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自民党総裁選の大きな問題点とは、米国が構築した日本支配の仕組みの存続だ 日本外交と政治の正体
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/294842
2021/09/17 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
この状況を踏まえて動きを見てみると…(岸田文雄前政調会長)/(C)日刊ゲンダイ
旧ソ連の崩壊後、米国の対日政策の主眼は、自衛隊を海外に展開させる体制をつくることにあった。
その圧力をかけたのが、アーミテージ元国務副長官、ナイ・ハーバード大学教授、キャンベル元国務次官補、ヘイムリ戦略国際問題研究所CEO、グリーン同日本部長、カーティス・コロンビア大学教授らで、「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれてきた。
彼らの意向に反した細川、鳩山両首相や、小沢民主党代表は次々と退陣に追い込まれた。
多くの人の知らないケースは福田康夫首相の退陣である。2008年7月に開催された洞爺湖サミットで、ブッシュ大統領は福田首相に自衛隊をアフガニスタンに派遣するよう激しく求めた。
だが、福田首相はこれを拒否した。にもかかわらず、米国は国防次官補を日本に送り、自衛隊のC―130(輸送機)やCH-47(ヘリコプター)、医療部隊などの派遣要求を突きつけた。
福田首相は自ら辞任をすることで、この要求の実現を止めた。この時、福田首相を降ろし、その後の政権づくりの工作をしたのが3A(安倍、麻生、甘利)+S(菅)であり、この構図が今日まで継続してきたのである。
ところが、ジャパン・ハンドラーが利用してきた3A+Sは使えなくなった。
約20年の間に米国の重点は変わり、かつてのイラン、イラク、アフガニスタンを舞台にしてのテロとの戦いから、経済、安全保障面で台頭してきた中国に対峙することに移行した。
そして日本に対しては、対中包囲網の中核になるよう圧力が始まったのだが、この圧力に同意しなかったのが二階幹事長であり、二階はずしの動きが強まった。
この状況を踏まえて総裁選に出馬した岸田前政調会長の動きを見てみよう。総裁選に関連し、岸田氏は「総裁以外の任期は1年、連続3期まで」と提言し、二階はずしの先鞭をつけた。
台湾問題について、日本は米中対立の「最前線に位置」しており、「基本的な価値観を守る覚悟を示す必要がある」と強調した。
さらにアフガニスタンからの邦人救出が十分に機能しなかったとして、自衛隊派遣緩和へ法改正を検討することなどを表明した。
ほとんど誰も言及しないが、長年、米国が構築した日本支配の仕組みの存続が自民党総裁選の大きな問題点なのである。
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
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