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感染者急増、医療危機目前なのにテレビは「五輪金メダル」報道一色、コロナ無視!「モーニングショー」「報道ステーション」まで
https://lite-ra.com/2021/07/post-5966.html
2021.07.27 感染者急増、医療逼迫でもテレビは「五輪金メダル」報道一色、コロナ無視! リテラ
番組の大半で五輪報道を続けた『報ステ』
ついに東京都の新規感染者数が2848人と過去最多となり、3000人を超えるのも時間の問題となった。TBSの報道によれば、東京とは都内の医療機関に対し、「通常診療の制限も視野にコロナ病床を確保するよう要請」したという。実際、自宅療養・自宅待機者は1万人を超え、高熱などの症状があるにもかかわらず入院できないという訴えがSNSで散見されるようになっている。
ところが、である。コロナ感染拡大が深刻な局面を迎えているにもかかわらず、テレビは東京五輪一色。テレビだけ観ていると、まるで四連休のあいだにコロナなどなくなったかのような錯覚すら覚えるほどだ。
NHKも民放も、各局朝から夜まで競技の中継はもちろん、中継の前後にオリンピック特番を挟み、ワイドショーもニュース番組も、「金メダルラッシュ」だの「明日の見どころ」だの、総オリンピック特番状態だ。
たとえば、26日、27日朝のワイドショーで大々的に東京五輪を扱っていなかったのは、もともとニュースを一切扱わないTBSの『ラヴィット!』だけ。
『スッキリ』(日本テレビ)、『めざまし8』(フジテレビ)はもちろんのこと、昨年からコロナ報道を牽引してきた『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)までもが、冒頭から1時間以上オリンピックの話題一色。金曜日コメンテーターの長嶋一茂をオリンピック期間中は毎日スタジオに呼ぶというオリンピック体制を敷き、メインのパネルコーナーも、もちろんオリンピック。26日は柔道金メダリストの吉田秀彦氏、27日はソフトボール金メダリストの佐藤理恵氏を呼んで、五輪の見どころを掘り下げる。コロナについてはお天気コーナー前に申し訳程度にやっただけ。
ワイドショーが節操なくジャーナリズム精神など期待できないのはいつものことだが、夜のニュース番組はそれ以上にひどかった。
たとえば、23時に始まる『news23』(TBS)と『news zero』(日本テレビ)は、いずれも冒頭から30分、つまり番組のほぼ半分を使って、日本勢のメダルラッシュを報じ続けた。
■一番酷かったのは『報ステ』、大半を五輪お祭り報道に費やし五輪の負の部分に一切ふれず
しかし、最もひどかったのは『報道ステーション』(テレビ朝日)だろう。
26日の『報道ステーション』(テレビ朝日)は、五輪バレーボール中継の影響で22時14分に始まったのだが、冒頭からスケートボード、柔道、アーチェリー、体操、卓球とメダルを獲った競技を、過去のインタビューやゆかりの人のコメント、松岡修造のレポートなど延々と大特集。五輪のくだりが終わったのは、なんと22時50分ごろ。番組の大半を使って、五輪報道を続けたのだ。
ここで台風8号の話題になり、やっとニュースが始まったと思ったら、ここでも「五輪に影響」などと、上陸するとされる東北や一般市民への影響よりも、五輪中心に伝えた。
そしてコロナ関連のニュースを伝えたのは、番組開始から実に約45分も経た23時前のこと。中等症患者が増えているという現状、医療逼迫の危険性を伝えたが、順番、割いた時間ともに大量の五輪報道に比べれば、扱いの差は明らか。これでは、感染拡大や医療逼迫の深刻さなど視聴者に伝わろうはずがない。
しかも、この後「黒い雨」訴訟の上告断念のニュースなどをストレートニュース的に短く伝えると、こう言ったのだ。
