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※2021年6月25日 朝日新聞1面トップ 紙面クリック拡大
※2021年6月25日 朝日新聞2面 紙面クリック拡大
※朝日新聞、紙面文字起こし
閣僚「五輪中止を」拒む首相
「やめるわけにいかぬ」いら立ちも |
東京五輪の観客のあり方を決める政府などの「5者協議」を翌日に控えた20日、菅義偉首相は周辺に言い放った。「分かってるよ。宣言になったら、やめればいいんだろ」
5者協議では、五輪の観客を「上限1万人」とすることで合意予定だった。ただ、それも東京などが新型コロナ対応の緊急事態宣言から脱し、感染状況が落ち着いていることが前提だった。宣言下なら観客は入れられない――。五輪を開くことができる最低限の条件を確認する周辺の言葉に、首相はいら立ちを隠さなかった。
新型コロナの災厄下にある東京で、首相が掲げる「安心・安全な五輪」が本当に実現できるのか。開会まで1カ月を切る中、政権与党でもいまだ疑念は晴れていない。東京などの緊急事態宣言が延長された5月半ば以降は、首相に中止を求める直言も相次いだ。
「この状況を考えれば、中止も仕方ありません」「中止で支持率はマイナスになりません」。何人もの閣僚らが、この1カ月ほどの間に首相に五輪中止の決断を迫ったと証言する。だが、そうした声はみな退けられた。「ワクチン接種を加速させる」「感染者数は6月に減るはずだ」。首相はそんな決意の言葉を繰り返したという。
夏の五輪・パラリンピックは、9月に自民党総裁の、10月に衆院議員の任期を迎える首相にとって、この1年の総仕上げとなる。五輪の成功を背に衆院解散・総選挙に臨んで、長期政権の足場を築く。昨秋、安倍晋三前首相から政権を引き継いだ際に打ち立てたシナリオに、かたくなにこだわる。
首相は、長く東京大会の準備を重ねた前政権の継承者でもあった。五輪から身を引けば、自らの足もとがどうなるか。「見直し」と「実施」のリスクをはかりにかけ、首相の針はなお実施の側に振れた。
先の主要7カ国首脳会議(G7サミット)で五輪への支持をとりつけ、ワクチン接種も軌道に乗る。「首相は楽観シナリオを信じている」。首相周辺は、五輪に突き進む首相の様子をそう語る。
だが、東京には「第5波」の予兆がちらつく。首相が繰り返し強調するワクチンの効果は、政府内でも「五輪には間に合わない」(官邸幹部)との見方が一般的だ。
自民党内では、首相の先行きを危ぶむ声がじわりと広がる。党幹部は「『安心・安全』を実現できなかった責任をとって退陣となるかもしれない」。閣僚経験者は「薄氷の上にいる自覚があるのか」といぶかる。
当の首相は最近、周辺にこんな考えも漏らした。「五輪は、やめるのが一番簡単なんだ。でも、ここまで来た。全部やめるわけには、やっぱりいかない」(石井潤一郎)
2面に続く |
東京五輪・パラリンピックの開幕まで1カ月を切った。世界が新型コロナ禍にさらされる中の五輪は、何を問いかけているのか。6回にわたって報告する。
1面から続く |
安倍氏のこだわり 継ぐ首相
「国威発揚」重なる64年の五輪 |
東京五輪開会まで50日となった6月3日、菅義偉首相は首相官邸に近い衆院議員会館へ足を運んだ。訪れたのは、官房長官として7年8カ月仕えた安倍晋三前首相の事務所だった。30分ほどの会談を終えた菅首相は、記者団に主要7カ国首脳会議(G7サミット)をめぐり意見を交わしたと説明し、「非常に有意義だった」と笑みを浮かべた。
2人の話は五輪にも及んだという。2013年の東京招致、20年の「1年延期」決定の二つに首相として関わった安倍氏。その継承者の菅首相にとって、「置き土産」でもある五輪への安倍氏の考えを再確認する意味合いもあった。
東京五輪にかける安倍氏のこだわりは、ひときわ強い。20年の開催都市が決まる前の13年1月、招致委員会の評議会最高顧問を引き受けた安倍氏はこう意気込みを語った。「20年は特別な思いを込めた五輪になる。先の東京五輪は、祖父の岸信介が招致の最高顧問だった。私も頑張りたい」
