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失敗の自覚は? 総裁選不出馬で退く菅首相…為政者の責任の取りかたに国の本質が見える 三枝成彰の中高年革命
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/295469
2021/10/02 日刊ゲンダイ
自民党総裁選への不出馬を表明。首相官邸で待ち受けた記者団に一礼する菅首相(C)共同通信社
為政者の責任の取りかたは、その国の本質をあらわす。9月にオランダの主要閣僚が2人、辞任した。カーグ外相とバイレフェルト国防相だ。2人とも、タリバンがほぼ全土を掌握したアフガニスタンからの撤退に際して、自国民と現地協力者の一部を退避させられなかった責任を取ったのだ。辞任に先立って同国の下院で可決された問責決議に対し、「全責任は自分にある」とカーグ外相は言ったそうだ。
イギリスでも、ジョンソン首相が外相のラーブ氏をその座から降ろし、司法相兼副首相にした。やはりアフガン撤退の際の不手際による降格といわれている。
当たり前の話だ。
海外で活動する自国民の安全に配慮し、危急の際には最大限の力を注いで救い出すのは国の務めだろう。現地での協力者についても同じことだ。
だが日本は、いち早く大使館員をアラブ首長国連邦に退避させたものの、JICA(国際協力機構)の職員や関係者、その家族など約500人もの人々を混乱の極みにある現地に置き去りにした。
これが江戸時代の役人なら、間違いなく切腹ものの失策だろう。現代ではさすがに死をもって償わされることはないが、自分たちはそれに値するほどの失敗をしたのだと自覚すべきだ。
それでも茂木外相と岸防衛相には辞める気配がない。菅首相だけが退く運びだが、就任から1年、あらゆる局面での失策続きと支持率の低下に「これ以上は続けられない」とあきらめの境地で総裁選不出馬を決めたに過ぎず、「国民に申し訳ないことをした」という反省があるとは思えない。
国のトップに立つ者は大きな権力を手にする代わりに、失敗したらすべての責任を負う――。国民の生命と財産を守ることを責務とする政治家には当然のことだが、そのような潔い引き際をすっかり見なくなった気がする。
思えば戦後の東京裁判の頃から、この国の政治を動かす者たちは責任を取らなくなっていた。A級戦犯として処刑されたのは7人。他の多くは一時収監されたものの、のちに釈放されたり不起訴となって、生き永らえた。首相や外相、法相をつとめた者さえいる。多くの国民や近隣諸国の住民を殺し、傷つけ、その人生を変えてしまった責任をどう感じていたのか。それを問うことはもうできないが、せめて私たちは何十年経とうが忘れずに、その責任を問い続けるしかない。
多くの軍歌を作曲し、戦意高揚に貢献する形で戦争に協力した山田耕筰は戦後も巨匠の地位を保った。が、イタリア・オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」で知られる作曲家のマスカーニは戦後、ムソリーニ政権に協力したかどで財産没収の憂き目に遭った。オランダの指揮者メンゲルベルクは、近年になってようやく復権したが、やはりナチスに接近したおかげで戦後はまったく干されていた。フランスのデザイナー、ココ・シャネルも、ナチの将校と通じていたことをとがめられた。その墓はパリになく、スイスのジュネーブにある。それほど先進諸国では戦争責任に対して厳しいのである。
現在の日本の政治はどうか。国民にウソをつきまくり地位にしがみつこうとする者ばかりだ。不正を暴かれ、落ち度を責められれば、お得意の逃げ口上か、トカゲのしっぽ切りで逃げ切ろうとする。それでも追及されると、ついには逆ギレだ。あったことを「なかった」、なかったことを「あった」と言い張り、恥じるところがない。
この国の顔たる政治家たちは、世界の尊敬を集める面ざしをしているだろうか。彼らの態度や行動が日本の本質だと国際社会から思われているとしたら、「勘弁してくれよ、あの人たちと一緒にしないでくれよ」と言いたくなる。
三枝成彰 作曲家
1942年、兵庫県生まれ。東京芸大大学院修了。代表作にオペラ「忠臣蔵」「狂おしき真夏の一日」、NHK大河ドラマ「太平記」「花の乱」、映画「機動戦士ガンダム逆襲のシャア」「優駿ORACIÓN」など。2020年、文化功労者顕彰を受ける。
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