだろう」との声が漏れる。
「私は発信力が弱いと指摘を受けてきた。河野氏には弱点を補ってもらう」
岸田氏は、広報本部長に河野氏を起用した理由をこう説明した。ツイッターのフォロワー数が243万人に上るなど発信力がある河野氏の広報手腕に期待するのも理解できるが、岸田氏の発言を額面通り受け取る自民党議員はほぼ皆無だ。
河野氏の周辺からは「外相や防衛相を歴任した国民人気ナンバーワンの人物を『末席』にするなんて、あまりにひどい」との不満が聞こえる。
総裁選で最下位の野田聖子前幹事長代行ですらも入閣が有力視される中、河野氏は「一人負け」状態だ。河野氏が所属する麻生派の重鎮で、出馬に反対した甘利明前税調会長が幹事長に起用され、麻生太郎会長も副総裁として党本部を牛耳る中、「麻生、甘利体制の下でイチから『雑巾がけ』をさせるつもりのようだ」(竹下派中堅議員)などと、河野氏に向けられる視線は冷たい。
岸田氏とすれば、総裁選で争った3人のライバルを党幹部や閣僚として取り込めば、それぞれの支持勢力からの岸田政権批判を抑制できるとの思惑も見える。
麻生氏は、2012年の総裁選で出馬準備を進めていた当時の谷垣禎一総裁を支持せずに、幹事長の立場にありながら出馬を強行した石原伸晃氏を「平成の明智光秀」と痛烈に批判した経緯がある。麻生副総裁−甘利幹事長の下であれば、次の総裁選に党役員や閣僚の立場から岸田氏の対抗馬となるのは困難だろう。
岸田派ベテランは「岸田政権は『安倍晋三元首相と麻生氏の傀儡』とか言われているが、再び戦う相手になりかねない河野氏らを取り込んだ巧妙な人事になっている」と強調する。
これは、2012年の総裁選で石破茂元幹事長に決戦投票で逆転勝ちした安倍元首相が、ライバルの石破氏を幹事長に迎えて芽を摘んだ手と通じる。石破氏が幹事長や地方創生担当相として安倍政権を支え、2015年の総裁選では出馬を見送らざるを得なかったことを踏まえれば、河野氏は広報本部長の職を受け入れた段階で「石破化」する可能性は高い。
ちなみに、石破氏は2018年の総裁選で3回目の出馬を果たすも敗退し、「政界批評家」と揶揄される道を余儀なくされてきた。最近では石破派の山本有二元農林水産相や古川禎久元財務副大臣が相次いで退会届を提出し、同派は15人となるなど衰退が著しい。石破氏は10月1日、地元・鳥取で記者会見を開いたが、会見情報にメディアからは「ついに辞職か、政界引退を表明するのか」との声が漏れたほどである。
進次郎、喧嘩の代償
河野氏の凋落と連動するようにダメージを受けたのは、河野・石破両氏と「小石河連合」を構築した小泉進次郎氏も同じだ。今回の総裁選で、安倍氏の出身派閥で党内最大勢力を誇る細田派を批判し、小泉氏らが進めた国のエネルギー基本計画案をめぐり「再生可能エネルギー最優先の方向性をひっくり返すということがあるなら、間違いなく全力で戦っていかなければならない」などと、見直しに言及した高市氏を念頭にケンカを売った。
国民の人気を背景にワンイシューで戦う構図を仕掛けるのは父親である小泉純一郎元首相譲りともいえるが、大派閥の力をバックに改革を進めた実父とは、その「戦闘力」があまりに違いすぎる。高市氏をはじめ、経済産業省に大きな影響力を持つ甘利幹事長らによって計画の見直しは必至で、小泉氏は「それなりに(巻き返しは)あるでしょうね。それが権力闘争の現実だから」と認めざるを得なかった。
メディアで「小石河連合」と持ち上げられた3人に共通するのは、歯に衣着せぬ言動で高い知名度があるものの、人付き合いがあまり得意ではなく、真の仲間に広がりが見えない点だろう。新総務会長に当選3回で抜擢された福田達夫氏が若手議員ら約90人を集めて党改革を要求したのとは対照的に、「自分が!自分が!、という『一匹狼タイプ』が3人集まっても相乗効果は生まれなかった」(二階派ベテラン)ことが白日の下にさらされた。
小泉氏は総裁選後、岸田氏の当選を受けて「やはり地道な活動って大事だと思う。日頃からの議員との関係構築も、国民や党員の皆さんとの地道な繋がりと同様、非常に大切なことだと思う」と振り返ったが、宏池会(現岸田派)会長を務めながら、地道に仲間のために汗をかいてきた岸田氏と3人の姿勢は大きく異なる。
各種世論調査で「次の総理候補」の上位を占めながら、自民党内で確固たる地位を占められない「一匹狼」たち。何かあれば、メディアは「石破氏からは政権批判コメント、小泉氏からはポエム(詩)をとれ」が合言葉になっていた政界で、河野氏がそのメンバーに新規加入する日がやってきてしまうのだろうか。
石破氏は今後について「思いを同じにする人たちの交わりは総裁選だけでやめにしてはいけない」と意味深長に語ったが、岸田派ベテランからは「『小石河連合』は小さな石が河に落ちていくだけ。波が起こることはない」と自信をのぞかせる。
1998年の総裁選で争った小渕恵三、梶山静六、小泉純一郎の3氏を田中真紀子元外相は「凡人・軍人・変人の戦い」と評したが、令和時代のリーダーとして小泉、石破、河野の3氏、言わば「詩人・軍人・変人」たちが権力を手にする日は訪れるのだろうか。
取材・文:小倉健一
イトモス研究所
写真:共同通信
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