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※2021年6月11日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年6月11日 日刊ゲンダイ2面
【これでは死者が浮かばれない】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) June 11, 2021
党首討論 首相のセリフはすべて嘘とゴマカシだ
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/iUw4wWqdPC
※文字起こし
「感染対策を徹底し、安全安心の大会を実現することを説明して理解を得たい」――。10日記者団にこう語り、G7サミットが開かれるイギリスに意気揚々と旅立った菅首相。すでにG7各国から「東京オリンピック」開催への支持を取りつけているという。
ここ数日、菅周辺は、9日行われた党首討論をどう乗り切るか頭を痛めていたが、想定以上にうまくいき、「これで明るい気持ちでG7に行ける」とニンマリしているという。
しかし、あれほど酷い党首討論はなかったのではないか。野党の質問に直接答えず、菅は「せっかくの機会なので、私自身の新型コロナに対する考え方を述べたい」「五輪についても説明させていただきたい」と、言いたいことを一方的に口にしただけだった。
五輪開催が国民の命と暮らしを脅かすことはないのか、という国民が一番知りたいことには、最後まで答えなかった。
しかも、「1日あたりのワクチン接種は100万回を超えた」と平然と嘘をつき、「10月から11月にかけて必要な国民、希望する方、すべての接種を終えることを実現したい」と大ブロシキを広げている。よくも、国会でテキトーなことを言えたものだ。
「党首討論は本当に中身がなかった。このコロナ禍に五輪を開いていいのか、激論がかわされるか、失策つづきの菅首相が答弁に窮するだろうと多くの国民が想像していたはずです。なのに、45分間、ほとんど見せ場がなかった。菅首相は周到に準備していたのでしょう。『必要なワクチンは確保している。ワクチンこそ切り札だ』と、PRの場に使っていました」(政治評論家・本澤二郎氏)
あそこまで党首討論がドッチラケに終わったのは、どう考えても野党党首の責任だ。聞き応えがあったのは、せいぜい共産党の志位委員長くらいのもの。質問時間はたったの5分だったが、「五輪を開催すれば、新たな感染拡大の波が起こる。重症者が増え、亡くなる人も増える。そうまでして五輪を開催する理由はなにか」と、菅首相を攻め立てていた。
最悪だったのは、野党第1党である立憲民主党の枝野代表だ。持ち時間は30分もあったのに、質問はたったの4問だけ。質問をたたみかけることもなく、ほとんど演説だった。「私にはビジョンがある」と政権構想を披露する始末だから話にならない。あれでは産経新聞に「枝野氏 党首討論は苦手?」とバカにされるのも当たり前である。
「どうして枝野代表は、菅首相を追い詰めようとしなかったのでしょうか。驚いたのは、『ワクチン接種は大変重要ですし、政府を挙げて頑張っておられる』と政府を称賛までしたことです。日本のワクチン接種率はOECD38カ国中、最低水準ですよ。どこが頑張っているのか。しかも、菅首相が『1日当たりのワクチン接種は100万回を超えた』と、明らかな嘘をついても聞き流していた。どうかしています」(本澤二郎氏=前出)
礼賛報道は菅首相の思惑に“加担”するも同然 |
大手メディアもどうかしている。大新聞の10日の朝刊1面は、どこも「ワクチン 10〜11月に接種完了」だった。党首討論で「10〜11月に、希望する方すべて(の接種)を終えることも実現したい」と語った菅首相の「願望」を既成事実のような見出しをつけて広報した。
