https://news.yahoo.co.jp/byline/yamadajun/20190520-00126565 小室圭さんのキャリア形成が「間違いだらけ」と思う理由 山田順 作家、ジャーナリスト 2019/5/20(月) 0:54 婚約内定会見では「お互いファーストネームで呼び合っております」と。(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
5月20日 、小室圭さん(27)が留学中のニューヨーク、フォーダム大学のLLM(Master of Law:法学修士)コースが終了する。そのため、「帰国するのではないか」という憶測も流れ、メディアの報道が過熱化している。 そんななか、驚かされたのが、『バイキング』(フジテレビ系、5月7日)で伝えられた代理人弁護士のコメントだ。 「メディアのかたは勘違いをしています。小室さんは弁護士資格の取得を目指すと言っていますが、弁護士になるとは言っていません。彼はいま、ライフプランをつくっている」「彼自身の人生の視野を広げている最中です」 これを聞いて、「そんなバカな」と思ったかたも多いと思う。私もその1人だ。彼は国際弁護士になるために留学したのではなかったのか? それを契機として、眞子さま(27)との結婚に関して、秋篠宮さまと国民の理解を求めるのではなかったのか? 実際、代理人弁護士はその後の『とくダネ!』(フジテレビ系、5月10日)で、「(小室さんは)なるべく結婚を早められるように努力しています」とコメントしている。さらに、『サタデーステーション』(5月11日、テレビ朝日系)では、「(小室さんは)一般のカップルが連絡を取り合う頻度で眞子さまと連絡を取り合っている」と述べている。 そこで、ここでは、小室圭さんの「キャリア形成」(人生の選択)に関して、私の疑問を述べてみたいと思う。というのは、彼のこれまでの歩みがあまりに“行き当たりばったり”で、「間違いだらけ」ではないかと思うからだ。 まず、言えるのは、彼は初めから国際弁護士を目指していたとは思えないということ。すでによく知られているように、小室さんは、小学校時代は音楽少年で、バイオリンを習っていた。そうして、横浜市港北区住まいだったにもかかわらず、母子2人で東京都国立市に移住して、国立音大附属小学校に通っている。となると、将来は音楽の道に進むのが自然ではないだろうか。 ところが、小室さんは国立音大附属中学校へは進まずに中学・高校と品川区のカナディアンインターナショナルスクールに通った。この学校は1999年に開設された新興のインターナショナルスクール(以下インター)である。 インターは、一般的には、英語が覚束ないうえ日本だけで育った小室さんのような“純ジャパ”を受け入れない。これは憶測だが、このインターは設立されたばかりで思うような生徒があまり集まらなかったために、彼のような生徒も受け入れたのだろう。実際、小室さんは、当初、英語強化コースに回されたと聞く。 音楽から英語に急転向。 ただし、インターに入れば、将来のコースは、ある程度決まる。カナディアンインターだから、生徒たちは、将来、カナダ、あるいはアメリカの大学進学を目指す。カナディアンインターは、『赤毛のアン』で有名なプリンス・エドワード・アイランド(PEI)の教育省およびアメリカの米国西部地域私立学校大学協会(Western Association of Schools and Colleges:WASC)の認証校である。 私は娘も親戚もインターの出身なので、インターでの教育内容がどんなものか知っている。娘が入学したとき、「日本の大学進学をお考えなら考え直してください」と、校長からはっきり言われた。もちろん、それを承知で私は娘をインターに通わせた。当時、文科省はインターを日本の教育機関とは認定しておらず、日本で進学できる大学は上智かICU(国際基督教大学)などに限られていた。 しかし、いまは文科省認定のインターもでき、カナディアンインターはその一つだが、大学進学で日本の大学を選ぶのは、インターの生徒としては自然なコースではない。 もっと言うと、将来の国際的なキャリア形成を捨てることになる。ところが、金銭的事情もあったのだろう。小室さんは日本の大学に進学した。 こうして、ICUの大学生になった小室さんは、「海の王子」になったり、UCLA留学を楽しんだりして学生時代を謳歌した。そんななかで知り合ったのが、眞子さまだった。 ICUを卒業した小室さんは、いまや批判が多い日本式の“新卒一括採用”による就職試験を受け、難関の三菱東京UFJ銀行に入行した。配属先は虎ノ門支店。これは、日本的なキャリアとしては、エリートコースである。となると、銀行員としてのキャリアを積み、出世を目指すのが自然ではないだろうか。 ところが、なぜか小室さんは三菱東京UFJ銀行を2年で辞め、都内の法律事務所でパラリーガルとして働くことになった。パラリーガルと言えば聞こえはいいが、アルバイト事務員とそう変わらない。法律事務所のパラリーガルは、弁護士を目指す法学部出身者が、将来を考えてやるのが一般的だ。となると、ここで、小室さんは金融から法務へのキャリアの転換をはかったと言える。 