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※2021年9月13日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年9月13日 日刊ゲンダイ2面
【自民党総裁選はオモシロイ】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) September 13, 2021
剥き出しになった正体に改めて唖然
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/1ahMbU35pF
※文字起こし
「ポスト菅」を争う自民党総裁選(17日告示、29日投開票)がヒートアップしている。名乗りを上げた岸田前政調会長、高市前総務相、河野行革相は週末もテレビなどに出まくり。露出合戦を猛展開しているが、剥き出しになった連中の正体には改めて唖然だ。いろんな意味でオモシロくなってきた。
自民党総裁は事実上、次期首相だ。安倍・菅政権の9年間でボロボロになったこの国をいかに修復し、長引くコロナ禍の出口へどう進んでいくのか。そうしたビジョンや道筋をめぐる政策論争を通じ、国会議員のみならず、党員・党友、ひいては国民に訴える絶好の機会だ。ところがどっこい、連中が見つめているのはキングメーカー気取りの安倍前首相のみ。“寵愛”争いは激化する一方で、気色悪いったらありゃしない。安倍の急所である森友疑惑の再調査については、「必要なし」と口をそろえるありさまである。
エンジン全開「国家観が似ている」
おかしな流れをつくったのは高市だ。安倍の支援を取り付けることで初出馬にこぎつけ、滑り出しからエンジン全開。日本経済をズタボロにして格差を拡大させたアベノミクスの焼き直し版「サナエノミクス」を看板政策に掲げるなど、あらゆる政策が安倍路線の踏襲だ。「国家観が非常によく似ている」と言うのはオベンチャラじゃない。脱原発や選択的夫婦別姓に反対し、皇位継承については「万世一系の皇統が正統性の源だ」と男系維持を強調。
靖国神社の参拝も続けるとして、12日もフジテレビの番組で反発する中国などに対し、「国のために命を落とした方に敬意を表し合おうと一生懸命働き掛ける」と力説し、「同盟国の米国が参拝に反対するのは理解できない」とまで言っていた。ネトウヨ人気をいくら集めたところで総裁の座を射止めることはないから、顔見せ興行と割り切って言いたい放題なのか。
安倍政権で浮上した敵基地攻撃能力保有のための法整備の検討を訴え、防衛費をめぐっても「GDP1%枠」を取っ払い、「米欧並みにするならばGDP2%、10兆円規模」と倍増を主張。憲法改正にももちろん積極的で、「時代の要請に応えられる日本人の手による新しい憲法」の制定を目指すという。
昨年に続き、2度目の挑戦となる岸田は相変わらず情けない。懲りずに安倍に振り回されている。3年前の前々回は禅譲をチラつかされ、立候補を見送り。前回は「岸田さんでは勝てない」と見限られ、菅首相に乗り換えられた。それで今回はというと、森友再調査について「国民が納得するまで努力をすることは大事だ」と踏み込んだ途端、安倍は高市擁立に動いて牽制。すると岸田は「再調査をするとか、そういうことを申し上げているものではない」と大慌てで撤回である。
旧キングメーカーをののしった勢いはどこへ? |
そして、完全に馬脚を現したといっていいのが、「異端児」「改革派」と評されてきた河野だ。3・11以前から「脱原発」を持論としていたが、2015年の初入閣と同時に封印し、ブログの内容も削除。出馬表明会見で変節ぶりを突っ込まれると、「安全が確認された原発を当面は再稼働するのが現実的」「いずれ原子力はゼロになる」とゴマカした。女系天皇容認も撤回。防衛相だった昨夏の会見で、「現皇室で男系を維持していくには、かなりのリスクがあると言わざるを得ない」と言っていたのに、女性・女系天皇の検討先送りを決めている政府有識者会議の議論を尊重するとした。保守層へ露骨なゴマすりだ。
河野政権が誕生したら「国がメチャクチャになる」とケチをつけていたという安倍の元に参じて、「ご懸念には及びません」と断りを入れる抜け目のなさもみせた。初めて総裁選に手を挙げた2009年とはまるで別人である。自民党が下野した直後で、当時のキングメーカーだった森元首相を「派閥のあしき勢力」とののしり、「森喜朗さんに派閥を解消すべきだと言って解消するか。絶対しない。しかし、河野総裁のもとで派閥の果たす役割はなにもない」と言ってのけていた。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)は言う。
「安倍・菅政権の9年間で自民党は変質してしまった。安倍1強支配の構造が仕組みとして出来上がり、最大派閥の細田派を実質支配する安倍前首相の支持なしには総裁選で勝てないことが『ポスト菅』をうかがう面々の動きで浮き彫りになりました。安倍前首相に恭順の意を示さないと、居場所を失いかねないほど自民党のアベ化は進んでいる。岸田、河野両氏が『らしさ』を失ったのは内向きの論理に迎合したからです。安倍直系の高市さんは、まさに『女性版・安倍晋三』。元気いっぱい、自信満々に振る舞っている点から見ても、自民党は極右勢力に乗っ取られていると言っていい」
誰が勝っても“同じアベノムジナ”
安倍の代弁者の高市は公然と国家を前面に押し出し、敵基地攻撃や靖国参拝を明言。夫婦別姓にも反対し、弱者への冷酷さを隠そうともしないが、これが党内最大派閥の極右の正体である。そんな党内情勢に他の候補者たちも引っ張られ、出てくる政策とやらは中途半端で時代遅れのアナクロばかり。喫緊の課題である新型コロナウイルス対策は当然やるべき施策が並べられているだけだし、省庁再編なんてひとつ間違えば拡大路線に突き進み、時計の針を巻き戻しかねない。
経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「正直言って、どの候補の政策も評価に値しません。岸田氏は『新自由主義的な政策を転換する』として格差是正や中間層への配分を訴えるなど、安倍路線に批判的な発言をして当初は期待が持てましたが、アベノミクスへスリ寄る気配を見せている。株価だけが上がり、賃金は押し下げ、国民生活を疲弊させたアベノミクスを続ければどうなるのか。火を見るより明らかです。河野大臣にいたっては、具体的な戦略を描けないまま手を挙げたようなものですから、何をやろうとするのか分からない不安がある。ひとつ言えるのは、パワハラ体質では官僚を動かせません。20年度予算で30兆円超の繰越金が生じたのは、霞が関が政府に非協力的であることの裏返しです」
物言えば唇寒しでは、具体的な指示が下りてこない限り、官僚は動こうとしない。その結果、コロナ対策の多くが現場に届かない事態を招いているのだ。
「3人の誰が勝っても、“同じアベノムジナ”。アベという毒が全身に回った自民党を政権から引きずり降ろさなければ、政治が国民生活を顧みることはないでしょう。総裁選の行方を判断材料にし、その先に控える衆院選で審判を下すほかありません」(五十嵐仁氏=前出)
この先2週間は続くサル山のボス争いは、オンボロ自民党の見本市。ようやく終わりの始まりだ。
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