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西村大臣の飲食店圧力に菅首相が同調していた証拠が…しかも国税の取引停止指示を継続、業者への支援金は拒否連発で支払い2割
https://lite-ra.com/2021/07/post-5947.html
2021.07.10 西村大臣の飲食店圧力に菅首相が同意!撤回後も国税が圧力、一時支援金拒否 リテラ
首相官邸HPより
西村康稔・経済再生相が袋叩きにあっている。酒類提供の停止に応じない飲食店に対し、融資をおこなう金融機関から「働きかけ」を求めると言い出したことで、ネット、マスコミ、野党だけでなく、自民党内からも厳しい批判の声があがり、最終的には方針撤回に追い込まれた。
昨日9日午後におこなわれた加藤勝信官房長官の記者会見で「関係省庁から個別の金融機関などへの働きかけはおこなわないことにしたと西村担当相から連絡を受けた」ことが明かされたのだ。
当然だろう。そもそも、時短営業や酒類提供停止を強化するというのであれば政府がそれに応じた新たな補償策を用意するのが筋なのに、菅義偉首相がドヤ顔で打ち出したのは「協力金の前払い」というとっくの昔にやっておくべき対応だけ。その上、資金繰りが厳しい飲食店に対して融資する銀行などの金融機関を使って恫喝をかけさせようとは、完全にヤクザの発想だ。
しかも、金融機関から働きかけをさせるというようなことは特措法にも政府の基本的対処方針にも書かれておらず、法的根拠がまったくない。さらに金融機関がそうしたことをおこなうこと自体、独占禁止法が禁じる優越的地位の濫用に抵触するという指摘もある。ようするに、経済再生相という立場を悪用して銀行を動かし、違法行為をやらせようとしたのである。
この横暴な姿勢への国民の怒りは大きく、ネット上では撤回後も西村経済再生相は「経済破壊大臣」「経済弾圧大臣」「経済低迷促進担当大臣」と大喜利状態になっている。
しかし、この金融機関を使った飲食店への恫喝方針は、西村経済再生相個人のスタンドプレーだったわけではない。実際は、菅首相もその方針を認めていた。それを物語るのが、批判が高まった発言の翌日、昨日9日午前の動向だ。
菅首相は、9日朝、記者から「優越的地位の濫用につながらないか」と問われた際、「西村大臣というのは、そうした主旨での発言というのは絶対にしないと私は思っている」などと発言。「絶対にしない」も何も、そういう主旨での発言だとしか捉えようがないのだが、菅首相は方針を否定も撤回もしなかった。
首相動静によると、菅首相はこのあと閣議に出席し、閣議が終わるとすぐに西村経済再生相と面談している。
そして、この菅首相との面談のあと、西村経済再生相の会見が開かれたのだが、西村氏はこの段階では方針を撤回しなかったばかりか、金融機関からの働きかけを「真面目に取り組んでいる事業者との不公平感の解消のためだ」と主張した。東京五輪の会場では酒の販売を認めようとしていたというのに、この期に及んで「不公平感」などと言い出すとは呆れるが、重要なのは、西村氏が菅首相との面談を踏まえてなお、姿勢を変えていなかったことだ。
状況から考えて、閣議後の面談はこの金融機関による働きかけについて話し合うものだったはず。それでも西村経済再生相が方針を撤回しなかったのだから、菅首相もその方針を容認し、共有していたとしか考えられない。
それどころか、官邸周辺では「たしかに西村大臣はスタンドプレーが目立つが、経産官僚出身だから、違法性があることを知らなかったとは思えない。それでもこんな強引なやり方を打ち出したのは、菅首相に尻を叩かれたからではないか」という見方も流れている。実際、この金融機関の働きかけについては、西村経済再生相が発言した段階で、すでに内閣官房のHPには金融機関への通知を前提にした事務連絡が出ていた。
■金融機関を使う方針は撤回したが、国税庁が酒類提供飲食店との取引停止を指示
いずれにしても、菅首相がこの金融機関を使ったヤクザまがいの恫喝に同意していたことは間違いない。
そして、菅政権は金融機関を使う方針は撤回したものの、同様の横暴な飲食店に対する圧力は継続している。じつは、内閣官房と国税庁酒税課が酒類業中央団体連絡協議会に対し、酒類提供停止に応じない飲食店とは取引を停止しろと「依頼」する事務連絡を8日付で出しているのだ。
「金融機関を使った働きかけ」という方針の下劣さのせいで霞んでしまっているが、しかし、この国税庁を使った「依頼」もヤクザの発想と言うほかなく、相当に酷い。それは飲食店に対する兵糧攻めであるということだけではなく、酒類の卸業者に対する締め付けでもあるからだ。