「さあ、ここからはスポーツです!」
いや、「ここから」も何も、ほんの10分前までさんざん東京五輪のニュースをやっていたではないか。そして、番組冒頭で伝えた以外の五輪競技やメジャーリーグの大谷翔平選手、高校野球、女子ゴルフのニュースを伝えた後は、お天気コーナーで再び台風情報を伝えると、そのまま番組は終了してしまったのだ。
ニュース番組を名乗っていながら、番組の大半を五輪報道に費やすとは。『報ステ』はもう『報道ステーション』じゃなくて、『五輪ステーション』『スポーツステーション』と名乗ったほうがいいのではないか。
しかも、『報ステ』がひどかったのは、『news23』と『news zero』がメダル報道とともに酷暑問題や路上競技の観客問題など五輪のマイナス面も扱っていたのに対して、『報ステ』はそうした批判的な視点が一切なく、能天気な五輪礼賛、メダル礼賛報道に終始したことだ。
■『バイキング』は坂上忍が「五輪選手の活躍のあとにコロナの死者伝えられない」と礼賛報道に与せず
27日の朝、昼のワイドショーも、同様に五輪報道、メダル礼賛報道に終始した。
もはや五輪一色に染まっていない報道・情報番組は、『バイキングMORE』(フジテレビ)くらいという惨憺たる状況だ。
ちなみに、『バイキング』はMCの坂上忍が五輪再延期を訴え「五輪選手の活躍を伝えて、次のコーナーでコロナの死者を伝えるなんてできない」と繰り返してきたためか、いまのところ五輪・金メダル礼賛報道はほとんどやっていない。
先週23日の放送でも、開会式を前に裏番組の『ひるおび!』(TBS)がサッカーやソフトボールの日本チームの活躍、ブルーインパルスの中継に大はしゃぎしていたのに対し、『バイキング』が取り上げた東京五輪の話題は、小林賢太郎解任問題、濃厚接触者の出場問題、外出15分ルール問題、IOCのジョン・コーツ調整委員長の恫喝発言と批判報道に終始し、むしろ東京の感染拡大と医療逼迫について大きく報じた。
26日は五輪中継のため番組自体が休止で、今週はMCの坂上が夏休みだったが、それでも27日の放送でも、メダルラッシュは扱ったものそれを掘り下げるというよりは、「メダルラッシュに沸く陰で…選手ら感染続々&暑さ苦言も」として、感染状況や医療問題のほうに重きを置いて報じていた。
しかし、繰り返すが、ほかのテレビは報道番組までがすべて「日本選手が金メダル」一色なのだ。
新聞も同様だ。産経や読売はもちろん、朝日新聞も26日朝刊の一面トップで柔道の阿部一二三選手・阿部詩選手の兄妹金メダル、27日朝刊は一面トップは「黒い雨」訴訟の上告断念だったがスケートボードの西矢椛選手の最年少金メダルも大きく扱った。朝日新聞といえば、メディアでありながら読売新聞などとともに東京五輪オフィシャルスポンサーを務める一方、5月26日には社説で五輪中止を訴え、開催直前の7月21日には坂尻信義・ゼネラルエディター兼東京本社編集局長が「前例なき五輪、光も影も報じます」と書いていたはず。コロナがこれまで以上に深刻な局面を迎えているなかで、この五輪報道はあまりに脳天気かつ無責任ではないか。
■感染拡大、医療崩壊の危機で西浦博氏ら専門家からは今からでも五輪中止を求める声
テレビや新聞の一面ばかりを見ていると、まるでコロナが終わったかのような錯覚を覚えてくるが、それは錯覚にすぎない。
冒頭にきょうの東京都の新規感染者がきょう、2848人と過去最多になったことをお伝えしたが、この数字は開会前から予測されていた。開会式のあった23日から4連休のあいだも新規感染者は連日1000人を超え、緊急事態宣言下にもかかわらず感染拡大が収まる気配はなく、これまで以上に加速度的に増加する一方だ。
これは明らかに五輪強行開催の影響だ。政府や組織委は、自粛疲れや気の緩みで人流が収まらないためなどと国民に責任転嫁するだろうが、緊急事態宣言下にもかかわらず人々の行動変容につながっていないのは、不十分な補償もさることながら、五輪開催が人流抑制に逆行するメッセージとなっているからだ。