1964年の東京五輪は、日本にとって戦後復興の象徴であり、国威発揚の場でもあった。安保闘争に揺れた岸政権を継いだ当時の池田勇人首相は「所得倍増」を掲げ、日本は高度経済成長期へひた走っていた。
首相に返り咲いたばかりの安倍氏も、五輪で東日本大震災からの「復興」を世界にアピールしようとした。13年9月にあった国際オリンピック委員会(IOC)総会の招致演説では、東京電力福島第一原発の汚染水漏れについて「状況はコントロールされている」と言い切った。
そして、菅首相もまた、五輪を政権戦略の中核に位置づける。「人類がウイルスに打ち勝った証しとして、東日本大震災から復興しつつある姿を世界に発信する『復興オリンピック・パラリンピック』として、東京大会の開催を実現する決意だ」。昨年11月、首相はIOCのバッハ会長との初会談で、力を込めた。「新型コロナウイルスに打ち勝った証し」は、安倍氏が首相在任中に好んで使った言い回しだ。
首相は今月9日の党首討論では「当時は高校生だったが、鮮明に記憶している。子供や若者にも五輪を見てもらい、希望や勇気を与えたい」と、64年の東京五輪の思い出を滔々(とうとう)と語った。
安倍氏も五輪への発信を続ける。6月16日放送のラジオ番組で「五輪は何とか成功させたい。そのためにも今、ワクチン接種を進めている」と、菅政権のコロナ対策を支持した。最近、周囲にこんな思いも語った。「東京五輪は、やれば必ず盛り上がる」
揺れる観客判断 先行き不透明 |
半世紀以上ぶりに国内で夏季に行われる五輪を成功させ、国民の称賛を勝ち得たい菅首相。だが、その思惑通りに運ぶかどうかは、いまだ見通せない。開幕まで1カ月を切り、観客を入れるかどうかの最終判断を下せない現状が、五輪の先行きの不透明さを物語る。
21日にあった政府、組織委、東京都などによる5者協議は、観客を「上限1万人」と決めた。一方で、7月中旬以降も東京などでコロナ対応の「まん延防止等重点措置」が続いたり、緊急事態宣言が出されたりした場合は、「無観客も含めた対応を基本とする」ことでも合意した。
「観客はできるだけ入れたい。だから、ギリギリで判断したい」。首相は周囲にそんな考えを語っている。五輪で国民の一体感を作り出したい首相らにとって、観客は欠かせない要素だ。「上限は5千人」「いや1万人まで」「2万人もあり得る」……。政権や大会関係者の間では、つい10日ほど前まで、そんな数字が飛び交っていた。ただ、20日の緊急事態宣言の期限、21日の5者協議が近づくにつれ、強気一辺倒だった様子に変化が生じた。
「尾身さんがなぁ」。首相は15日、官邸で会談した加藤勝信官房長官や丸川珠代五輪相らにそうこぼした。宣言解除後、スポーツなど大規模イベントの制限をどうするか、最終調整をしている最中のことだった。
首相が心配したのは、コロナ対策の政府分科会の尾身茂会長らによる五輪のリスク評価だった。尾身氏らは18日、五輪の無観客を推奨する提言を政府などに提出。観客を入れる場合でも、制限は一般の大規模イベントよりも厳しくするといった「注文」もつけた。
その3日後の5者協議が観客判断を事実上先送りしたのは、東京の感染状況が不安視されていることに加え、専門家の提言直後にそれを無視するかのような結論を出せば、世論のさらなる批判を招きかねないと判断したからだ。
政権与党内には別の懸念もあった。IOC委員などの「五輪ファミリー」や各国の外交関係者、スポンサーら一般の観客とは違う「別枠」の存在だ。
組織委などは開会式の観客について、この別枠を含め2万人を上限とすることも検討していた。安倍氏や森喜朗・前大会組織委員会長に近い議員らは、別枠の存在も念頭に「五輪は特別だ。一般のイベントと同じ扱いにすべきではない」といった「上積み論」を主張している。
コロナ禍にオリパラを開く意義について、首相は「まさに平和の祭典」「安心・安全の対策をしっかり講じる」などと繰り返す。9月上旬まで続く東京大会を、その言葉通りに実現できるのか。観客のあり方をめぐる7月上旬の判断が、試金石の一つになる。(石井潤一郎、小野太郎)
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