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河野太郎の決意。「安倍・麻生」が忌み嫌う石破と狙う“党風一新”の乱
https://www.mag2.com/p/news/511811
2021.09.17 新恭(あらたきょう)『国家権力&メディア一刀両断』 まぐまぐニュース
岸田文雄氏、高市早苗氏、河野太郎氏に加え野田聖子氏も立候補を表明し、ますます混戦の様相を呈してきた自民党総裁選。そんな中にあって、出馬を断念した石破茂氏、そして小泉進次郎氏が支持を打ち出した河野氏に注目が集まっています。突破力抜群の河野氏は、旧態依然とした党風を一新することができるのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、岸田氏と河野氏の政策面の違いを分析・解説しつつ、総裁選の行く末を推測。その上で、この戦いにおいて河野氏を中心とした地方と中堅・若手国会議員の「反乱」が起きることに大きな期待を寄せています。
河野太郎氏は総理大臣にふさわしいか
自民党総裁選の前哨戦を見ていると、どの候補者も安倍前首相や麻生副総理の気を引こうと躍起になっている。これでは、何も変わらないではないか。
そう思っていたところへ、河野太郎氏が9月13日、衆院議員会館で石破茂氏と面談したというニュースが飛び込んできた。石破氏といえば、麻生内閣時代の2009年に「麻生おろし」の急先鋒だったことや、アンチ安倍的な言動で、安倍・麻生両氏に蛇蝎のごとく嫌われている。
河野氏のほうは、派閥のボスである麻生氏に会うため何日も連続で財務省の執務室を訪ね、安倍前首相への「傾向と対策」を聞いたうえで、9月8日に安倍氏と会談している。御大2人への気遣いたるや、相当なものだ。
会談後、記者団に囲まれた河野氏は「男系で続いてきているというのが、日本の天皇の一つのあり方なんだと思う」などと、安倍氏向けのメッセージを放って、女系天皇を認める方向だった自説をひとまず引っ込めた。
その河野氏が、わざわざ石破氏の事務所へ出向いたというのである。せっかくの安倍・麻生対策が水の泡ではないか、と他人事ながら心配したしだいだが、河野氏にはそれなりの成算があったようである。
この会談について、Abemaニュースで河野氏はこう語った。「議員会館内をまわっていると、石破さんがちょっと寄っていって、というので、うかがった」。そして、「もし私が総裁になったら、ぜひお力を貸してください」という趣旨の話をしたのだとか。
石破氏は、このころすでに、評論家、田原総一朗氏との電話で「僕は河野太郎君を応援する」と語っている。しかし、河野氏のほうは、石破氏と手を組むのかというような記者の質問に対し「応援してくれる人には応援してもらいたい」などと、安倍、麻生両氏の反感を買わないよう警戒していた。
それだけに、河野、石破会談のインパクトは強く、メディアのなかには、「安倍・麻生支配体制からの脱却か」と先走りする向きもあった。
たしかに、細田派、麻生派、竹下派など、どの派閥でも、衆院選の迫る今回の総裁選では、派閥の締めつけより、自分の集票にはねかえる“選挙の顔”選びを重視する空気が強い。派閥横断的に、中堅・若手議員の間では、河野支援の動きが目立つ。
河野氏は、安倍、麻生両氏のご機嫌をうかがっているだけでは、上滑りになる危険性を感じたに違いない。両氏は、最終的には岸田氏側につきそうな気配だ。
河野氏は、石破氏との共闘で地方の党員、党友票をより多く獲得し、1回目の投票で一気に決着をつけてしまおうと考えたのだろう。石破氏が出馬すれば地方票が割れるが、思いとどまれば、河野氏が他の候補者を大きく引き離せる。
もし、上位2人の決選投票にもつれこむなら、383の国会議員票と47の都道府県連票で競うことになり、国会議員票への影響力がある実力者の意向がものをいう。高市早苗氏を担ぎ、票を分散させ、決選投票でキングメーカーの本領を発揮したい安倍氏の思う壺だ。
石破氏にしても、負け戦を避け、河野支援にまわりたいのが本音だった。つまり、石破氏は出馬するかどうか逡巡する風を装いつつ、河野氏を待ち構えていたのである。おそらく、電話で打ち合わせをして、あたかも偶然のように会ったのではないか。
立候補を表明しているのは、岸田文雄、高市早苗、河野太郎の三氏だが、いずれも図抜けた存在ではない。
高市早苗氏は、MMT(現代貨幣理論)ばりの経済政策をひっさげて登場した。インフレ率2%に達するまでは、プライマリーバランスを封印して財政出動に励むという。持ち前の度胸と右派思想で安倍氏の支持もとりつけたが、いかんせん、党の看板となるほどのカリスマ性も実績もない。20人の推薦人はほぼ安倍氏の力で集めたといわれる。
「二階切り」の党役員人事構想をぶち上げ、颯爽と総裁選に名乗りを上げた岸田文雄氏も、しだいに好人物、平凡、優柔不断といった地金が出てきて、当初の強い印象は薄れている。
