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※2021年6月14日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年6月14日 日刊ゲンダイ2面
【誰もが懸念し始めた7月中旬感染爆発】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) June 14, 2021
このままでは阿鼻叫喚の中 五輪開幕
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/3Iqo4yydIF
※文字起こし
英国で開かれていたG7サミットが閉幕。菅首相は各国首脳から今夏の東京五輪開催について支持を取り付けることに躍起だった。
新型コロナウイルスの収束が見えない中で「人類の努力と英知で難局を乗り越えられることを日本から発信したい」と言い、「安全安心な東京大会の開催に向けて、万全な感染対策を講じ、準備を進めていく。世界のトップ選手が最高の競技を繰り広げることを期待する」と、各国選手団の派遣を求めた。
日本の国会では「私は(五輪の)主催者ではない」と言って逃げ回っていたくせに、G7では主催者気取りで根拠のない「安全安心」をPRするのだ。
閉幕後の短いコメント発表会でも「全首脳から力強い支持をいただいた」「東京大会を何としても成功させなければならないという決意を新たにした」と、主催者然として威張っていた。
「恐るべき二枚舌です。菅首相にとっては、国内の反対世論を押し切るために、G7首脳から五輪開催の“お墨付き”を得たという形にすることが今回のサミットの最重要課題だった。各国首脳との個別会談でも、日本側は五輪への支持を得ることしか頭にないような土下座外交でした。日本が『安全にやる』と言っている以上、各国とも表立って反対はしないでしょうが、安全に開催できるという根拠は何ひとつ示せませんでした」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)
実際、米国のバイデン大統領の「支持」は条件付きだったと現地メディア「インデペンデント」などが伝えている。「バイデン大統領は、五輪開催において、関係者の安全を確保するための公衆衛生措置を課す必要性を強調した」というのだ。
インド株の感染拡大の不気味
バイデンが懸念するのも当然で、日本の感染対策はお粗末極まりない。五輪開催期間中、選手や関係者を隔離する「バブル方式」の運用は穴だらけだ。
各国選手は出国時に陰性証明を取るが、入国後の2週間待機は免除。海外メディアの動きはスマートフォンのGPS機能を使って管理するというが、黙ってお上の言うことを聞く日本の記者クラブのようにはいかないだろう。
東京五輪を開催すれば、選手1万5000人を含む9万3000人の来日が見込まれる。「五輪アプリ」に実装予定だった顔認証やGPS機能も廃止されたのに、どうやって行動を追跡するのか。
今だってすでに緊急事態宣言の効果が薄れ、人流は増加している。繁華街の人出や、酒を提供する店が増え始めた東京都では12日、新規感染者数が約1カ月ぶりに前週の同じ曜日の感染者数を上回った。感染者数の下げ止まりは誰もが認めるところで、さらにはインド型変異株という脅威もある。市中感染が拡大しつつあるのに、まったく野放しなのが現状だ。
インド株は英国株の約1・5倍の感染力があるとされる。政府分科会の尾身茂会長は、1〜2カ月で英国株からインド株へと置き換わる見通しを示している。インド株によるクラスターも発生し始めた。この不気味な拡大の先に何があるのか。
9日の厚労省「アドバイザリーボード」で報告された「8割おじさん」こと西浦博・京大教授の試算によると、20日に予定通り緊急事態宣言が解除された場合、遅くとも8月中には緊急宣言相当の流行になり、宣言期間は2カ月以上になるという。しかも、この試算はインド株の影響は考慮していない。7月中旬には大半がインド株に置き換わり、感染爆発という見方もある。ちょうど東京五輪が開催される頃だ。このままでは、阿鼻叫喚の中の開幕になる。
「2022年末までコロナ禍」がG7の共通認識 |
西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)が言う。
「日本国内でワクチン接種が進んでいることから、菅首相は五輪の開催に自信を持っているのでしょうが、ワクチン過信は決して科学的な態度ではありません。現状はインド株の蔓延とワクチンの競争ですが、日本で2回接種を終えたのは、まだ人口の5%にも満たないのです。G7の中でも際立って遅れている。ワクチン接種が進んでも、20日に緊急事態宣言を解除すればリバウンドが起きるのは間違いない。ウイルスは五輪開幕だからといって休業してくれないし、テレワークにも応じてくれません。一般国民は運動会も旅行も中止を余儀なくされるのに、大々的な運動会である五輪を開催するというのも支離滅裂で、五輪開催なら自粛要請に従わない人は増える一方でしょう」
アドバイザリーボードでは国立感染症研究所の脇田隆字所長も「五輪開催はさらに感染者を増加させる要素になる」と警告していた。五輪で変異株が持ち込まれる可能性もあるし、日本で感染拡大したインド株を世界に拡散する可能性もある。
今般のG7サミットは2022年末までに新型コロナウイルスのワクチン、少なくとも10億回分を世界各国に供与することで合意。ホスト国の英ジョンソン首相は「2022年末までに世界中の人たちが接種を受け、よりよい復興を遂げるよう願っている」とコメントしていた。
つまり、先進国首脳は2022年末までコロナ禍が収束しないと認識しているのだ。それなのに、コロナ禍の真っただ中に五輪開催を強行するのは狂気としか言いようがない。
菅のツイッターを見ると<「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けたG7各国の具体的な行動を通じた関与を歓迎し、途上国への公平で迅速なワクチンの普及については、リードスピーカーとして議論を主導しました>とG7の成果をアピールしているが、ワクチン後進国の日本がどうして迅速なワクチン普及をリード(主導)できるのか。まさか、原稿棒読みのことが「リード(読む)スピーカー」の意味なのか?
犠牲になるのはいつも一般国民
「菅首相がG7の支持を得たとして五輪強行を正当化するのは、対外的なメンツと一部の関係者の利権を守るため、そして内閣支持率がアップして総選挙に有利になるという政治的思惑からです。国民の命と安全をバクチに賭けようとしている。政治家として決して許されることではありません。一度決めたら、国民を犠牲にしても止められないというのは、先の大戦と同じ。過ちを繰り返そうとしているようにしか見えません」(五十嵐仁氏=前出)
政治学者の姜尚中氏も13日の「サンデーモーニング」(TBS系)で、コロナ下で東京五輪開催に突き進む政府の姿勢を「結局、やれば何とかなるという、私はそれを念力主義と呼んでいるんです。念力を唱えれば何とかなると同じ」と指摘。こう続けた。
「太平洋戦争の時も、無謀なアメリカと戦争という時に、物量を比較すれば戦争はしちゃダメだが、何とかなると。そういうふうに岸信介ですら自分の日記の中に恥じているわけです」
「リスクには必ず責任が伴うわけで、念力主義で(五輪を)やればいいという超楽観論は一体、どこから出ているのか。その結果として国民が非常に悲惨な状況になったとき、どうするのか」
タレントのビートたけし氏も13日「TVタックル」(テレビ朝日系)で五輪開催に突き進む政府のことを「(戦争)晩年の日本兵みたいなもの。負けると分かっていて『まだ勝ってる』って戦争を続けているようなもんじゃないか」と苦言を呈していた。
戦争も五輪も、ひと握りの権力者の判断で始まる。その犠牲になるのは、いつだって一般国民なのだ。痴呆政権の念力頼みで、どうして東京五輪の「安全安心」が担保できようか。五輪開催しか頭にない首相をいただく国民はやるせない。G7では先進国ヅラして途上国支援に物資やワクチンの供与などで総額39億ドル(約4300億円)を拠出すると表明したが、日本のワクチン接種状況は途上国レベルだ。まず国民を救って安心を確保するのが先ではないのか。
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