新潟大学名誉教授 岡田正彦氏 ホームページの魚拓 https://megalodon.jp/2021-0727-2132-11/okada-masahiko.sakura.ne.jp/ よりQ4 治療薬はいつできるのか? A この1年間、さまざまな薬が「新型コロナに効く」と報じられては、忘れられてきました。 代表はレムデシベルとイベルメクチンでしょう。 結論を先に言えば、どちらの薬も残念ながら海外での大規模な調査で、効果が完全否定されています。 これらの薬を偽薬(プラセボ)と比べたところ、症状が回復するまでの日数に差がなかったのです。 今後、期待できるのは、マスコミで話題になっているような過去の薬ではありません。100万種類を 超える化学物質、鉱物、植物の洗い出しに始まり、最終的にはコンピュータ合成によるまったく新しい薬 の開発に、世界中の製薬企業が鎬を削っています。 まず、Q17に掲載したアニメ(http://okada-masahiko.sakura.ne.jp/#anime)をご覧ください。 新薬開発のターゲットは2つ、「トゲトゲ蛋白と受皿の結合をブロックする薬」か、「蛋白分解酵素を ブロックする薬」です。すでにメーカー数社が、そんな新薬の開発に成功し、治験に入ったとの情報が 飛び込んできました。 ただし懸念がひとつあります。許認可権を持つ米国の政府機関FDAと、感染症対策の総本山CDCの ゴタゴタです。どちらも泣く子も黙る存在(だったの)ですが、トランプ政権の下、政治に振り回されて きました。加えて、コロナ騒ぎの中、ワクチンや新薬の申請が殺到し、手の回らない状態が続いて いるのです。 その結果、コロナワクチンがそうであったように、慎重であるべき新薬の審査が、かなりずさんに なっているようなのです。わかりやすい例が、最近テレビでも大きなニュースになったアルツハイマー病 の新薬です。アドバイザー委員会が反対したにもかかわらず認可されてしまったことから、3人が辞任 するという騒ぎに発展しています。 信頼性の低いデータに振り回されないようにしつつ、新薬の開発に期待したいと思います。7月中には、 その第一報が出る見込みです。 NEW! その後の新情報です。7月中に新薬の発表があるはず、との私の見込みが外れそうです。 新薬の開発がもたついている間、以前からあった薬の再評価が行われています。期待されていたのは、 ウイルスの薬でなく、体内で発生する「炎症関連物質」を抑える薬です。 炎症関連物質とは、本来、ウイルスや細菌など外敵の攻撃に対抗したり、がん細胞を抑え込んだりするため 「あえて軽い炎症を起こさせる」という役割を担うものです。種類もいろいろです。ところが外敵の攻撃が あまりに激しくなると、それらが過剰に分泌され、一方、炎症を治める物質なども入り乱れ、収集が つかない状態に陥ってしまいます。 新型コロナ感染症で重症になった人の体内では、このような状態が生じているのですが、これでは 「ウイルスを抑える薬」に出番がありません。 そこで注目されていたのが、この状態にストップをかけてくれるはずの薬でした。最近、「カナキムバブ」と 「トシリズマブ」という聞き慣れない2つの薬について、重症者に有効なのではないかとの期待がかかり、 本格的な調査(ランダム化比較試験)が相次いで行われました。 しかし結論は、「有効性は確認できなかった」という残念なものした。最新論文のひとつは「あきらかな効果 があった」と報じていましたが、データが偏っていると直ちに批判されてしまいました。その批判は正しいだろう、 というのが私の判断です。 結局、いまのところ誰もが有効と認める薬は、ただひとつ「デキサメタゾン」しかありません。この薬は、 炎症やアレルギーを抑え込む幅広い作用をもち、昔から「神の薬」とも言われてきたものです。 あとは、新薬開発成功の吉報を待つのみです。 【参考文献】 1) 岡田正彦, ビジネスジャーナル『歪められたエビデンス:正しい健康法はこれだ!』, on line. 2) Spinner CD, et al., Effect of remdesivir vs standard care on clinical status at 11 days in patiens with moderate COVID-19, a randomized clinical trial. JAMA. Aug 21, 2020. 3) López-Medina E, et al., Effect of ivermectin on time to resolution of symptoms among adults with mild COVID-19, a randomized clinical trial. JAMA, Mar 4, 2021. 4) FDA, Why you should not use ivermection to treat or prevent COVID-19. on line. 5) Mandavill A, The C.D.C.'s new leader follows the science. Is that enough? Jun 10, 2021. 6) Kaplan S, F.D.A. still lacks a permanent chief, desoite pressing, weighty problems. New York TImes, Jun 12, 2021. 7) Caricchio R, et al., Effect of canakinumab vs placebo on survival without invasive mechanical ventilation in patients hospitalized with severe COVID-19, a randomized clinial trial. JAMA, Jul 20, 2021. 8) RECOVERY Collaborative Group, Tocilizumab in patients admitted to hospital COVID-19 (RECOVERY): a randomised, controlled, open-label, platform trial. Lancet, May 1, 2021. 2021. 9) Yang C, et al., Tocilizumab in COVID-19 therapy: who benefits, and how? Lancet, Jul 24, 2021.
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