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※2021年8月7日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年8月7日 日刊ゲンダイ2面
【「五輪と感染は無関係」とは恐れ入る】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) August 7, 2021
メダルラッシュ≠ナもゴマカし切れない負の遺産
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/4qHfK6Ysx4
※文字起こし
東京五輪が8日閉幕する。天下の愚行もようやく終わるが、国内外の失笑を買った開会式以降、大メディアは日本選手のメダルラッシュに大騒ぎ。特にヒドイのがNHKだ。
総合、Eテレ、BS1、BS4K、BS8K、ラジオ第1の6つの放送波で過去最長1000時間超の五輪放送を実施。とくにBS1は生中継や録画で24時間エンドレスと、朝から晩まで五輪、五輪の雨嵐だ。
6日は76回目の広島原爆の日。さすがにNHK総合は「広島平和記念式典」を生中継したが、長きにわたって放送した新たな原爆特番をEテレですら、制作しなかった。五輪中継にかまけて、公共放送の本来の役割を放棄したかのようだ。
IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長もフザけている。
五輪開幕直前にノーベル平和賞欲しさに広島市の平和記念公園に押しかけながら、同市の松井市長が要請した原爆投下の午前8時15分に合わせた五輪選手と関係者の黙とうを拒否。「平和の祭典」の総元締の関心事は、恐らく自身の名誉欲と大会収益だけ。「ぼったくり男爵」の異名も納得だ。
そして平和記念式典でもやらかしたのが、菅首相だ。あいさつで用意された原稿をナント、読み飛ばし。よりによって〈我が国は、核兵器の非人道性をどの国よりもよく理解する唯一の戦争被爆国〉と絶対に忘れてはいけない言葉を読み忘れるとは、つくづく空前絶後のポンコツだ。
真実から目をそむけ妄想にふける危うさ
醜態をさらした式典後に記者会見で飛び出した菅の発言も耳を疑った。
「これまでのところ、五輪が感染拡大につながっているとの考え方はしていない」
この期に及んで「五輪と感染は無関係」とは恐れ入る。開催都市・東京の新規感染者は過去最多5042人の5日に続き、6日も過去2番目に多い4515人。
初めて2000人台を突破した神奈川をはじめ、各地で最多更新ラッシュとなり、五輪開催中に感染大爆発は全国規模に広がってしまった。
6日も国内外の五輪関係者29人の陽性が判明し、大会組織委が7月1日から発表を始めて以降、累計382人に上る。ついには選手村クラスターも発生。菅がしきりに強調した「バブル方式」は見る影もない。
つまり、盛んに繰り返した「安心安全」の念仏は、とうに完全崩壊しているのだ。それでも菅は事実を受け止めようとせず、「五輪と感染は無関係」と意地を張り続けて居直る始末。楽観的データを出すよう周囲に指示しているとも報じられた。
厳しい現実から目をそむけ、妄想にふけるように日本の金メダリストたちに祝福ツイートを送り続けたポンコツ。国民は今まさにコロナ禍以来、最大の危機に直面しているのに、トップは不都合な真実を直視できない。現実逃避首相の存在はあまりにも危険すぎる。
理念を踏みにじった大会にレガシーはない |
先週火曜、都内の新規感染者が1月以来、約7カ月ぶりに最多を更新した際、菅は「重症者のうち高齢者は2%台」と強調。根拠も示さず五輪開催後に「人流は減っている」とうそぶき、「五輪中止の選択肢はない。テレビで観戦してほしい」と居丈高なメッセージを発し、一方的にぶら下がり会見を打ち切った。
とても国民と共に危機を乗り切ろうとするリーダーには見えない。日本勢初の金メダリストに直接電話し、イメージアップを狙ったこともあったが、アッという間に感染は猛拡大。人流は減ったなどと散々「楽観バイアス」をまき散らしながら、菅は会見も開かず「入院規制」なる重大な方針転換に打って出た。
