政治理念の根底は二つしか無い。 一つは、自分の私利私欲のために国家を私物化すること。 一つは、国家、国民、人間社会をより良くすること。 立法、制度、政策などは、そのための手段でしかない。 共産党は後者の政党なので、共産党と「理念が違っている」ということは、 立憲民主党は前者の自公維新と同じ理念ということになる。枝野幸男は説明しない病が相当、悪化しているようだ。 ■ https://www.nishinippon.co.jp/item/n/746066/ 「枝野さん、せっかくの本を、説明から逃げる道具にしないで」 2021/5/28 19:12 (2021/5/29 12:21 更新) 率直に記します。254ページの新著を付箋片手に読みながら、 東京支社報道部の野党担当である私は、ひそかに興奮してしまった。 消費税やエネルギー政策など、枝野氏が日ごろの記者会見では なかなか正面から答えてくれないテーマについても持論が展開されていたからだ。 特に、政策実現に必要な財源について書かれた部分には感動すら覚えた。 《財源問題に目をつぶり、充実した社会保障だけを唱えても説得力はない。 『お互いさまで安心できる支え合いの社会』を作るためには、 『大きな財政』は避けられない。 効率的な『小さな政府』と『大きな財政』は両立するが、 『小さな財政』で安心できる支え合いの社会を作るのは不可能だ。 政治はこのことから逃げてはいけない》 そうなんです、枝野さん。選挙戦であれをやる、これをやるとぶち上げるのは簡単。 問題は、その財源についてどこまで説得力ある説明をできるか。 旧民主党政権が国民から失望されたのは、 「事業仕分け」や「(特別会計の)埋蔵金」といった 財源捻出論が破綻したことにも一因があったと思う。 新著には、こうもある。 《国民に長期的には必要な負担をお願いしなければならないことは間違いない》 枝野氏は、どんな《負担》を国民に求めようとしているのだろうか。 私はより深く知りたいと思った。 ■「本を読んでください」 ところが…。新著の発売に合わせて枝野氏が開いた19日の記者会見で、 私はその言葉に耳を疑った。 「本を読んでください」−。 大まかに再現してみる。 私「本に国民の皆さんに必要な負担をお願いすると書いてあるのは、具体的にはどういう形で…」 枝野氏「(※さえぎるように)別の部分にちゃんと書いてあります。 本を読んでいただければ、別の部分にちゃんと書いてあります」(※は筆者の補注) 私「本も読んでいるんですけれども、できれば代表の言葉でわかりやすく説明して…」 枝野氏「いやあの、本を読んでください。ぜひ」 私「理解としては、税負担の増加や社会保険などですか」 枝野氏「現状、大衆増税はできない、しないって明確に書いてると思います。 ちゃんと読んでください。先入観なく」 重ねて、私が「全ての国民がこの本を読むことができるわけではない。 記者として理解を進める上でも説明していただければ」と《負担》の説明を求めると、 枝野氏はようやく重い口を開いたのだった。 「大衆増税はしないと明確に書いています。 今はこの間の直間比率が、逆にゆがんでいると。 従ってこの間、減ってきている高額所得者、特に金融所得課税や、 それから黒字で内部留保をためているところに対する法人税、 そういったところとあとは借金であると。明確ですよ。読んでいただければ」 ■新著に答えが? では、枝野氏の言う通り、新著にはその答えが書いてあるのだろうか? 該当しそうな部分をチェックしてみたい。 《まずは負担増に対する国民の不信感を払拭(ふっしょく)し、再び信頼を取り戻すために、 支え合うためのサービス、ベーシック・サービスの充実を先行させる。 そして、不信感が払拭されるまでの間は、消費税などの大衆増税は棚上げし、 優先順位の低い予算の振り替えと国債発行などによって対応せざるを得ない》 大衆増税はあくまで時限的な「棚上げ」にすぎず、 恒久的に「しない」とまでは書かれていないと受け止めることも可能だ。 引用を続ける。 