ご存じのとおり、時短営業や酒類提供停止の要請に応じた飲食店には協力金が支払われるが、一方、飲食店と取引して食材や器材の納入などをおこなう関連業者には協力金などの補償はなく、飲食店の休業・時短営業や外出自粛の影響で売上が半分以下になった事業者に対する月次支援金(法人・上限月20万円、個人事業者・上限月10万円)しかない。そのため、飲食店からは同じように苦境に立たされている卸業者の先行きを心配する声があがり、それを理由に要請に応じず酒類の提供をつづけている店もある。
つまり、政府が対策を強化するというのであれば、飲食店への補償の見直しと同時に、関連業者に対する手厚い補償策を打ち出すべきなのだが、前述したように、今回の宣言発出で菅首相は新たな補償策を何ひとつ用意しなかった。そればかりか、「酒類提供を停止しない飲食店とは取引するな」とまで言い出すとは、これは飲食店と関連業者に首を括れと言っているようなものだ。
しかも、政府による関連業者に対するイジメは、これだけではない。業者にとっては「雀の涙」でしかない支援金さえ「申請したのに支給がされない」という悲鳴があがっているからだ。
その支援金とは、1月におこなわれた2度目の宣言発出時に実施された一時支援金(法人・上限60万円、個人事業者・上限30万円)。対象となったのは月次支援金と同じく飲食店の時短営業や外出自粛の影響で売上が半分以下になった事業者で、すでに6月15日に申請が締め切られたが、所轄する経産省によると、6月10日時点で申請が通って支給された支援金は予算の2割にすぎない。
支援金は死活問題であるにもかかわらず、なぜ給付が進まないのか。じつはそこにはあるカラクリがあった。それは、申請をおこなっても「提出した書類に不備がある」という長文メールを送り返され、ハードルが高すぎる書類による証明を次々に求められるという「不備ループ」と呼ばれるものだ。
■業者への一時支援金では、決めつけと、書類へのいちゃもんで「不備ループ」続出
この問題について取り上げた7月3日放送の『報道特集』(TBS)では、申請をおこなったものの「不備がある」として10回も撥ね付けられたというネイルサロン経営者が「実家の登記簿や戸籍抄本、領収書、売上表もすべて提出しているのに、これでもダメなのか」と証言。しかもこのネイルサロン経営者のもとには“タクシー事業の許可を受けていることがわかる書類を提出しろ”という業種違いのメールまで届く始末。何度も「書類の不備」を理由に申請を撥ね付けておいて、ろくに提出書類に目を通していないのである。
さらに、一時支援金の申請には、事前に行政書士などと面接をおこない給付の対象かどうかを確認することが求められている。だが、この申請の事前確認をおこなっている行政書士も「まったく同じ業種で同じような書き方をしても(申請が)通るのと通らないのがある」と語り、15の「不備ループ」に陥った事業者にアドバイスをおこなっているものの、そこから抜け出せた事業者は「1つもない」と述べている。つまり、プロもお手上げ状態なのだ。
どうしてこんなことになっているのか。番組では申請の審査担当者が取材に応じているのだが、なんと審査担当者はほとんどがアルバイトであり、さらには申請が最終審査まで通ったもののなかから「基礎控除以外の控除がない」人をチェックして抽出しており、その人たちが「不備ループ」に陥っていると証言。この審査担当者が「何のためのチェックか」と訊いたところ、上役は「控除がない方のなかに不正者は潜んでいるんだ」と説明したという。
事業者を色眼鏡でふるいにかけ、無茶な書類提出を何度もふっかけ、申請を通そうとしない──。証言をおこなった審査担当者は「はっきり言って税務署の調査より厳しい」「あまりにも不親切すぎる」と憤っていたが、キャリア官僚による持続化給付金の詐取事件まで起こした経産省は、かたやこんなやり方で事業者いじめをおこなっているのである。
そして、挙げ句の果てに菅政権は、4度目の宣言発出という感染拡大防止の失敗を棚に上げて、あおりを受ける酒類の卸業者や飲食店に責任転嫁しよう とし、これまで以上にスケープゴートに仕立て上げようとしているのだ。
繰り返すが、これは金融機関を使った恫喝の方針を取り下げたくらいで不問に付せるような問題ではまったくない。西村経済再生相の更迭はもちろん、方針を事実上容認し、さらには飲食店への攻撃だけをコロナ対策とし、一方で東京五輪を開催しようという菅首相の責任も厳しく問われなければならない問題なのだ。
(田部祥太)
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