その分、改革者のイメージが先行する河野氏に期待が集まるのだろうか。メディア各社の世論調査によると、「次の首相にふさわしい人」は、どこも河野氏が断然、トップである。
たしかにツイッターなどを駆使した河野氏の発信力には定評があり、フォロワーは241万人を数える。
防衛大臣だったころ、安倍前首相がトランプ前大統領に売りつけられた無用の長物「イージス・アショア」の配備計画を撤回するなどした。その合理的な実行力も、評価されてしかるべきだろう。
だが、これは当時の菅官房長官の了解があったからこそ、できた面がある。首相の立場になった時、河野氏が合理性を貫けるかどうかとなると、いささか疑問だ。
というのは、意外に“日和見”ではないか、と思えることが河野氏には多々あるからだ。最近でいえば、総裁選に出馬すると表明したさいの会見がそうだった。
福島第一原発の事故後、河野氏は超党派で「原発ゼロの会」を設立したほどの脱原発派だ。その考えは変わらないかと、会見では当然聞かれる。河野氏は平然と答えた。
「いずれ原子力はゼロになるんだろうと思う。…2050年までにカーボンニュートラルを実現するには石炭、石油から止めていかないといけない。きちんと省エネをする。再生可能エネルギーを最大限、最優先で導入していく。それでも足らないところは、安全が確認された原発を当面は再稼働していく。それが現実的なんだろうと思っています」
要するに、原発再稼働を容認するというのだ。変節したのか、とメディアは騒ぐ。しかし、もともと、河野氏はそんなところのある人物なのだ。異端ぶって世間の人気をとり、主流派に仲間入りするチャンスが到来すると、角を隠しておとなしくなる。
筆者は2007年以来、政治関係の記事を書いているが、河野氏を取り上げたのは、大体、期待を裏切られた時だ。
民主党政権が誕生した2009年9月より少し前、河野氏はめきめきと頭角を現していた。衆議院外務委員長に就任するや、委員会審議の活性化に乗り出し、話題になった。政府側に時間的猶予を与えるかわり、曖昧さのない、きちんとした答弁を求める委員長の姿が凛々しかった。自民党の無駄撲滅プロジェクトチームの座長としても活躍した。
だが、2015年10月、河野氏は原発問題などでにぎやかに文句をつけてきた過去のブログ記事を、一切見られないようにしてしまった。何が起きたかというと、衆院7期にして、めでたく初入閣したからだ。
「国家公安委員会委員長並びに行政改革・公務員制度改革並びに内閣府特命担当で規制改革・防災・消費者問題・食品安全、その他死因究明・公文書管理いろいろございますが、全部で11の指示を承ったところでございます」
大臣のポストを与えられ、河野氏は当時の首相だった安倍氏に頭が上がらなくなった。
河野氏は日本語をちゃんと使えるし、英語も達者だ。本人が言うように突破力もある。だが、これまでの変節は自民党のなかで生き残るための知恵だとしても、もし念願かない首相になって、有言不実行を続けるようなら、致命的だ。
高市氏には失礼だが、今回の総裁選、実質的には「岸田氏VS河野氏」の構図といえる。政策面での両氏の違いについて、少しふれておこう。
岸田氏は経済政策の転換を訴える。「小泉内閣以降の新自由主義的政策は、我が国の経済に成長をもたらす一方で、持てる者と持たざる者の格差が広がりました。成長だけでは人は幸せになれません。成長の果実が適切に分配されることが大事です」
新自由主義から脱却し、保守本流といわれた宏池会の原点に戻って、成長と分配の好循環を実現するという。格差を拡大したアベノミクスへの批判でもある。
河野氏はこれとは真逆の考えだ。既得権益を守ってきたかつての自民党の再配分政策を、「社会主義的」と言い、非効率的な規制、慣習、ルールを撤廃して自由競争を促すべきだと持論を展開してきた。何兆円もの巨費をかけて、ほとんど役に立たない「核燃料サイクル政策」を強く批判していたのも、この考え方に基づいているのだろう。
「核燃料サイクル政策」について、岸田氏は「維持しなければいけない」と語っており、本来ならこの点でも対立するはずなのだが、河野氏が「脱原発」を封印したため、曖昧模糊としている。
小泉進次郎氏は「これだけ日本も世界も変わる時に自民党も変わらなければならない。この時にだれが党風一新できるのか、答えは明らかだ」と河野支持を表明した。
だが、小泉氏はともかく、河野氏の背後に、“反岸田”で再び接近する菅首相、二階幹事長の影がちらつきはじめたら、艶消しもいいところだ。なにが党風一新だ、旧態依然ではないか、ということになる。
そうではなく、安倍・麻生支配に対する、地方と中堅・若手国会議員の反乱という様相になれば、まんざら総裁選も捨てたものではない。アベ・スガ政権下の自民党には、あまりにもダイナミズムがなさすぎた。
image by: 河野太郎 − Home | Facebook
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