《消費税ばかりが注目されるが、忘れてはならないのが、 税と同様に強制徴収されるといっても過言ではない社会保険料 (年金や健康保険の保険料)の負担である》 《高額所得層では、所得が増えても負担額が増えない仕組みになっている》 さらに、もう少し−。 《消費税単独で引き下げや廃止を議論すれば、 社会保障などの財源をどうするのかという論点に矮小(わいしょう)化され、 より逆進性の強い社会保険料や金融所得課税の問題が見逃されてしまう。 社会保険料を含めた国民負担のあり方全体を総合的に見直すことが、 真摯(しんし)な姿勢だと考える》 つまり、《負担》の在り方の一つとして、 社会保険料を引き上げるべきだと考えているのだろうか。 将来的には、消費税率アップも必要だと考えているのか。 枝野氏の本を読んでも疑問は残る。 ■玉虫色の表現 5月20日の刊行から1週間が過ぎ、 新著を読んだという永田町関係者の間でも同じような現象が。 新型コロナウイルス禍のさなか、 立民の党内でも意見が分かれている消費税減税論について 「枝野さんが積極的な姿勢を示した」という声もあれば、 「否定的だ」と正反対の受け止めも出ているのだ。 それでは、消費税減税の箇所を見てみよう。 《私は、『緊急時の時限的な対応』という条件を前提にした消費減税を、 全て否定するものではない》 《多くの懸念がある中で、それでも私が時限的な消費減税をあえて否定しないのは、 そのメッセージ効果にある》 これだけ読めば、枝野氏が消費税減税に前向きともとれそうだ。一方で−。 《消費減税が『コロナ禍による消費減少』に対する直接的な対策になるのは、かなり難しい》 《もう一つ忘れてはならないのは、消費減税が、かえって消費者の買い控えを生む可能性だ》 ここの記述は、消費税減税に対する“懸念”の色合いが強くにじみ出ている。 次の項目にこう続いていく。 《コロナ禍で一番困っている方々を集中的かつ効果的に支援するには、 減税よりも給付の方がふさわしい》 この《事実上の『消費税額事前還付制度』》を提案しているくだりに至ると、 枝野氏の本音はやはり「時限的であっても消費税減税はやりたくない」 なのではないかと感じる。 枝野氏は「違う」と言うかもしれない。だが、本は一方通行だ。 こうした数々の疑問に対して、きちんと本人の口から説明してほしいと思うから、 私は記者会見で質問するのだけれど。 ■説明する姿勢こそ大切だ ちなみに、新著の出版前の4月28日の記者会見でも、 別の記者の「(次期衆院選の)マニフェストに 消費税をどのように盛り込むのか」という質問に対して、 枝野氏はこう答えている。 「消費税について『枝野ビジョン』でも触れておりますが、それは本を買ってください」 かつて枝野氏も対決した安倍晋三前首相は2017年の国会で、 憲法9条改正を打ち出した発言を問われ、 自民党総裁の立場で行ったことを理由に説明を避ける一方、 「総裁としての考え方は相当詳しく読売新聞(のインタビュー記事)に書いてある。 ぜひそれを熟読していただきたい」と答弁し、物議を醸した。 枝野氏自身も、記者会見で「(国会の)議事録を読んで」 と説明を拒んだことがある。似ている。 秋までには必ず衆院選がある。 有権者にもう一つの「政権の選択肢」と認めてもらうことを目指す立憲民主党が、 消費税、原発、安全保障などでどんな主張を持っているのか、 「次の首相候補」が担う説明責任は重い。 より明確に伝えていくべき中で、「本を読んでください」と、 枝野氏が正面から答えなくなることが一番心配だ。 新型コロナ禍という危機では、国民に信頼される政権であることが何より重要となる。 自分たちに都合の悪いことも含め、 国民の疑問に対し、逃げずに説明する政治が求められていることは、 自民党政権に対峙(たいじ)してきた枝野氏が誰よりも分かっているはずだ。 だから枝野さん、改めてお願いします。 せっかくの本を、説明から逃げる道具にしないでください。 (川口安子)
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