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立川談四楼氏「問題山積の五輪をどんな気持ちで迎えれば」 私が東京五輪に断固反対する理由
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/290607
2021/06/17 日刊ゲンダイ
言葉の端々に怒りと悲哀をにじませた(落語家の立川談四楼氏)/(C)日刊ゲンダイ
立川談四楼(落語家) |
私が中学1年生だった1964年の東京五輪は選手名から記録まで、いくらでもそらんじられるほど、鮮明に覚えています。
開会式3日前から降り続いた雨は、当日の10月10日には上がり、雲ひとつない晴れた青空をブルーインパルスが飛んで空中に五つの輪を作った。そこへ選手団が入場し、会場も、テレビで見ている私たちの熱狂も最高潮に達した。それから連日、オリンピックに釘付けだった。100メートルの決勝は国立競技場まで観戦に行って、ボブ・ヘイズ(米=2002年没)が10秒ジャストで優勝した瞬間にも居合わせたんです。
大会後、母校の卒業生で、レスリング(フリースタイル57キロ級)で優勝した上武洋次郎さん(現・小幡姓)が金メダルを持って中学校に凱旋しました。金メダルの輝き、デカさ、重さに感動したものです。五輪が身近に感じられて、68年メキシコ五輪、72年ミュンヘン五輪……と、私の熱は冷めなかった。
胸を打ったあのオリンピックはどこへやら |
しかし、東京2020はどうでしょうか。招致の段階から原発を「アンダーコントロール」とウソついたところから始まり、国立競技場のゴタゴタ、エンブレム盗作、贈賄、マラソン開催地の移転、お台場の海水に含まれた大腸菌……。すぐに思いつくだけでも、これだけ問題がある。
それらを抱えたままコロナ禍に突入して、いよいよ不信感が増すことになった。
いま、多くの落語家は苦境に立っています。私の場合、以前は月10回ほどあった地方営業は、ほとんどなくなった。結婚式の司会などの副業も飛びました。落語家は個人事業主だから正直、苦しい。十分な補償もなく、これじゃ食えないからってアルバイトを始めた若い落語家が、そのまま業界を離れてしまった例も聞きました。
それでも政府を信じて、ひたすらに我慢してきた。でも、国の政策を見たら、やっていることがめちゃくちゃです。舞台観賞はよくて映画はダメとか、その根拠も示さないまま「我慢しろ」としか言わない。要請に従って寄席を閉じても、協力金は1日たったの2万円ぽっきり。いたぶるのもいいところです。
だから落語界は今年の4月、緊急事態宣言が発出される直前に、「寄席は社会生活に必要なものだから、やる」って意地を見せた。でも、すぐに都や国からプレッシャーがかかって……。
そんな折に、落語ファンを自称する加藤勝信官房長官が「寄席」を「よせき」なんて読み上げやがった。
そのくせ「緊急事態宣言でも五輪はやる」と。しかも、飲食店も含めた私たちの我慢の裏で、パソナや電通が五輪をダシに巨額の利益を稼いでいるじゃないですか。どんな気持ちで五輪を迎えればいいのでしょう。
▽1951年6月30日生まれ、69歳。群馬県出身。県立太田高校卒業後、立川談志に入門。80年NHK新人落語コンクール優秀賞を受賞。83年11月立川流落語会第1期真打ちに昇進した。
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