助かる見込みのある中等症患者を自宅に放置する「最悪の自助」で、メダルラッシュのどさくさ紛れに「命の選別」を始めたわけだ。開催前には「国民の命を守れなくなった時には五輪を中止するのは当然だ」と強弁したクセに、恐ろしいまでの口先首相である。
FNNによると、8月になって都内で自宅療養中の感染者とみられる死亡者は少なくとも8人。今年7月までの過去8カ月で自宅療養中に亡くなった感染者は11人だから、異常事態だ。
5日の都のモニタリング会議で国立国際医療研究センターの大曲貴夫氏は、現状の増加率が続けば2週間後の18日に感染者は1万909人に達するとの試算を提示。都民の1000人に1人が毎日感染する計算で、「自宅で五輪観戦」どころではなく、「自宅でご臨終」を迎える感染者はますます増えかねない。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言った。
「五輪開催強行と緊急事態宣言は矛盾したメッセージです。行動抑制を求める一方で、お祭り気分を醸成し、ブルーインパルスまで飛ばせば、『浮かれるな』というのは無理な話。政府が意図的につくり出した『気の緩み』です。そこにメディアの五輪報道が拍車をかけた。感染爆発の現状は地震や台風、津波のように注意喚起を続けるべき局面なのに、無理にでも大会を盛り上げようとしたのか、メダルラッシュの絶叫ばかり。新型コロナが厄介なのはウイルス自体が見えないだけではない。自然災害と違って医療逼迫や重症化などで苦しんでいる人々の姿も目に触れにくいこと。感染者が自宅に押し込められたら、なおさらです。だから不断の注意喚起が必要なのに、五輪に浮かれ、国民の間で危機感を共有する機会を奪ったのです。菅首相の『五輪開催と感染は無関係』は詭弁に過ぎません」
二度と言えない「コロナに打ち勝った証し」
改めて今回の東京五輪は何のために開催したのか。
海外メディアには「今度の夏季オリンピックで人類の誰もが見たくないイベント、それは大拡散だ。コロナウイルスは違う意見を持っているかもしれない」(米経済誌フォーブス)などと皮肉られ、ワクチン後進国での開催に英紙タイムズは「『怖いです』英国アスリートがコロナへの恐怖を明かす」と報じた。
「英BBCも五輪開催国の感染状況を、違和感を持って伝えるだけで、選手の活躍など大会そのものはシカト同然です」(五野井郁夫氏=前出)
灼熱のテニス会場にトップ選手からクレームがつき、競技時間を変更。選手村はトイレ不足など運営面でもドタバタ続き。開会式直前には「障害者いじめ自慢」で作曲家が辞任、「ホロコーストコント」でショーディレクターが解任と、人権後進国ニッポンを世界にまざまざと印象づけた。国立競技場の計画変更、エンブレムのパクリ、森前組織委会長の女性蔑視発言など「日本の恥」を数え上げればキリがないほどだ。東京五輪関連の著書がある作家の本間龍氏はこう語る。
「菅首相は、やり切りさえすれば『五輪は成功』と言うに決まっていますが、もはや『人類がコロナに打ち勝った証し』とは、とても言えない状況です。メディアも日本人メダリストだけもてはやし、『参加することに意義あり』の言葉はどこ吹く風。コロナ禍の開催強行で『アスリートファースト』や『おもてなし』の精神も消え、逆に街中で外国人を見れば五輪選手かと疑い、感染を警戒する偏見すら助長させた。あらゆる理想や理念を踏みにじった大会に『レガシー』などあるわけがない。裏金招致疑惑もくすぶり、五輪が終われば無観客開催による莫大な赤字という“負の真打ち”も待っている。結局、五輪開催で残るのは、カネの問題とコロナ自宅死ラッシュへの恐怖のみ。高い授業料を払って得られるのは、二度と五輪の自国開催はやってはいけないという教訓だけです」
負の遺産をゴマカし切れない絶叫の虚無。せめてお祭りムードで総選挙突入のアテが外れ、菅辞任と自民党下野につながれば、まだマシだ。
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