しかし、まさか大メディアは、本気で希望者へのワクチン接種が10〜11月に実現できると思っているのか。まだ、3600万人いる高齢者の接種も終わっていない。現在、2回目の接種を終えた人は、全人口の数%に過ぎないのである。普通に考えれば、10月に全国民の接種が終了するはずがない。
そもそも、党首討論で胸を張って見せた、「1日当たりの接種は100万回を超えてきた」というのも大嘘である。実際のペースは1日60万回程度だ。ちょっと調べればすぐに分かることである。
ここへきて、菅が、やたらとワクチンの効果を強調しているのは、これまでの失政から国民の目をそらすためだ。
どうして大手メディアは、それが分からないのか。まさか、総務省の接待問題を巡る調査による報告書で、社名公表を伏せてもらった借りでもあるのか。政治評論家の森田実氏は言う。
「米国ですら接種ペースが鈍化する中、菅首相が突然『11月完了』と言い出したのは、ワクチン接種を衆院選の材料にするためだと思う。解散は、10月より前になるわけだから、たとえ菅首相の発言がハッタリだとしても、与党は『11月完了予定です』とアピールしながら選挙を戦うことができます。結局、ハッタリか否か判明するのは選挙後だから、菅首相は『言った者勝ち』とばかりに『11月完了』をブチ上げた可能性がある。本来、そうした為政者の嘘やゴマカシを許さないのがメディアの役割ですが、8年間のアベスガ政権に抑え込まれて、大手は腰抜けになってしまった。菅政権はやりたい放題です」
ただでさえ、五輪本番が近づくにつれ、この先、大新聞テレビの報道は五輪礼賛一色になっていくと懸念されている。実際に始まれば、「勝った」「勝った」「メダル獲得!」となり、菅政権による失政は、ほとんど伝えられなくなる可能性が高い。
いまから、菅発言を垂れ流しているようでは、どうしようもない。
「医療崩壊」の現場は壮絶だった |
菅は党首討論で「新型コロナという大きな困難に立ち向かい、団結して乗り越えることができたことも世界に発信したい」とも発言しているが、まだ「緊急事態宣言」も解除されていないのに、一体何を夢みたいなことを言っているのか。この新型コロナはそんなに甘くない。
コロナ対策「優等生」だった台湾も、5月に入ってから感染が急拡大。ワクチン製造大国のインドも、年明けに感染が落ち着きつつあったのに、春ごろから爆発的に再拡大してしまった。
英国型、インド型と、次々に感染力の強いウイルスが誕生するのも、新型コロナの特徴だ。
「8割おじさん」こと、京都大の西浦博教授(感染症疫学)らのチームは、予定通り20日に「緊急宣言」を解除した場合、ワクチン接種が進んでいても東京では流行が再拡大し、8月に宣言の再発令が避けられない恐れがあるとの試算を出している。一筋縄に乗り越えられるものではないのだ。
月刊誌「世界」で連載するノンフィクション作家・山岡淳一郎氏は7月号で、医療崩壊を起こしたゴールデンウイーク中の大阪府内で、自宅療養者の現地調査を行った医師の体験を描いている。その現場は壮絶だ。
医師が、目抜き通りから裏町に入った住宅の玄関扉を開けると、感染者の妊婦がツワリによる吐き気を抑えながら「やっと来てくれた」と涙を浮かべていたという。喘息持ちの夫も感染し〈蒼ざめてヒューヒュー喉を鳴らしてベッドに横たわっている〉。夫の母親も感染者で、寝たまま「痛い。痛い。痛い」と全身の激痛を訴えるなど、凄惨な現場を克明に書いている。
もし、五輪を強行したら、この状況が東京で再現される恐れがある。
これが現実なのに、菅はアホみたいに五輪夢物語を夢想し、国民の“ワクチン洗脳”を企てているのだから許しがたい。
「菅首相は五輪を強行するでしょう。止めれば自らの責任を問われるからです。感染者が多少増えるくらい、目をつぶる気ではないか。戦えない大手メディアはヒドイですが、野党も情けない。野党第1党代表の枝野氏はおとなしすぎです。国民のために命がけで戦い、首相のクビを取りにいく覚悟がなければ存在意義はありません」(森田実氏=前出)
五輪を強行して感染が広がったら、死者は浮かばれない。
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