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「終わったはず」の前首相がかけまくる「安倍フォン」の威力 「こうなったら高市だ」のえげつない選択
https://friday.kodansha.co.jp/article/205849
2021年09月21日 FRIDAYデジタル
野田聖子幹事長代行が4人目の総裁候補として告示日前日に緊急出馬表明し、自民党総裁選史上もっとも熱い戦いがスタートした。
自らの疑惑に蓋をするべく大活躍する前首相。総裁選は誰のためにあるのか… 撮影:TEN
10年ぶりの連絡も。電話攻勢が始まった
「どう?元気にしている。よろしく頼みますね」
「いま、忙しいかい? 一段落したらゆっくりメシでも食べよう。じゃ、よろしくお願いしますね」
「いろいろ大変だろうけど、頼りにしています」
自民議員の携帯電話が鳴る。発信者が表示される時もあれば、見知らぬ番号が表示される時もある。電話に出ると、やや甲高い早口が聞こえてくる。そして、せかせかと手短に話すと、すぐに切れる。
電話の主は安倍晋三前首相だ。
自民党議員の間で「安倍フォン」と呼ばれる前首相からの電話は、高市早苗元総務相が総裁選に正式立候補してから、日を追うごとに激しくなっている。
「正確に言えば、岸田がテレビ出演で『モリカケ問題再調査』と口を滑らせた瞬間から、安倍は各方面に電話し始めた。高市擁立だよ。総選挙を控えて安倍チルドレンはなんとしても『選挙の顔』を優先したい。一方で安倍は、河野や石破、野田らを首相にはしたくない。せめて岸田だったんだが、その話はご破算になった。それほどの怒りようだった」(自民党閣僚経験者)
地元・山口県では「10年ぶりに電話がきた」という県議もいる。安倍フォンの勢いは凄まじい。
直電に萎縮する中堅・若手議員たち
いまや安倍フォンは、党内若手議員にとって「高市縛り」の呪文のようになっているという。
世間的には「終わった前首相」だが、党内での力は保持している安倍の声がけだ。中堅・若手の議員は萎縮し、河野支持を表立っていうことはできない。しかし、高市では選挙に勝てない。1ヶ月後には首のかかった総選挙だ。
派閥と党実力者に従い組織と保身を優先するのか、政治家としての矜持を貫くのか、若手議員たちはその「選択」を迫られている。歴史的な長期政権を担った安倍は、まだオワコンではないようだ。
総裁選告示後の週末から、高市支援部隊は一斉に「高市早苗」と書き込んだ総裁選投票用紙をネット上に公開している。自民党党員に向けたプロパガンダ作戦だ。こうして「安倍・高市連合」は、自民党のコア支持層を背景に、圧倒的な組織力を見せつけるかのような情報戦術を展開している。
「1回目の投票は、河野の勝ち抜けは間違いないと大方は予想している。最大注目なのは2位。岸田なのか、追い上げる高市なのか。当初は泡沫候補とまでみなされていた高市が、まさかの猛追をしているんです」(自民党幹部)
その理由は、
「遺族会、エネルギー業界、医師会の一部、各宗教団体が、高市支持に回りそうなのです。そしてなにより、全国各県連の支部代表のうち細田派が11支部を占めていることです。他派閥はせいぜい2〜5支部代表をもっているだけなのに、細田派の影響は絶大だということがわかるでしょう」(同幹部)
自民支持層のいわば「古株」と、最大派閥からの全力支持だ。安倍フォンの威力は決して小さくない。
対する河野は、逃げ切りをはかり票の積み増しに躍起だ。一方、ロケットスタートを切った岸田文雄の情勢は厳しくなった。4候補が揃った日本記者クラブ主催の討論会では、野田はもっともゆとりのある、分かりやすい弁舌であった。しかし、決選投票には進めそうにない。
「疑惑と体調不良で退場した前首相が牛耳る総裁選です。この党が、いかに旧態依然としているかがおわかりでしょう」
自民関係者は諦め気味にこう呟いた。自民党員の「良識」が勝つのか、それとも「伝統」が勝つのか……。
取材・文:岩城周太郎
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