しかも、あれだけ「安全安心」を訴えていたはずの組織委は、濃厚接触者の試合出場を認めたり、毎日検査のルールを反故にしたり、さらには無症状陽性者を7日で復帰させようという案まで浮上させ、感染防止どころか、逆に世界中に感染を拡大させるようなことばかりしている。
このまま五輪を続行すれば、被害は甚大なものになるだろう。
実際、この間、専門家からは五輪中止を求める声が上がり続けている。たとえば、“8割おじさん”こと西浦博・京都大学教授は、五輪開会式翌日の7月24日にツイッターで、オリンピック中断を訴えている。
〈都内受入病院の状況聴取で悲鳴。入院調整中の患者が増加して収容能力を超え始めている。今後、呼吸苦があっても自宅療養で待つ者が増加し、自宅で重症化する人が出る。ここから待つと状況悪化を懸念するため、この時点でオリンピックを中断し、都内で外出自粛を徹底することを提案します。〉
また、政府の新型コロナウイルス対策分科会メンバーで大会組織委員会の感染症対策にあたる専門家会議の座長を務める岡部信彦・内閣官房参与ですら、「東京都で入院すべき人が入院できないような状況になったら大会の中止も考えるべき」(朝日新聞15日付)と訴え、開会式翌日の24日にも『日曜報道 THE PRIME』(フジテレビ)に出演し、「重症の患者さんが引き受けられない状況で同時に並行して(五輪を)やるっていうのは、非常に難しいんじゃないか」「入院できないような状況がたくさん見られる所では大会の中止は視点に入れるべき」とあらためて主張。「専門家が中止の基準を示していない」などと専門家攻撃に転嫁しようとした橋下徹・元大阪市長に対して、「わかりやすさでいえば、大阪のような状況が出てきたならば、中止も検討しないといけないのは私の意見です」とキッパリ返していた。
■菅首相は金メダリストにお祝い電話やツイートの一方、2848人の感染者でも「中止は必要ない」と強弁
そして冒頭でお伝えしたとおり、東京都はいままさに医療崩壊の入り口、“大阪のような状況”になろうとしている。そして、もちろんこれは東京だけの問題にとどまらない。東京に隣接する神奈川県・埼玉県・千葉県も感染拡大がさらに進み緊急事態宣言を要請する状況になっており、緊急事態宣言下の沖縄県もさらに感染が拡大している。また、先日五輪の警備のために兵庫県から派遣された警察官のクラスターが判明したが、直接的・間接的に五輪の影響でさらに全国に感染が拡大する可能性も非常に高い。
もちろん、医療従事者たちからも、医療提供体制の逼迫を訴える声が多数上がっている。
ところが、こうした深刻な局面にもかかわらず、菅首相は金メダリストにお祝いの電話をしたりツイートをしたり五輪人気に便乗する一方、コロナについてはほったらかしだ。きょうのぶら下がりでも、東京の感染者2848人を受けて「中止をする考えはないのか」と聞かれ、なんと「治療薬を確保した」などと詐欺まがいの宣伝文句を口にして、「中止の必要はない」と言い張った(この治療薬問題については、明日、詳しくお伝えする)。
さらに上述してきたとおり、メディアは五輪一色で、こうした専門家や医療従事者の警告も、医療逼迫も、政府の無策ぶりも、ここ何日もまともに報じられていないのだ。
それどころか、五輪礼賛・メダル礼賛にうつつを抜かし、人々にコロナの存在を忘れさせ、行動抑制どころか外出や旅行を後押ししているような状態だ。
戦中の翼賛報道になぞらえるわけではないが、少なくとも、メディアは五輪報道が間接的に感染拡大を助長しているという責任を自覚し、一刻も早くあらためるべきだ。
(編集部)
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