以下、岡田正彦氏のHP(http://okada-masahiko.sakura.ne.jp/) 魚拓(https://megalodon.jp/2021-0810-1053-55/okada-masahiko.sakura.ne.jp/) より抜粋Q4(全面改訂) 治療薬はいつできるのか? A この1年間、さまざまな薬が「新型コロナにも効く」のではないかと報じられては、 消えていきました。代表はレムデシベルですが、その後、効果は完全に否定されています。 いま世間の期待を集めているのはイベルメクチンという薬です。日本人が発見しノーベル賞 受賞となった薬で、寄生虫を駆除する作用があり、ヒトだけでなく家畜用としても使われて きました。 この薬を評価した、という論文が続々と発表されています。新薬などに注目が集まるたび、 それを評価した論文が大量に発表されるのは世の常ですが、中には薬を売り込むための宣伝 にすぎず、ねつ造に近いものもあったりします。そこで登場したのが「メタ(超)分析」という 研究方法です。関係する論文を手あたり次第に集め、ずさんなものを排除した上で、総合評価 をくだすものです。 イベルメクチンに関しては、8月8日現在で7つのメタ分析論文が発表されています。しかし、 30年以上にわたって論文不正の調査研究を行ってきた私が、すべてに目を通してして感じたのは、 以下のような疑念の数々でした。 ・正式な論文、つまり専門家の審査を受けたのは2編しかない ・分析対象となったデータの多くが未発表 ・2つのグループを公平に設定し、実薬とプラセボを割り当てて行われた試験が少ない ・そのようにして行われた試験でさえ、対象者が24〜400人ときわめて少ない ・「死亡率を62パーセントも下げた」など、結論が不自然 ・臨床試験を実施した地域が開発途上国に集中している 「開発途上国で臨床試験が行われた」ことに関しては、言及すべき歴史があります。2012年、 ファーザー社がナイジェリアの子供たちに対し、親の承諾をえることなくモルモットのように 抗生剤新薬の臨床試験を行い、同国の裁判所から賠償金を請求されたという事件があったことです。 このような状況の背景にあるのは常に論文不正であり、医学を混乱させる元凶となってきたのは、 歴史が教えてくれるところです。8月に入り、科学専門誌「ネイチャー」に、この問題を告発した 記事が掲載されました。内容は、私の考察をはるかに超えるものでした。 イベルメクチンに関する全論文を子細に分析したところ、ねつ造や盗作のオンパレードであり、 対象者がどんな人たちだったのかを検証することさえできない、ずさんさなものだった、と いうのです。主だった論文の共著者にインタビューしたところ、「不正はなかったと信ずるが、 元データは見せられていない」と答えていたそうです。 以上から私の結論は、イベルメクチンの効果を示すエビデンスはいまのところ存在しない、です。 少なくとも、もし私自身が感染したら、イベルメクチンとレムデシベルによる治療は拒否する つもりです。 結局、いまのところ誰もが有効と認める薬は、ただひとつ「デキサメタゾン」しかありません。 期待できるのは、マスコミで話題になっているような過去の薬ではありません。100万種類を 超える化学物質、鉱物、植物の洗い出しに始まり、最終的にはコンピュータ合成によるまったく 新しい薬の開発に、世界中の製薬企業が鎬を削っています。 あとは、新薬開発成功の吉報を待つのみです。 【参考文献】 1) 岡田正彦, ビジネスジャーナル『歪められたエビデンス:正しい健康法はこれだ!』, on line. 2) Spinner CD, et al., Effect of remdesivir vs standard care on clinical status at 11 days in patiens with moderate COVID-19, a randomized clinical trial. JAMA. Aug 21, 2020. 3) López-Medina E, et al., Effect of ivermectin on time to resolution of symptoms among adults with mild COVID-19, a randomized clinical trial. JAMA, Mar 4, 2021. 4) FDA, Why you should not use ivermection to treat or prevent COVID-19. on line. 5) Mandavill A, The C.D.C.'s new leader follows the science. Is that enough? Jun 10, 2021. 6) Kaplan S, F.D.A. still lacks a permanent chief, desoite pressing, weighty problems. New York TImes, Jun 12, 2021. 7) Caricchio R, et al., Effect of canakinumab vs placebo on survival without invasive mechanical ventilation in patients hospitalized with severe COVID-19, a randomized clinial trial. JAMA, Jul 20, 2021. 8) RECOVERY Collaborative Group, Tocilizumab in patients admitted to hospital COVID-19 (RECOVERY): a randomised, controlled, open-label, platform trial. Lancet, May 1, 2021. 2021. 9) Yang C, et al., Tocilizumab in COVID-19 therapy: who benefits, and how? Lancet, Jul 24, 2021. 10) Reardon S, Flawed ivermectin preperint highlights challenges of COVID drug studies. Nature , Aug 2, 2021. 11) Wadvalla B-A, Covid-19: ivermectin's politicisations isas warning sign for doctors. BMJ, Apr 1, 2021. 12)Bryant A, et al., Invermectin for prevention and treatment of COVOD-19 infection: a systemic review, meta-analysis, and trial sequential analysis to inform clinical guidelines. Am J Ther, Jun 21, 2021.
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