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海上自衛隊OBが論文を発表 自衛隊サイドから出てきた「沖縄の海兵隊無用論」 永田町の裏を読む
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/291916
2021/07/15 日刊ゲンダイ
米軍基地が減っても自衛隊基地が増えるのであれば…(航空自衛隊宮古島分屯基地)/(C)共同通信社
自衛隊の外郭雑誌とも言える月刊誌「軍事研究」8月号に「沖縄の海兵隊を除去する3つの理由」と題した論文が載っている。筆者は文谷数重、肩書は「軍事ライター」とあるが、海上自衛隊OBで同誌執筆陣の1人。こういう経歴の人が、こういう立場の雑誌で「海兵隊を除去する」と言うとはどういうことなのか。驚いて急いで読んでみたが、これがなかなか面白い。
まず第1に、沖縄の海兵隊で実動状態にあるのは第31海兵遠征隊のみで、その規模は1個強化大隊にすぎない。しかも1年の半分は沖縄を離れていて、日本防衛には何の役にも立っていない。高まる中国の軍事的脅威と対峙するのは海空戦力であり、海兵隊の役目はない。中国や北朝鮮に侵攻する力もなく、沖縄にいても人道支援や災害救助くらいしかできないと手厳しい。が、これは私たちが「だから辺野古は要らない」という理由に挙げてきたことで、賛成である。
それでいて、第2に、沖縄の米軍基地の7割は海兵隊であり、米兵犯罪を起こすのも海兵隊が多く、しかも重大犯罪を引き起こす傾向があるとの指摘。また、墜落や不時着、部品落下などの事故も多い。だから海兵隊の撤退で基地問題は大きく改善され、犯罪も事故も減る。何より、地元意向を完全無視して進められてきた辺野古の工事が不要となり、政府と沖縄の対立要因が消滅する。
第3に、海兵隊がいなくなっても、陸上戦力としての機能は陸上自衛隊で代替可能である。1個強化大隊程度の部隊が本土から移駐するにせよ輪番展開するにせよ、極端な負担にはならず、また「自衛隊進駐なら沖縄も問題視しない」。沖縄に海兵隊がいることで尖閣に睨みをきかせているのではないかと言う人もいるかもしれないが、「尖閣奪回機能も影響を受けない。米国は尖閣には関与しないためだ」。
この論文の狙いが、米軍に取って代わって自衛隊の南西諸島方面への進出を拡大しようとするところにあることは言うまでもないが、「自衛隊進駐なら沖縄は問題視しない」というのは甘い判断で、現に、すでに陸自が出た石垣島や宮古島などでは基地反対闘争が起きている。それに、米軍基地が減っても自衛隊基地が増えるのでは、県民の負担と経済への阻害は変わることがない。
とはいえ、自衛隊の側からもリアルな海兵隊無用論が出てくるのは悪いことではない。
高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。
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