しかし、これにより年収がガタンと落ちたので、この決断はかなり勇気がいるものだったと思う。その決意の現れか、小室さんは、パラリーガル生活をしながら、今度は、一橋大学大学院(国際企業戦略研究科、社会人向け夜間コース)に通った。そのときの修士論文の内容を『週刊文春』(2018年5月24日号)が報じているが、論文テーマは「海外から日本への投資」。日本への投資は主要各国に比べ圧倒的に少ないことを指弾するものだったという。つまり、小室さんは、やはり“国際”を捨てきれなかったと言える。 しかし、国際法務を目指すなら、まずは日本の司法試験に合格し、弁護士資格を取るのが普通だ。そうでないと、国際弁護士を目指すアメリカの大学のロースクールへの留学にはつながらない。アメリカのロースクール、とくにLLMコースへの留学は、一般的には日本で法学部や法科大学院を卒業した人間か、すでに弁護士資格を得ている人間が行くものだからだ。この点について、国際弁護士の八代英輝氏が、留学が明らかになった当時、『昼おび』(TBS系)で、「小室圭さんって、法学部卒でもないのですよね?日本の弁護士資格もないのに、なんで国際弁護士なんでしょう」と疑問を呈していた。 ところが、彼は前代未聞の「学費全額無料」というフォーダム大学始まって以来のスカラーシップ(マーティン奨学金:Martin Scholarship)を獲得し、勤務先の法律事務所の生活費支援のもとに留学した。 フォーダム大学は、全米大学ランキング(『U.S. News & World Report』2017年)は61位、ロースクールは全米ランキングで30位以下だから、名門イエールなどに比べたらかなりハードルが低い。とはいえ、出願するには年4回実施の「LSAT」(Law School Admission Test)を受験し、ある程度のスコアを取らなければならない。さらに、留学生なので「TOEFL」のスコアが必要だ。この二つ以外に、基本的なものとして大学の成績証明書、推薦状(何通か)、パーソナルステートメント(自己アピールのエッセイ)、履歴書などが必要となる。 これらを全部揃えたうえで、彼は必要なテストで入学ラインのスコアを取ったのだろうか? LLMコースへの留学なので、「LSAT」のスコアは必要なかったかもしれない。しかし、そうしたことを差し引いても、彼の学費全額免除は一般学生では考えられない“快挙”と言うほかない。 一説によると、エッセイで日本の皇室のプリンセスのフィアンセという点を強調したという。事実、彼は、フォーダムの学生たちから「ハッピープリンス」と呼ばれているという。 問題点はまだある。LLMコースを終えたら、JD(Juris Doctor:法務博士)コースに進学しなければ、アメリカで弁護士になることはできない。JDコースはドクター取得まで最低2年間を要し、取得後、州の司法試験(Bar:バー)を受ける資格を得られる。つまり、小室さんは、現時点で「Bar」の合格を目指している。 しかし、晴れて「Bar」に合格しても、現地のローファーム(法律事務所)で数年間のキャリアを積まなければ、国際弁護士業務はできない。また、その後、日本に帰国したとしても、日本での弁護士資格がないのだから、日本の法廷には立てない。そんな中途半端な国際弁護士を、はたして日本企業や法律事務所は使うだろうか? さらに、まだハードルがある、それは、アメリカで働くためには、「労働ビザ」か「グリーンカード」(永住権)が必要だということ。現在、グリーンカードのハードルはどんどん高くなっていて、そう簡単には取れない。 5月16日の報道によると、トランプ大統領は、グリーンカードの発給を高技術、高学歴に基づく「メリットベース」に転換することを表明している。 現在のアメリカは、弁護士が多すぎで、過当競争時代に突入している。日本のように「弁護士です」と言っても「すごいですね」なんて反応は返ってこない。さらに、AIの発達でパラリーガルの仕事はなくなり、弁護士の仕事すらAIに置き換えられようとしている。 そんな状況のなか、なぜ、国際弁護士を目指したのか?また、代理人弁護士が明かしたように「弁護士になるとは言っていない」「人生の視野を広げている最中」だとしたら、なんのための留学なのだろうか? いずれにしても、彼が次のキャリアのスタート地点に着くのは、30歳を超えてからである。 気鋭の社会学者の古市憲寿氏は、かつて『とくダネ!』(フジテレビ系)で、「(小室さんの)鈍感力はすごい」と“絶賛”していた。また、タレントのヒロミさんは、『バイキング』(フジテレビ系)で、「アィ、いったいなに考えているんだ」と言い、「オレ、いまアイツと言いそうになった。ごめん」と訂正したことがあった。 婚約内定会見当時の報道によると、小室さんの大好きな曲は、ビートルズの『レット・イット・ビー』(なるがままに)だという。これは、彼の人生観そのものかもしれない。 山田順 作家、ジャーナリスト 1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)。最新刊は『コロナショック』『コロナ敗戦後の世界』(ともにMdN新書)。
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